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2014/07/28

太平洋の地獄

毎日暑いですね。昨日の図書館は夏休みのこどもたち、受験生と避暑とおぼしき人たちでいっぱい。縮刷版を見るのもひと苦労です。
納涼じゃないけど、今日はこわいお話をします。嫌な話、気持ちが悪い話と言ってもいい。でも、戦争を語る上で避けられない一例だと思うので、紹介することにしました。戦時中の日本軍による人肉食のお話です。都合の悪い歴史から逃げていたら、正しい未来も見えなくなっちゃうからね。
敗戦国日本を裁いた東京裁判は、全部がデタラメだと言う人がたまにいます。いろんな人にいろんな罪状があって、それぞれを見ると、戦争の悲惨さを考えるのに見逃せない内容がままあります。フィリピンでの皇軍の残虐行為を告発したものに、戦争行為を考えるために見過ごせない一文がありました。1946年12月12日の朝日新聞「東京裁判 人肉食って戦い抜け」から引用します。
(前略)「人肉を食っても戦い抜け。但し(ただし)友軍の肉を食ったものは処罰する」との命令を受けた日本兵捕虜、(注・実名省略)元上等兵の供述書などを朗読(引用おしまい)
フィリピン戦線での証言。にわかに信じがたい軍令です。東京裁判がすべて虚偽であってほしい、と願ってしまいますね。ところが、 1995年1月11日の同紙にはフィリピン・ミンダナオ島で島民の肉を食べたとする元兵士の証言が、1994年9月27日にはマーシャル諸島にいた韓国人の元軍属が人肉を食べさせられた証言が載りました。
補給線が絶たれた外地の日本軍で大量の餓死者が出たのは事実ですが、カニバリズムは人類最低最悪の所業。いや、もうヒトではありません。おじさんも絶対に信じたくないのですが、史料は容赦してくれません。
ニューギニア戦線も飢餓の地獄絵図が展開された地でした。1993年11月18日の同紙「戦争末期のニューギニア戦線 日本軍が人肉食禁止 『敵は除外』の記述も」から引用します。
(前略)東部ニューギニアで、現地の日本軍が師団名で傘下の部隊に「人肉食を禁止する」という秘密命令を出していたことがオーストラリア側の史料で明らかになった。被害者がオーストラリア兵だけでなく日本兵も含まれていたことや、敵兵に対する人肉食は事実上、容認されていたことを現地軍上層部が公認した形になっている。(引用おしまい)
記事によれば根拠となる文書は、1944年11月18日付の「41師団秘密命令」の英訳文。オーストラリア側がこの年12月末、激戦地アイタペ(Aitape)近辺で日本語の原文を発見し、翻訳したとされています。発令者は当時歩兵団長だった少将の名が記され、あて先は歩兵連隊、野戦病院などの「全指揮官」となっているそうです。記事から引き続き引用します。
冒頭に「最近、犯罪、特に殺人、強盗、人肉獲得が当師団の管轄区域で頻繁に起きており、軍の士気に悪影響をもたらしている」とし、これらの犯罪の早期発見と防止の指示を過去にもしばしば発令したことにも触れている。人間性や仏教の戒律にも言及し、「即刻措置が必要」と訴えている。
また、命令書の「別紙」として、殺人を禁止する法令などが添えられ、「何ら関連法令はないが、人肉(敵は除外する)を人肉と知りながら食べた者は、人間の最悪の犯罪に当たることから死刑に処する」と、味方と敵を区別する記述があった。(引用おしまい)
「人種が違えば食べてもいい」。戦争の狂気、日本軍にて極まれり。補給の破たんは軍組織の破たん。破戒と破滅へまっしぐらです。
 最近アンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)さんが旧日本軍の残虐行為を描く映画を監督したそうです。今の世界に当時の日本がどう思われているのか、日本人が知るため、ぜひ全国での公開を望みます。
過去を知ることなく、人間は前へ進めません。