コピー禁止

2014/06/01

52歳の典子は、今

おじさんがまだ少年だったころ、「典子は、今」という映画が公開されました。脚本はあるけれど、障がい者の実話が元になったドキュメンタリー風の作品です。モデルになったのは、サリドマイドという薬のせいで、両腕が無いまま生まれてきた辻典子さん。この映画には、典子さん本人が主演で登場しました。
まだ若かったおじさんは、障がい者が社会で生きていく意義というテーマが理解できなかったために見るのがつらかった一方で、手の代わりに両足を使って日々の暮らしをこなしていく典子さんの姿に涙した思い出があります。
5月30日の毎日新聞夕刊に典子さんの近況が掲載されました。結婚して、今は白井のり子さん。長年勤めた熊本市役所を辞めて、講演活動をしていたそうです(今は終了)。「講演では結婚や子育て、車の運転などの挑戦を重ねてきた人生を振り返り『私は障害者だと思っていません』と胸を張る。彼女が伝えたいのは、もっと普遍的な、今を楽しく生きることの大切さだ」(以上、記事より引用)
今日は、典子さんが成人式を迎えた1982年1月15日にタイムスリップしてみます。翌16日の朝日新聞から引用します。

サリドマイド禍のハンディを克服した熊本市福祉課員の辻典子さん(19)も15日、大人の仲間入りをした。昨年は全国で200万人もの観客を集めた映画「典子は、今」に主演、予想もしなかった反響の大きさに彼女自身戸惑っているが、「この日を再スタートとして本当の意味で独り立ちし、障害者の問題に取り組みたい」と心に誓った。27日が20歳の誕生日。大人の女性として、結婚にも夢をふくらませている。
典子さんはこの日、市内の福祉センターで開かれた約20人の障害者だけの成人式に出席し、一般の式は敬遠。本当は両方とも出席したくないのだという。特別視されたり、騒がれたりするのが困るからだ。「障害はあるけど私は普通の女の子。特別のことをしているように見られるのが負担なの」という。
しかし、映画に出演したことでそれ以前に比べて強くなった、と自分でも思う。「人前で考えをはっきり主張できるようになった。最近は私の立場を障害者のために有利に生かしたいと考えている」
昨年から自動車の運転練習を始めた。両手がなくても免許が取れるよう法改正の準備が進んでいるが、自信は十分あるそうだ。(引用おしまい)

典子さん、当時からまったくブレていません。毎日新聞によれば、自動車運転免許も、結婚も出産も、実現させました。差別や偏見もあったでしょう。映画で有名になったから、やっかみもあったかもしれません。障がいがあることで、内向きになって人前に出るのを嫌がったり、自分本位になったりすることなく、典子さんは常に前向きです。
彼女は母子家庭で育てられたそうです。強く育った典子さんも偉いけれど、障がいを持つお子さんを甘やかさずに、強く強く育てたお母さんもきっとすごい人だったんだね。
話は障がい者に限りません。収入が思うように上がらないとか、学校の成績が悪いとか、そんなことで自分を投げ出すことないよって思えます。
おじさんもとても弱い人間なので、つらい、しんどいことにしょっちゅう悩んでいます。でも、久しぶりに典子さんのことを思い出して、もう少しばかり強くなりたいと思いました。
白井のり子さんの公式ホームページはこちら