パパはどう? 「寧丸」って何それぇ? ふうん、サッカー好きだからネイマールなんだ。それも候補に入れましょ。
他には? 「大鯨」って、艦隊これくしょんのやり過ぎよ。でも、強そうでいい名前かも。
うちは「オダ」だから、「信長」なんかどうかしら? 「小田信長」。進学したら番長になるかも。第六天魔王なんてアダ名ついちゃったりして。どうしましょう、きゃー。
パパのおうちは浄土真宗本願寺派だったわね。アタシの実家は確か延暦寺で、両方とも昔皆殺しにされたけど関係ないわ。それじゃ「信長」に決定ね! どきゅーん!
我が子の命名は親の権利ですが、同時にこどもを幸せにする義務を伴います。価値観は人それぞれといえど、おじさんなら「信長」とか「竜馬」とか、若くして謀殺、暗殺された人の名前を自子には授けません。とっぴだったり、有名人から取る名前は、キラキラネーム、DQNネームとして、絶対にお勧めしません。
1983年に兵庫県の家裁支部が、当時小学生だった「田中角栄」君の両親の申し立てを受け、こどもの改名を認める決定をしました。そのてん末を紹介します。同年3月31日の朝日新聞「12歳の田中角栄君改名」を引用します。年号は昭和です。
(前略)改名については戸籍法107条2項で「正当な事由がある場合」としており、政治家や刑事被告人と同じ名を理由に変えることを認めたのは珍しいケース。角栄君は4月から新しい名で中学校に通う。申立書によると、兵庫県の田中角栄君は46年1月、田中さんの長男として生まれた。田中さんは、自民党幹事長で「飛ぶ鳥も落とす勢い」だった同姓の田中元首相にあやかって角栄と名付けたという。ところが51年、ロッキード事件が発覚。翌年小学校に進学した角栄君は同級生どころか、地元の人からも「角栄」「ロッキード」とからかわれ、2年生になったころから学校へ行くのをいやがるようになった。両親らはなだめて学校へ通わせたが、家では角栄君が「あの角栄が……」と口ばしるようになった。このため家族は角栄君に別の名前をつけて呼ぶことにし、小学校にも「この名前を使ってほしい」と協力を申し入れた。学校の先生には「苦しさに耐えられる人間に育てることも大切」との意見もあったが、両親が改名の手続きをすることで、その実績づくりに役立つこともわかったので、これに協力、先生も別の名前で出欠をとるようになどしてきた。この実績に加え、田中元首相に対し今秋にも一審判決が出そうになったことから、両親は「ぜひ中学校ではこの別の名前で通わせたい」と3月はじめ家庭裁判所に改名の申し立てをした。30日の家事審判で裁判所側は「罪のない子供が、ロッキード事件の社会的反響で苦しんでいる事実が認められる。角栄の名は将来好ましくない」と、家族や学校で呼んでいた名に変えることを認めた。(引用おしまい)こどもは残酷です。異分子、マイノリティはいじめの対象にされます。それを防ぐのは親であり教師ですが、いつの時代のどこにもバカなセンセイはいるもの。「苦しさに耐えられる人間に育てることも大切」って何だよ。こどもの障害をあたう限り取り除くのが教師の務めだろうが。何かあった時、お前が責任取れるのかよ。
つい、言葉が汚くなってしまいましたが、こどもの名付けは慎重第一でどうぞ、兵庫県の元田中角栄君が、立派な大人に成長していることを願いつつ。