コピー禁止

2015/01/26

アベノミクスはキューバの夢をみるか

アメリカとキューバの国交回復交渉の開始は、久しぶりに期待を持って見聞きできるニュースです。
1959年に米国の利権保証人のようなバティスタ大統領が革命で追い出され、米国資産が新政府に接収されて以来、冷戦が終わった後も憎しみ合って、50年以上も両国の関係が冷え切っていたのは異常。
共産主義の失敗はソビエト連邦建国・崩壊という「実験」によって証明されましたが、革命当初に英仏がソ連に、米国がキューバに行った干渉が、両国を警察国家化させた原因の一つでもあります。国が海外の脅威を強調し始めたら要注意。市民の権利を制限する意図があると考えて間違いないでしょう。
米国との対立によって、キューバ経済は困窮に陥ります。そこに手を差し伸べたのが共産圏諸国。この援助がめちゃくちゃで滑稽なので紹介します。
1962年11月19日付の読売新聞「共産圏援助に失望のキューバ」から引用します。
(前略)1960年以降現在までキューバとの間に長期借款供与協定を結んだ国は、東ドイツ、チェコ、ブルガリア、中国、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、ソ連、ユーゴの9か国、借款総額は3億5700万ドル、提供プラントは145、無利子条件の中国を除けば平均年利2.5%、10年間年賦償還というのが条件である。このうちソ連の援助が2億ドルで一番多く、その借款は製油所、火力発電所などのプラント(22)購入に当てられている。第二が中国で、万年筆、織り物工場建設のための6000万ドル(プラント24)である。第三がチェコの4000万ドルで、自動車工場、自転車工場、鋳型工場、発電機モーター、化学製品、鉛筆工場など(プラント26)残りの国々が造船所、セメント工場、道路建設、機械などを受けもっている。
ところが現地の消息筋にきいてみると、協定はできたものの、いままでにできあがったものはおよそいまのキューバにとってどうでもよいようなチェコの鉛筆工場だけ。しかも現在チェコから黒鉛がこないので、事実上生産停止の状況という。一方キューバ政府がいま一番困っておるのが既存工場設備の老朽化問題である。もともとキューバには加工製造工業しかないが、その機械はすべてアメリカ製。ところが部品を交換しようにもソ連の機械はメートル法を採用しているので、インチ制をとっている既存設備の部品は手にはいらない。その結果キューバの唯一の外貨獲得の道である砂糖生産は62、63年度に大幅に低下する見通しだという。
このような状況なのでキューバの工業生産は61年半ばから急激に悪化し、現在の生産は57年にくらべて5分の1まで低下したといわれている。あるキューバ人は共産国援助がいかにキューバの現実の要求とズレているかについて次のように皮肉っていた。
「ソ連はどういうわけか大量のトラックをくれたが、運ぶものは何もない。だから半分以上は置きっぱなしになっている。ちょうどこどもが入学するとき防止も、洋服も、クツもいるのにクツだけ何足もくれたようなものです」(引用おしまい)
全ての経済の方向性を政治家が決めて、実態を見極められない末の悲喜劇ですね。共産圏が多用した「計画経済」というヤツです。数千万の餓死者を出しながら、他の選択肢なく、愚策を止められなかった毛沢東の大躍進政策なども、典型的な失策。共産主義にしても戦前の日本にしても、「この道しかない」という考え方は民衆の悲劇を生みました。
経済はいつでも先行き不透明。お国のリーダーが、上手く進んでいないものを「この道しかない」などと言い出したら、共産主義的な思考停止の病と疑ってかかるのが妥当だと思います。