まずはベッドで男を誘う、マハとかいうインビな全裸のバイタの絵は撤去。ゴヤなる画家はゼゲンですかな?
おや、これは黒人のハダカですか? タヒチの女たち? タヒチだかヒタチだか知らんが、このゴーギャンとかいうのも撤去してもらいます。ハダカは青少年教育を害する。
次は藤田嗣治と称する外国カブレのハダカ絵。「乳白色の肌」とは扇情的だ。「キキ」などというガイジン女の春画に風俗蹂躙されたら日本道徳社会の危機ですからな。撤去!
はて、これは版画ですな。よくわからん文字が書きなぐってあるが、全裸の女の肉感がよろしくない。棟方志功ってのは、青少年保護のためにも外していただく。検挙しますぞ。
次行きます。うわっ、タコとハダカの女が絡み合っているではないか! 葛飾北斎と名乗る変態野郎の落書きはすべて展示を禁止する!
前項からの続きです。写真家鷹野隆大さんの愛知県美術館での展示に“行政指導”が入ったことが話題になっています。現行憲法が施行されて以降も、行政の芸術への介入はとどまることを知りません。
1973年、美術界の巨人パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)が死去。晩年の版画集を日本国内で展示販売する企画が持ち上がります。しかし、芸術の理解にかけて人後に落ちないニッポン官僚組織は見事な反応を示しました。同年6月9日の朝日新聞夕刊「エロチカはわいせつ」から引用します。
(前略)この作品展は「ピカソ347展実行委員会」(石田博英会長)の主催で、14日からそごう東京店を皮切りに8月22日まで東京、神戸、大阪、千葉で開かれるもの。展示作品は43年の3月から10月にかけて、当時87歳だったピカソが一気に制作したもので「ピカソ347点の銅版画」または「エロチカ」として知られている。この連作は「人間の赤裸々な世界を描こうとした作品」と評されている。ピカソの版画見て欲情する人、手を挙げて! いませんよね……。 大蔵省も税関も何を考えてるんだか。役人は学芸員なんてハナから信用していないし、そもそもどんな仕事なのかもわかろうとしないでしょうね。「前例」というのは、この3年前に行われた展覧会でも、この20点が外されたこと。前例を変更したがらないのも官僚の習性です。
実行委はこの全作品347点を集めて、展覧会を開いたあと販売しようと5月はじめに輸入した。ところが、大蔵省関税局と東京税関では「前例もある」としてわいせつ性からこの20点を輸入差し止めにした。実行委は、展覧会を開催するためにと、この措置に応じ、残る327点を輸入したという。
(中略)東京税関では「芸術を理解することにかけては人後に落ちない。しかしそれぞれの国に風俗、慣習、道徳がある」と、いう。(中略)
税関が輸入品をチェックする根拠は関税定率法の「輸入禁制品」(21条)である。同条3項によれば「公安または風俗を害すべき書籍、図面、彫刻物その他の物品」は輸入してはならないことになっている。こんどのピカソ作品の一部は、この項にいう「風俗を害すべき図面」に該当するというのである。(引用おしまい)
ピカソ作品公開のハードルは、もっと上がります。大蔵省・税関の後ろに、あの警視庁が控えているのです。この項、さらに続きます。