コピー禁止

2014/12/23

オートバイ考・ヤマハ「デザインはシェアのため?」

ヤマハのロングセラー二輪車SR400を所有したことがあります。サイドカー付きね。
20数馬力の空冷単気筒&前後ドラムブレーキの車体の横に重量物をガチ着けしたコイツは、走らない、止まらない、当然旋回にも難ありの地獄のマシンでした。良い子は絶対にマネしてはいけません。
ホンダがレブル・スペシャル、GL400カスタムで、ヤマハはSRのサイドカーか。我ながら車暦が珍車コレクターですが、カネがないと、つい買える物件に飛びついちゃうものなんです。みんな貧乏が悪いんや。
オシャレなイメージがあるヤマハですが、過去の新聞記事を調べてみると、カッコいいオートバイを自由に造るってより、カッコいい製品出して市場占有率を伸ばしたい、という色気が感じられます。HY戦争開戦前夜にあたる、1981年8月29日付の朝日新聞「スクーター論争 ホンダに軍配」から引用します。
売れて売れて笑いがとまらないスクーターブームの裏で、業界1、2位のホンダとヤマハが火花を散らしていた「どれがスクーターか」の分類問題にこのほど決着がついた。日本自動車工業会がヤマハの「パッソル」「パッソーラ」の2車種を「統計分類上、スクーターとして扱わない」と決め、ヤマハの主張を退けたからだ。
スクーターは本田技研工業が昨年9月、50ccの「タクト」を発売して以来、人気は急上昇。遅れてはならじとヤマハ発動機が「ベルーガ」、鈴木自動車工業が「ジェンマ」を出したが、どの車種も生産が追いつかないほどの売れ行き。
そんな中で、この6月、ヤマハ発動機が「わが社のパッソル、パッソーラもスクーターだ」といい出したことで業界内に波紋が広がった。シェア争いがきびしいこの業界。国内ではヤマハがホンダを急追し、手の届くところまで迫った。
ホンダがソフィア・ローレンを起用して売り出した女性用バイク「ラッタッタ」の対抗商品として、八千草薫をかついでヤマハが売り出したのがパッソル、パッソーラの“姉妹”。シートにまたがる形の「ラッタッタ」に対し、「パッソル」などは足をそろえて乗れるスクータータイプ。しかし、かつてのスクーターには、転倒しやすい、とのイメージが強かったため、女性需要をねらったヤマハは「スクーター」の表現は極力避け、「ソフトバイク」としてPR。ところが、最近になってスクーターと呼んだ方が売れるようになったため、急きょ「これもスクーター」となった次第。(引用おしまい)
「ソフトバイク」とは何ですか? 白い犬のお父さんがしゃべるヤツですか? ホンダのスクーターは「ラッタッタ」ではなくて、「ロードパル」が商品名なのですが、朝日新聞の記者が間違うほどにキャッチコピーが浸透していたのですね。広告戦略としては大成功。
ソフィア・ローレンさんを起用したホンダ、八千草薫さんのヤマハに対し、スズキはイタリア産マカロニ西部劇の元スター、ジュリアーノ・ジェンマでした。商品名も「ジェンマ」。
当時、マカロニウエスタンのブームは、数年前に完全終了しており、公開されるイタリア映画は、ホラーかエロチック路線に移行していました。しかも、消費者たる女性の購買欲を無視した、1960年代のマカロニスター、ジェンマとの心中。まさにスズキらしい外しっぷりです。1980年代以降、ジュリアーノ・ジェンマ単独の主演映画が公開された記憶がありません。
おっと、ヤマハの話でした。ヤマハはスクーター市場でのシェアが気になっていたようですね。「ソフトバイク」なる変語を自ら作っておきながら、「スクーター」だと言い出す変節ぶり。ケンカ上等のホンダは、もちろん妨害に走る。
引き続き、同記事から引用します。
一方、自工会も市場動向の変化に対応し、オートバイの分類見直し作業を開始、今年から「スクーター」の項目を設けることになった。問題はどの車種をスクーターと呼ぶか。もともと定義がはっきりしないだけに、「形態から見てあれは立派なスクーター」と主張するヤマハをなだめるのに難航して作業は半年間空転。結局、はっきりした定義はできぬままに「パッソル、パッソーラはバイクとして売り出したのだからバイクに分類する」と事務局が説得して、決着が図られたが、「対外宣伝は自由」。ヤマハは依然として「ヤマハのスクーターは――」のキャンペーンを続けていくようだ。(引用おしまい)
自工会は何のために存在するんでしょう。消費者の便宜目的ではなさそうです。業界間のモメごと調整団体ですか?
SRのサイドカー以外、ヤマハのオートバイを所有する機会はありませんでしたが、知り合いの不人気珍車隠れた名車を運転させてもらったことはありましたよ。超軽量2ストローク大振動発生波動砲SDR、デザインのヤマハの代表作だとオーナーが言い張る熱く語るTRX-850などなど。不人気銘柄がとことんバランスを失うホンダと対照的に、マイナー車種も面白いヤマハ。占有率をいったん忘れてフリーに造ってくれれば、もっともっと素晴らしいブットビ製品が現れるのではないかと期待しています。やり過ぎるとスズキになっちゃうけど。
次回は好事家にとって夢のようなネタ商品を次々とリリースしてくれる、独立独歩のスズキです。