コピー禁止

2014/06/01

オバQ著作権戦争・日本が中国モラルだったころ

商品に付加価値をつけて売りまくるのは、資本主義の基本です。お父さんがベンツだビーエムだ、お母さんがシャネルだヴィトンだとか言っていませんか?
こどもの世界にも昔からブランド信仰がありました。お菓子の包装にアニメのキャラクターを載っけるだけで、商品の売り上げが爆発的に伸びた時代です。1960年代前半に「鉄腕アトム」「鉄人28号」「ポパイ(Popeye)」が三つ巴でお菓子商戦を繰り広げたのが、日本の本格的なキャラお菓子戦争の最初だと言われています。
お菓子の会社は、著作権を所有するマンガ家やプロダクションからキャラをお菓子のパッケージに載せる権利(商標権)を買ってもうけにしていました。
その流れが頂点に達したのが、藤子不二雄の「オバケのQ太郎」のアニメ放送開始時だと思われます。偽物の粗悪なお菓子が大量に発生、大混乱におちいった様を1966年1月16日の朝日新聞が伝えています。以下に引用します。

(前略)他の製菓会社と争奪戦を演じた末、年間数千万円といわれる著作権料を払ってF社(注・不二家)がオバQの商標権を獲得したのは昨年2月。テレビマンガのスタートと同時に、売り上げはぐんぐん伸び「ガムでもチョコレートでも、オバQは、ポパイより十倍強かった」(F社企画部員の話)とか。
ところが、この人気に便乗して、F社の商標権を侵害するオバQのオバケが次々に出現した。有害色素をふんだんに含んだオバQあられ、中には法網をくぐったつもりの"オバOキャンデー" "オバKチョコ"など。
F社の話では、大阪、名古屋方面のダ菓子メーカー40、50社。はじめから著作権法違反は承知の上の計画的な"一発勝負"らしく、一回に40、50万ケースぐらい造って、手早くダ菓子屋に卸す。店頭でF社のセールスマンや問屋の店員が発見して、F社から弁護士が乗込み、残品があれば焼却させるがその時には、残品ゼロというケースがほとんどだという。
テレビ登場の2週間後には、オバQのオバケ第一号が出現、以来、F社が退治した著作権法違反だけで約百件。(後略、引用おしまい)

今の日本では考えられない騒動です。中国の遊園地などで、著作権を冒とくしたインチキ偽ドラえもんなどが話題になったことがありましたが、こうして日本の歴史を振り返ると、「いつか来た道」だったことがわかります。こうしたずさんな商売が我が国から消滅したのは、社会が成熟して「偽物を買うのはダサい」との意識が定着したから。需要がなければ供給する業者もいません。
おじさんが気になるのは、中国にまん延する偽物の山を、中国文明の為せるものと決めつけて、中国文化と中国人をバカにする論調です。
著作権を無視するのは確かに恥ずかしいことですが、それを国民性に結びつける議論は無為です。
オバQ騒動から、いつか来た道なのだと振り返る視点こそ、未来をになうみんなに持ってほしい感覚だと、オバケのQ太郎が大好きだったおじさんは望みます。