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2014/07/24

原因企業はウソをつく

吉田拓郎の「たどり着いたらいつも雨降り」が心をえぐる世相です。
人の言葉が右の耳から左の耳へと通りすぎる
それ程頭の中はからっぽになっちまってる
今日は何故か穏やかで
知らん顔してる自分が見える(歌詞引用おしまい)
頭をからっぽにして、世の中に無関心でいれば穏やかでいられて、知らん顔してる自分が見える。楽勝な人生に思えて、でもその先は地獄。
何か社会問題が起きるとほとんどの場合、原因企業は嘘をつきます。ベネッセの個人情報流出問題も、最初の発表と規模がだいぶ変わってきていますね。福島における東京電力に至っては、何をか言わんや。
今日は1971年8月31日の朝日新聞「水俣訴訟原告側 “チッソが工作した” 元社長証言、根拠ない爆薬説主張」から公害原因企業の隠ぺい工作を紹介します。
30日東京・内神田の友愛病院会神田友愛クリニック二階の人間ドック室で行われた吉岡喜一・元チッソ社長に対する熊本地裁の水俣病裁判臨床尋問で、吉岡元社長は日本化学工業協会の大島竹治理事(当時)に依頼して、根拠のない爆薬原因説を打ち出して局面打開をはかったことを認めた、と原告側弁護団は語っている。(中略)チッソは熊本大研究班の有機水銀説に対し反論書を出す一方、爆薬説やアミン説を強く主張した。このため、厚生省衛生調査会水俣食中毒部会の答申した有機水銀説もうやむやになってしまい、同年(注・1959年)末、原因不明を理由に、患者側は少額の見舞金契約でケリをつけられている。原告側弁護団は、この吉岡証言で、チッソが大島理事と結んで根拠のない爆薬説を唱え、漁民や患者の攻勢をかわし、さらに県条例の制定も妨げた間の事情をつかむ手がかりを得たとし、31日にさらに尋問を続ける。原告側弁護団では吉岡元社長の証言から次のような事実が明らかになったといっている。(昭和)34年9月、当時の日本化学協会の大島竹治理事が吉岡社長と会い、現場に行って水俣病の原因を調べてみたいと持ちかけた。吉岡社長は漁民が騒ぐので何とかしてほしいと大島理事に依頼した。大島理事が調べ、水俣病の原因として爆薬説(旧特攻基地の爆薬が終戦時に水俣湾に投棄されたとする説だが、海面に投棄された事実はない)が打ち出せるといい、吉岡社長も現地に行き、爆薬説を発表した。しかし、同社長は調査も不十分であることを承知していた。だが、同社長は、水俣病をめぐる情勢が会社側にとってきわめて不利になっているので、有機水銀説に対抗し、これをうやむやにするものとして爆薬説を利用した。(引用おしまい)
水俣病を旧軍のせいにしようとしたのですね。現存しない組織や故人のせいにしたり名前を悪用したりするのは隠ぺいの常套手段。死人に口無しですからね
「アミン説」とは、腐敗した魚介の毒が水俣病の原因だとする学説。東工大の清浦雷作教授が提唱したデタラメで、清浦は恥ずべき御用学者として記憶される羽目になりました。
チッソ側は、ねつ造した原因説を乱発することで、補償額を抑えて企業の責任を極力免れようとしたわけです。
大島元理事のコメントが、またいい加減なので、同記事から引用しておきます。
吉岡喜一氏から当時、原因調査の依頼があった。現地で患者たちの症状見て思い当たったのが応召中に耳にした爆薬のヘキソーゲン中毒のうわさ話だった。戦前、埼玉県川越市に爆薬工場があり、ヘキソーゲンをつくっていたが、砂糖と間違ってヘキソーゲンを食べた女子工員が水俣病と同じような神経症状を示したという。水俣湾沿岸には爆薬の装てん工場があったので、ヘキソーゲンが病気の原因かもしれないから調査してみては、と吉岡氏に報告した。私は今も水俣病の原因は有機水銀とは思っていない。(引用おしまい)
この程度の与太話で患者の命を買いたたこうとはね。清浦と同様に大島の名前も記憶されるべきでしょうね。水俣市は、再稼働が決まった川内原発から30〜40キロ程度。原発行政に水俣市民の意向は斟酌されません。
やっとこれで俺らの旅も終わったのかと思ったら
いつものことではあるけれど
ああ、ここもやっぱりどしゃ降りさ(「たどり着いたらいつも雨降り」より)

2014/07/23

佐藤政権の水俣、安倍政権の福島

佐藤栄作は自民党清和会的政治家の典型として、ある意味わかりやすい人でした。親米姿勢維持のために国民が嫌う人物への勲章授与を閣議決定したことはすでに書きました。安倍晋三首相の集団的自衛権行使の閣議決定路線は、これをさらに戯画化したものに思えます。
佐藤は大問題だった公害を軽視することで、大企業の保護を国民の健康より優先させています。1970年7月29日の朝日新聞夕刊「経済成長ゆるめぬ 首相、公害対策で言明」から引用します。太字挿入はおじさんによります。
29日午前、東京・紀尾井町の赤坂プリンスホテルで行われた全国都道府県議長会の定例会に出席した佐藤首相は「公害対策は国の責任だといわれているが、それは間違いだ。公害問題は国、地方自治体、企業、それに国民の4者が一体とならなければ対策の効果はあがらない日本の繁栄は経済成長によるものであり、公害が発生しているからといって経済成長をゆるめることはできない」とのべた。(引用おしまい)
当時の我が国は、経済発展を重視するあまり、あちこちで大気汚染・水質汚染の被害を出し続けておいて、恬として恥じない恥ずかしい国家でした。
公害の最たるものの一つが熊本県の水俣病。チッソという会社が海に垂れ流した有機水銀によって水俣湾周辺、後には九州の有明海沿岸各所で胎児を含む患者が大量発生した一大事件です。厚生省(国)とチッソ(企業)が結託して隠ぺいにかかったことが今ではわかっています。熊本県(地方自治体)も一枚かんでいました。そんな状況で総理大臣が何を言っているんだか。国民がこんな連中と一体となれと?
さて、このバカげた首相談話に既視感を覚えるのは、おじさんだけでしょうか?
今の日本は、人類史上最悪、地球規模の公害問題を抱えています。言うまでもない、福島第一原発の事故のことです。民主党政権での収束宣言なんてだれも信じちゃいません。爆発で壊れた配管(どこが破れているのかすら不明)に水をじゃんじゃん流し込んでせっせと汚染水を作る一方、川内原発は再稼働決定。
再稼働も原発輸出も経済発展のためです。佐藤栄作、もとい安倍晋三首相は「汚染水は完全にブロックされている」、「事故の経験と教訓を世界と共有し、世界の原発の安全に貢献することが、わが国の責務」とのべる。佐藤のカリカチュアもたいがいにしてほしいものです。
「我が国」は40年以上前の恥ずかしい国を超えるぶざまな国家になろうとがんばっているように見えます。「日本を取り戻す」とは、こんな意味なのでしょうか?恥ずかしい国、日本。

2014/07/21

アメリカの病、離婚と訴訟

民族ジョークの一つに、幸福な人生は「米国の土地に、英国風の家を建て、中国人コックを雇い、日本人を妻にする」、反対に不幸な人生は「日本の土地に、中国の家を建て、コックが英国人で、妻は米国人」というのがあります(いろんなバリエーションがあるようです)。
おじさんから見ると、日本女性が善良でアメリカ女性が性悪だとは思えませんが、そんな印象が強いのでしょう。米国人の離婚率が高いことは有名ですけど、原因を女性にかぶせるのはアンフェアですね。
それにしても多い離婚。かの国には「離婚保険」なるものまであるのだと、最近ネットで知りました。発想にはそれなりの歴史があるようです。1972年8月1日の読売新聞「離婚保険」から引用します。
もともと離婚率の高いアメリカで、このところ有名人の離婚が相次いでいる。
「政治をとるか、私をとるか」と開き直って、夫にニクソン(Richard Nixon)の選挙参謀をやめさせたマーサ・ミッチェル(Martha Mitchell)夫人は"瀬戸ぎわ政策"が成功した形だが、1年以上別居を続けていたジョニー・カーソン(Johnny Carson)夫妻の離婚がさきごろ成立した。財産分割のほか扶助料年間10万ドル(約3千万円)という豪勢な話である。
(中略)「こうした"離婚ぶとり"できる金持ちのスキャンダルはまだいいが、庶民の場合は悲劇的だ」と<離婚保険>の構想を打ち出したのは、ニューヨークのダイアナ・デュプロフ(注・スペルわからず)女史。(中略)
「裁判所で扶助料を決めるときの醜い争い。それに夫の支払い能力不足、あるいは義務不履行、妻の生活能力欠如など、離婚後の母子家庭は結局は生活保護を受けるところまで転落する例が多いのです。第一、裁判所で扱う離婚の件数は自動車事故より多いのに、保険で守られていないのはおかしい」とダイアナさん。
猛運動の結果、今秋にはニューヨーク州議会に法案を提出し、保険問題を検討する委員会をつくるところまで進んだ。
「最初は保険料は高いでしょう。でも、別れない場合は、教育保険や生命保険に切りかえられるようにするから、掛け損にはなりません。なれあいの離婚協議で保険金を詐取しようとする人には厳しい罰則を科すればいい」(引用おしまい)
This is the U.S.A.と言っていいのかな?離婚が保険商品として成り立つのが驚きですが、婚姻関係の破たんすら、リスクとしてとらえるアメリカ人の感覚をバカバカしいと笑うだけでいいと、おじさんは思いません。
最悪の事態を、起こるはずがないからとスルーする日本人の精神風土は、原発の安全神話につながり、福島の事故を招きました。同じ事態が起き得る地震国なのに、なぜか川内原発の再稼働がさらっと決まりました。
権利の獲得にうるさいアメリカ人のハイエナ弁護士に日本の資格を取らせて、裁判所でガンガン闘う反対訴訟を見てみたい気もします。

2014/07/16

川内原発が冷やす日本の夏

暑い一日でした。冷房の効いた図書館に入るとホッとします。でも、日本中の原子力発電所が止まっているんだから節電は大事です。川内原発の再稼働のニュースに、おじさんはエアコン切ってほしいくらいのうすら寒さを感じましたが、それを超える悪い冗談を新聞の縮刷版で見つけました。暑気払いにご紹介します。
1988年4月2日、全国紙にそろって「原子力発電所 私たちが『安全』を守っています」という一面広告が載りました。原発稼働に従事する人たちの写真が並んでいて、「人類の英知」である原子の炎の安全性をアピールしています。以下に引用します。
これは15カ所の原子力発電所で働く、2万9,757人からのメッセージです。安全が何より大切であることは、私たち自身がいちばんよく知っています。2年前のチェルノブイル原子力発電所の事故は、安全設計の違い、重ねがさねの規則違反……とても信じられないものでした。日本では起こりえない事故ですが、私たちはこれまで以上に心を引きしめて、安全確保につとめます。日本の原子力発電所は、安全最優先の思想にもとづいて設計され、運転されています。
 電気事業連合会(引用おしまい)
電気事業連合会は、電力会社が作った任意団体。身内の太鼓持ちですね。 何かを持ち上げる(日本の原発)ために、別の何かを貶める(チェルノブイリ)のは、論拠を持たない人間がやる、もっとも幼稚な議論です。ソ連での事故に反原発運動の広がりを恐れたのでしょう。今となっては、見事なブーメランとして広告主の脳天に突き刺さっています。
安全設計の違い?福島の事故はチェルノブイリと同じレベル7。
ロシア人による重ねがさねの規則違反?吉田昌郎元福島第一原発所長の調書にあった所員9割の命令違反は?
夏の怪談の季節が鹿児島から始まりました。この広告は、節電の夏にぴったりの副読本ですね。

2014/06/16

チェルノブイリ原発事故・独仏政府の反応

チェルノブイリ原発事故に対するイギリス政府の対応は、人権意識の観点からはほめられたものではありませんでした。では、西ドイツやフランスはどうだったのでしょう?1986年8月8日の朝日新聞から続けて引用します。太字挿入はおじさんによります。

(前略)ワールドカップ戦(注・サッカー)で決勝に残った西独はわきあがった。連邦政府は、「自然放射能の強いメキシコで選手が浴びる放射線の方が、ここで浴びる量より多い」と強調。一方、社民党、緑の党が連立を組むヘッセン州では、「戸外での子どものサッカーはつつしむように」と警告した。
 与野党とも原子力開発推進策の仏政府は、「国際基準以下のレベルであれば、細かいデータの公表は不要」という態度で徹底していた。事故直後に開かれた世界保健機関(WHO)に出したデータでも他国が数字を明記したのに、仏は「低い」と報告しただけ。
 しかし、パリ郊外のオルセ大学・核物理研究所には問い合わせの電話が殺到した。研究員が答えていると、学界の幹部から「あまり出過ぎたことは控えるように」と水をさされた、という
 アルザス地域のホウレンソウに高い汚染が検出された時、販売制限をした。原子力安全委員会によると、その理由は「情報が混乱して他の農産物まで巻き込まれるのを避けるため」で、ホウレンソウを“いけにえ”にして他を救った。(後略、引用おしまい)

これらの対応を近年の日本に置き換えてみます。元参院議員の加納時男さんは、福島原発事故直後に、「低線量の放射線はむしろ体にいい」とおっしゃっています。西ドイツ政府の言い分に似ています。
フランス・オルセ大学の一件は、最近話題の福島第一原発の吉田昌郎所長の調書をほうふつとさせますね。「あまり出過ぎたこと」ではないので、ぜひ一般公開してもらいたいものです。
おじさんは古い人間なので、ホウレンソウの件は1996年の大腸菌O157の発生時のカイワレ大根騒ぎを思い出します。菅直人厚生大臣が、バカみたいにカイワレ大根を食べてみせる記者会見が、本当にマヌケでした。
資本主義の国は結局、国民を守ってくれません。みんなはどう思いましたか?自分の身は自分で守る。だけど普通はできない。原発事故と、それが起きた時の政府はみんなの身を守ってくれません。

チェルノブイリ事故・英国政府の反応

原発事故が起きた時、政府は正しい情報を出してくれるのでしょうか?ヨーロッパ先進国は、日本より情報公開と国民保護の意識が進んでいると思われがちだよね。
チェルノブイリ原発事故が起きた時のイギリスの対応を調べてみました。1986年8月8日の朝日新聞から引用します。太字挿入はおじさんによります。

(前略)この夏、ロンドンっ子の間で「チェルノブイリ・ジョーク」がはやった。
「英国からスカンジナビアに届く酸性雨と、英国に来る放射能雲とはどっちが重たい? 答えは放射能雲。死の灰は海に落ちてなくなるようだから」(スウェーデンで異常放射能がわかったとき、英政府は早々と安全宣言を出した)
放射能雲が北イングランド、ウェールズ、スコットランドに達したとき、政府は牛乳中のヨウ素131が、許容量1リットル当たり1000ベクレル(子ども)より少ない60ベクレルと発表した。同じ日に英国放射線防護委員会(NRPB)は、350-390ベクレルと発表。スコットランド民族党は、「まるでクレムリンの事故隠しと同じだ」と、政府にかみついた。
政府不信の定着を恐れた英核燃料公社(BNFL)は、7月初め、一転してイメージ回復作戦へ。放射能漏れで失点続きのセラフィールド核燃料再処理工場に、総額4億7000万円をかけて国民を招くキャンペーンを展開した。現在建設中の新型再処理工場は、向こう10年間で「40億ポンド(約9600億円)のビジネスになり、うち3分の2は海外からの外貨かせぎ」(BNFL広報部)と強調した。(後略、引用おしまい)

「クレムリン」というのは、共産主義といって、情報をひた隠しにして市民の自由を抑圧していたソビエト連邦という国の政治体制の中枢だった場所。日本は一般の国民に主権がある「民主主義」の国だと言われています。
でも、民主主義の国は、同時に資本主義の国でもあります。大きなお金が動く資本主義と、国民の幸せのどちらを政治家が選ぶのか、難しい選択だね。普通の人はお金の方に流れがち。国民に信頼される政府って、どうしたらできるのかな?

2014/06/11

宇井純の遺言・原発と新石垣空港

原子力規制委員会の人事が国会で進められています。もともとは大事故が起きないように、原発の建設や稼働を厳しく見張る番人役ですが、ずさんな計画でも通したい人たちが、通してもいいよっていう推進派の学者を委員会に入れる方向なんだ。
こういった組織がどんな人たちで構成されるのか、とってもわかりやすいコラムがあったので紹介します。全国の公害問題で闘った沖縄大学の故宇井純教授(当時)が、沖縄・石垣島の新空港建設問題にかかわっていたころの一文です。1987年2月6日の朝日新聞夕刊から引用します。

白保の新石垣空港計画を、これほどまでにこじれた問題にした一つの原因は、琉球大学の有力教授を集めて県がつくった空港問題懇話会という一種の審議会が、問題をよく調べずに、全面的に県の計画を是認したことにある。
非公開で行われた懇話会は、数々の見落としを出してしまって、そのあとの質問にも全く答えずに解散してしまった。つまり権力の侍女となって全くの御用学者の役を果たしたのである。狭い島の中だから、この行動はすっかり有名になって、大学の中でも胸を張って歩けない始末だが、それでも県の会合などには、依然として顔を出している。
私が今、新空港問題の是正に時間をとられているのも、もとはといえば、この御用学者連中が仕事をさぼったからである。殺してやりたいぐらい腹が立つが、まさか人を殺すわけにもゆくまい。しかし質問に答えないようなら、大学の教室にたずねてみようかと考えている。
また、この空港計画の差し止め訴訟を起こす動きがあるが、そうなればこの先生方を法廷に呼んで、どういう材料で県を支持する決定をしたのか、宣誓をした上でゆっくり聞きだすことも可能になる。
これまで多くの公害で、企業や行政の側に立って、真実をねじ曲げた御用学者がたくさんいたが、なぜか安泰で、中にはT教授のように、イタイイタイ病で企業を支援し、NOx(注・窒素酸化物)でも基準緩和の主役になる、ふてぶてしい者もいた。今度こそ逃がさずに、ひねりつぶしてやる。(引用おしまい)

「御用学者」というのは、スポンサーや権力者の都合の良いよう、自説を曲げてでも彼らのために働く研究者を指します。原子力規制委員会も、このままでは琉球大の先生方の懇話会とおんなじに成り果てます。現在議論されている集団的自衛権の閣議決定という乱暴な論旨も、「懇談会」という名前の組織がおぜん立てしました。懇話会も懇談会も同じだと考えて大丈夫ですよ。こんなのが出てくる時は、だいたいインチキだと思って間違いありません。
宇井教授のコラムは、原発の再稼働を止めるためのヒントを与えてくれていると、おじさんは思いました。差し止め訴訟が起きたら、過去にさかのぼって規制委員に宣誓をしてもらった上で知見を披露していただくのです。
それがデタラメなら、その人は胸を張って歩けなくなります。学者として後世まで嗤(わら)われます。良心は恥を知ることから始まるとしたら、効果的な原子力事故の防止策にならないかと、おじさんは思いました。

2014/06/08

チェルノブイリ発福島行・いったい何を食べたらいいの?(2)

前項からの続きです。食品安全検査をパスした農産物は、みんなの家の食卓に上がっても大丈夫なのかな?検査する対象放射性物質はお役所が決めます。検査の性質や内容について、積極的な周知活動がされているのかな?
日本の官僚組織は縦割り構造で有名です。自分とこの都合よく立ち回るのを第一に考えるということだよ。霞が関には、放射能検査をねじ曲げた「前科」があります。1989年7月26日の朝日新聞「科技庁計画の食品放射能公表 農水省の反対で"骨抜き"に」を紹介します。以下に全文を引用します。太字部分はおじさんによります。

科学技術庁が今年度から始めようとしていた、食品中の放射能を測定して公表するという事業が、農水省の抵抗で骨抜きになった。「無用の混乱を引き起こす」というのが反対理由。「自然放射能、人工放射能の量を比べたりすることで、放射能についての理解を深めてもらうのが目的なのに」と、科学技術庁は、霞が関の身内の抵抗に、改めて放射能PRの難しさをかみしめている。
科学技術庁の当初の計画は、スーパーなどに出回っている米や肉、魚、野菜など40品目を購入、人工放射能のセシウム137、134と、自然放射能のカリウムを測定し、公表するというもの。自然放射能のカリウムを測定するのは、人工放射能量を、自然放射能と比較できるようにするためだという。
チェルノブイリ原発事故の後、政府は食品中のセシウムなどの放射能は1キロ当たり370ベクレル以下でなければならないとの暫定基準値を決め、欧州から輸入される食品について検査している。
国内の食品は、全く問題がないとして検査されていない。実際、これまで検査された例からみても、科技庁が対象とする食品の半分は、測定限界(1キロ当たり0.5ベクレル前後)以下になるだろうと専門家は推定しているほど。
しかし、それでも農水省は強く抵抗、結局、自然放射能量のみを測定して公表することになったという。
現在の測定法では、自然放射能、人工放射能、両方のデータが同時に取れるが、人工放射能のデータは、解析せずに倉庫にしまわれてしまうことになる。(引用おしまい)

国民の健康を心配するのなら、ましてや問題がなければ公表してくれるのが筋だよね。混乱が起きるのか、それが「無用」かどうかは、お役所が決めるのではありません。福島の事故を起こしてしまった現在も、私たちの健康と安全は、霞が関の手にゆだねられています。

2014/06/07

チェルノブイリ発福島行・いったい何を食べたらいいの?(1)

「食品安全検査」という言葉に引っかかるおじさんです。ついこないだまでの「原子力安全委員会」につながるウサンくささを感じます。看板の掛け替えでは意味がないけど、本来の目的は「危険農産物除外検査」だよね。
今日はチェルノブイリ(Chernobyl事故でヨーロッパの農家に何が起こったのか、その一端を引いて原子力事故の恐ろしさをみんなと考えてみたいと思います。最初は1986年6月4日の朝日新聞から「ウサギ数万匹 汚染で処分へ」。以下に引用します。


【コモ(イタリア)=AP】イタリア北部のロンバルディア州の州知事は2日、チェルノブイリ原発事故の影響でコモ県内のウサギの肉から許容量の2―2.5倍のセシウムが検出されたため食肉用に飼育しているウサギのうち、生の草をえさにしているウサギをすべて処分するよう命じた。
コモ県は欧州最大のウサギの生産地で、約10万匹を飼育。知事は、生の草を食べているウサギの数や干し草をえさにし、汚染されていないウサギの数は不明としており現在、担当者が処分する数を決める作業に入っているという。処分されるウサギは数万匹になる見込み。(引用おしまい)

原発事故が外国に農業被害をもたらした時、賠償問題はどうなるのかな?「みんなの知識」で調べると、コモ県(Como)はチェルノブイリの西に1600キロ以上離れています。放射能の飛び散り方には、偏西風なんて関係ないんだね。
次は1988年1月30日の同紙「チェルノブイリの影響 羊肉汚染は30年続く 英のウェールズ地方」より。

【ロンドン30日=友清特派員】ソ連チェルノブイリ原発事故のため英国ウェールズ地方の羊肉は30年間も基準以上の放射能汚染が続くという調査報告書を英国農地所有者協会がこのほど発表した。
(中略)放射能雲は翌月の2、3日に英国の北ウェールズ、スコットランドにまで流れ、折からの雨で地上に降り注いだ。このため6月にこれら地方の羊肉の出荷が禁止された。7月から10月にかけ地区ごとに解除されたが、昨年7月に北ウェールズ地方では高汚染が見つかり再び出荷停止され、現在も続いている。
報告書によると、放射能汚染の長期的影響で一番問題となるセシウムについて地中での様子や牧草への移行について分析。問題地域の数万頭の羊の肉の放射能は現在1キロ当たり3300ベクレルだが、これが許容基準の1000ベクレル以下になるには30年かかるとしている。
英国や近隣諸国の原発で大事故があった場合には、ソ連事故より大きな被害が予想されるため、ソ連事故の長期的影響の科学的調査、事故対策を進めるべきだ、と報告書は訴えている。(引用おしまい)

みんなの知識」で、とりあえずウェールズ(Wales)の中心都市カーディフ(Cardiff)を起点として、チェルノブイリとの距離を測ってみました。2300キロ以上離れていますね。偏西風はここでも問題になっていません。日本最北端の宗谷岬と沖縄の那覇市の間が2500キロぐらいだからね。原子力発電は安上がりだと言ってる人の論拠は、一体全体どこにあるんだろう?
この項、続きます

原発事故とこども

世界地図からA地点とB地点の直線距離を検索表示してくれるサイト「みん
なの知識・ちょっと便利帳」に国内の原子力発電所リストが表示されています。自分ちと原発の間がどれだけあるのか、みんな気になるよね。
おじさんは図書館に行って、新聞データベースに「チェルノブイリ 子ども」と検索キーワードを入れてみました。出るわ出るわ。その中からいくつかを紹介します。まずは1992年4月26日の朝日新聞「チェルノブイリ事故から6年 子どもの甲状腺がん急増」。以下に引用します。太字部分はおじさんによります。

(前略)ベラルーシ、ロシア、ウクライナ各国では、放射能被ばくによるとみられる子どもの甲状腺の異常が増えるなど、健康への被害が、潜伏期間を過ぎて目立ち始めている。(中略)
放出された放射性物質の70%が降り注いだといわれるベラルーシの首都ミンスクにある第一病院では、14歳以下の子どもたちの甲状腺がんの手術が、事故後急激に増加。1980年から87年までは、せいぜい1年に1人ぐらいだったのに、88年は6人、89年は18人、90年は33人に増え、昨年は9月までで50人を超えたという。チェルノブイリ原発を抱えるウクライナの首都キエフの内分泌研究所でも、90年の手術が20人にのぼった。(後略、引用おしまい)

みんなの知識」でチェルノブイリとミンスク間の距離を測ると、ざっと340キロ。福島第一原発と東京都庁は230キロ弱しかありません。風向き、地形の違いがあって単純な比較はできませんが、簡単に距離だけで被害の大小を推定するのはあてにならない、ということだよ。
次は1995年3月5日の同紙から旧ソ連だったリトアニアの「チェルノブイリ子どもセンター」医師ダングォーレ・ユシエネさんへのインタビュー記事です。

(前略)去年(注・1994年)、1500人の子どもの検査をした。半数の子の甲状せんに異常が見つかった。ほとんどが事故後に生をうけた。足がなかったり、腕がなかったりする子どもも生まれている。事故との因果関係を聞くと、「もちろん分からないわ。でも……」と、続けた。「その子たちの父親が事故の後、放射能汚染の除去作業に動員されていたことは分かっているのよ」(後略、引用おしまい)

さらに1992年4月26日同紙から「放射能除去で五千人が死亡」より引用します。

【モスクワ25日=時事】25日付の独立国家共同体(CIS、注・ソ連崩壊後の独立国同士の結びつき)軍機関紙「赤い星」によると、(中略)原発事故の放射能除去作業に参加した40万人のうちこの6年間に5千人が死亡、1万1千人が身体障害者になった。民間組織「チェルノブイリ同盟」が公表したもので、被害者はさらに増える見通し。(後略、引用おしまい)

1993年10月30日同紙から「チェルノブイリ事故 子どものがん急増 WHOが影響認める」。引用部の太字は、おじさんによります。

【ロンドン29日=尾関章】(中略)ウクライナや隣国のベラルーシで、この5年ほどの間に子どもたちの甲状腺がんが急増、事故の影響が表れていることを世界保健機関(WHO)が29日、明らかにした。ベラルーシでは、従来の約50倍の頻度に達している。国際原子力機関(IAEA)は同事故について「住民の健康への影響は見いだせない」とする報告書を91年にまとめていた。
WHOによると、ベラルーシでは、子どもの甲状腺がんの年間発生数は多くて3人程度と推定されてきたが、ここ1、2年は、88年以前の平均水準に比べて約50倍に増え、89年からこれまでの発生数は225人に達している。
ウクライナでも、89年以後に甲状腺がんにかかった子どもは158人。昨年から今年にかけては88年以前の9倍程度の発生頻度になっている。
WHOのY・リャブーヒン博士は「ある地方で異常に多いのに隣接地域では少ないなど地域差が大きく、放射能汚染だけで説明しにくいが、これほどの急増は明らかに事故の影響と考えられる」と説明した。
IAEA国際諮問委員会が91年にまとめた「放射線影響と防護対策の評価」報告書では、旧ソ連の統計が不完全であることなどを理由に、一部で出始めていた甲状腺がんの増加を放射能汚染と結びつけることを控えていた。(引用おしまい)

日本政府と東京電力は、旧ソ連よりかなりマシな統計を出してくれるとはわずかながら期待しておきます。みんなはこれでも原発の新設や再稼働を望みますか?日本の原子力発電所を外国に輸出したいと思いますか?


2014/06/02

スポーツ庁なんか要らない。「廃炉省」創設を!

2020年の東京オリンピック開催が決まって、スポーツ庁などという役所をこしらえてどうたらこうたらというニュースを見たり読んだりするたびに、おじさんは頭がおかしくなるぐらい怒りを覚えます。
スポーツ振興の重要性は理解していますが、国家にはそれぞれの事情による優先順位があります。ぶっちゃけ、たかがメダルの色と数に血道をあげるための予算のぶん取り合いをする以前に、日本にはやらなければいけないことがたくさんあると思います。
その一つが福島第一原発の廃炉。100年かかるとも言われています。まさに国家百年の計。「廃炉省」を創設してもらいたい。
汚染水だけとっても、100年の間にどれだけの量を貯蔵したり海に放出したりせねばならないのでしょう。100年後には福島県中が汚水タンク置き場になってしまわないか、おじさんは心配でたまりません。
今回は、チェルノブイリ原発事故で大変な被害を被った、ベラルーシについての新聞記事を紹介します。1992年1月17日の朝日新聞ですが、共同通信が配信した記事です。見出しは「チェルノブイリ税を新設」。原発事故処理のコストについて考えさせられる記事です。チェルノブイリと福島は、史上最悪のレベル7を記録した事故です。以下に引用します。


タス通信によると、ベラルーシ最高会議は15日、チェルノブイリ原発事故の復旧対策費をねん出するため「チェルノブイリ税」を新設することを決めた。農民以外は賃金の18%を納める。(引用おしまい)

原発事故の処理には、これだけの費用が必要だということです。ベラルーシは日本より貧しい国だから、所得の18%を取られても大した金額にならないと思っちゃダメだよ。日本の方が、処理するための人件費はかかるし、旧ソ連ほどの国土がないから汚染水置き場の用地買収にお金がかかります。日本は山林の面積が多いから、汚染水タンクを置いておく平地も限られているよね。
仮にお父さんに税抜きで月35万円の収入があるとします。ベラルーシのように、本気で原発事故の処理のために原発事故処理のために税金を取られると、毎月6万3千円を税金で引かれます。もちろん、所得税その他の税金は別に徴収されます。スポーツ庁のためのお金も持っていかれます。これじゃ勉強したくても、塾にすら行かせてもらえないね。
福島の事故は起きてしまいました。おじさんは、みんなの未来のために、ある程度の「廃炉税」を払うのは仕方がないかな、と考えています。原発推進にものを言えなかったおじさんたち世代のツケです。
それだけの事態を引き起こした責任です。これだけの事故発生の可能性を看過した日本人の経験をみんなに見てもらう。原子力政策の危うさを考えてもらえば、おじさんたちも身銭を切る価値があるというものです。