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2014/12/04

元患者が支えるアルコール依存治療

朝の連続テレビ小説「マッサン」の壊れ方が普通ではありません。
昨朝の放送でも、例によって酔っぱらった主人公(何度目?)が居酒屋で、正面にだれもいないのにブツブツ、というより大声で職場のグチを話し続けていました。今朝は「嫁の笑顔があったから北海道に工場造る」などと意図不明の妄言。
以前の記事で、主人公がアルコール依存症である可能性を示唆しましたが、かなりの重症では? 依存症治療中の漫画家吾妻ひでおさんの実録作品によれば、幻覚症状も出るそうです。昨日のラストを伏線に、これから空飛ぶネコなんか出さないでね。
朝ドラには重過ぎるテーマだから、もうやめてほしいのですが、現実にアルコール依存症で苦しんでいる方は全国に大勢いらっしゃいます。今では彼らを支える組織も全国にあります。
今日は、その中核団体をつくった人のお話をします。1989年6月24日付の朝日新聞夕刊「アル中紳士」から引用します。一部に今では不適切とされそうな言葉がありますが、当時の雰囲気を大事にしたいので、そのままにしてあります。
エリート会社人間にアル中が増えているという。日本の断酒運動のドン、大野徹さんは、さしずめ、その元祖だ。
東大経済部を卒業、一流企業に入社したのだが、接待で夜ごと飲む酒が習慣になって、アルコールを手放せなくなってしまった。(中略)大野さんを変えたのは、断酒会だった。卓子夫人が初めは一人で通い続けた。アル中になる人は、どうしても節酒ができない。ちょうどブレーキがこわれた車みたいなものだ。立ち直るには、酒を断つしかない。「今日は飲んで明日からやめる」代わりに「今日は飲まずに明日飲もう」と考えてそれを毎日続ければよいのだが、それがなかなかできない。
断酒会は、酒がもとで家族を泣かせ、職場で信用を失った体験を持つ人の集まりだ。いまは酒と縁を切って幸せな生活を送っている先輩たちが、手をとって後輩を支える。
(中略)1963年に全日本断酒連盟を結成した時には、傘下の断酒グループは高知と東京の二つだけだった。それがいま全国700グループに増え、「断酒会なしにアルコール依存症を解決することは不可能」と専門医たちからも頼りにされる存在になった。
(中略)大野さんは、酒と同じやり方でたばこもやめた。80歳を迎えても元気そのものだが、「若い人に新風を吹き込んでもらいたい」と、25日東京で開かれる総会で理事長を引退する。(引用おしまい)
病に打ち勝った人々が、同病に悩む他人を救うべく、世代を継いで努める。「アル中」という世間の目もあるだろうに、それができるのは、痛みを知る人間に生まれる優しさなんでしょうか。
マッサンにも立ち直ってもらいたいものですが、難しいですよね。酒造業者が断酒組織と関わったら、ドラマがますますおかしくなってしまいますから。