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2014/10/20

美智子皇后と戦争

皇后陛下が傘寿を迎えられました。美智子さまにとって、この80年は長かったのか、それともあっという間だったのでしょうか。
後の皇后、正田美智子さんが誕生した19341020日、日本でアジア初となる赤十字の国際会議が開かれました。皇后さまは現在、日本赤十字社の名誉総裁を務めていらっしゃいます。
赤十字は当初、戦争時の人民救護を目的に結成された組織です。今日は同日付(発行は19日)東京朝日新聞夕刊「米国赤十字の生みの親来朝」から引用します。仮名遣いなど、おじさんが現代風に修正しています。
【横浜電話】総会開催を眼前にアメリカ赤十字本部事務総長同篤志婦人会長メーベル・ピー・ボードマン(Mabel T.Boardman、注・「ピー」は「T」を記者が聞き誤ったか?)女史が4名の代表と同行、19日早朝横浜へダラー汽船クーリッジ号で安着した。女史はアメリカ赤十字産みの親ともいえる人。本年72歳のこの老女史こそは20世紀のナイチンゲールともいうべく世界赤十字の至宝である。女史は1900年、米西戦争直後赤十字の必要を痛感、生涯をこの事業に捧げんと決心。現在篤志会員400万人、少年赤十字会員700万人のグレートアメリカンレッドクロスを築き上げた人である。女史は語る。私は将来戦争の根絶を期して仕事をつづけるのです。今度の総会では、学校衛生、空襲時の非戦闘員防御等が論議されるでしょうが、いずれにしても最後の目的(無戦闘)に向かって努力すべきでしょう。私がかつて日本を訪問したときに日本からいただいた赤十字社のマークをそのまま欧州大戦に使用したことです。女史は今より29年前の明治39年、当時の米大統領タフト氏と来朝。親しく明治大帝に拝謁おうせ付けられ、我が国より勲5等宝冠章を賜るほか、英米仏その他各国より十数個の勲章を受けている。(引用おしまい)
ボードマンは自らの使命を「戦争の根絶」だと断言しています。皇后陛下の思いも同じでしょう。
昨年の誕生日、皇后陛下は明治時代に作られた民主主義憲法草案「五日市憲法」に言及されました。法改正を伴わない、解釈だけでの戦争する権利に前のめりになっている安倍政権への皇室からの精いっぱいの抗議だと、だれもが理解しました。
結婚と同時に、日本史上初めて、戦争を放棄した現憲法下での皇后になる決意をされた方です。重い一言です。
天皇家の名の下に数百万の国民と外国人の命を奪った大戦を経て、今や皇室の次の世代が戦争抑止力にならんとしている。戦争根絶を誓うボードマンが会議に臨んだその日に生を受けた女性が、80年後に奇しくも、かの米国人と思いを同じくしているんです。
日本も、人類も、まだ捨てたものではありませんね。