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2014/07/11

かつ江さん騒動と日本陸軍(2)

補給路がなくなっても、軍中央は撤退を許しません。ニューギニアを失えば、フィリピンに連合軍の爆撃機が飛んでくるからです。現地部隊はサバイバルブックを作成します。極限状態にある人間の強さを感じます。
1943年5月5日の朝日新聞「ニューギニヤ陣中敢闘録(粕谷特派員)」から引き続き引用します。
(中略)それは部隊の経理部で数カ月かかって調べたという「徹底したる現地自給の参考 植物編」と題する研究報告書だった。この本にはありとあらゆる“食える野草”、“食える木の実”の色や形状、味、調理法等が詳細な図解とともに記載されている。この虎の巻を頼りに、雑草から十数種の“食えるもの”をすでに見付け出した。
野草にも存外うまいものがある。栄養からいっても好成績で、「徹底したる現地自給」は、凱歌のもとに実践されている。経理部は「動物編」も作って食糧戦線拡大を研究中だ。陣地のまわりを見ると、どこへ行っても、きまって農園が付き物だ。
潟地を埋め立て、ジャワあたりから持ち込んだ茄子、瓜、豆、芋などの野菜を作る。バナナ、パパイヤの果樹も移し植えられたが、部隊の日課時間を見ると、朝と夕、1時間ずつ農作の時間がある。
かつて施されたことのない荒れ地勇士の逞しい開墾の鍬が加えられ、不毛の地とさえ伝えられたニューギニヤの土は目覚ましい脱皮を遂げているのだ。(引用おしまい)
農業舐めるな。泥濘の湾岸と漆緑のジャングルに、よそから持ってきた作物がほいほい育つかいな。現代において、ニューギニアの焼畑農業が環境破壊として問題になっているのに、軍人の素人耕作で豊作豊作言うとったら世話ないわ。
つい、おじさんの地金が出てしまいましたが、この下りはおそらく創作。他にも、兵隊が連れてきた牛豚、鶏も飼育されているという表記がありましたが、そんなことに手間かけてたら戦争になりません。これでは陸軍師団ではない。ただのニューギニア開拓団です。
現地にはさらなる問題がありました。当然ですが戦争も継続中です。続きを引用します。

(中略)蟻もマラリヤ蚊もいるし、茂った木からは気味の悪い山蛭が木の枝からボタボタ落ちて来て体中に吸い付く。猛獣は殆ど棲息せぬニューギニヤでは、これら小動物こそ兵隊さんを苦しめる大敵なのである。
豪州の敵基地から一飛びのところであって見れば、空襲の頻繁なのは素(もと)より覚悟の上だ。もう馴れっ児になった兵隊さんは、これを「マッカーサーの副官が寄越す定期連絡兵」と呼び、「1週間遅いんだろう」と物足らぬ顔だ。(引用おしまい)
死者の半数以上が、栄養失調を含む病死だという事実を裏付ける記事です。空爆もあったということですね。ニューギニアは対戦国オーストラリアから目と鼻の先。爆撃と飢餓にさらされた兵隊さんの苦労がしのばれます。
かつ江さんが不謹慎だというのなら、ニューギニアの「英霊」を忘れないためにゆるキャラを考案するのはいかがでしょう?近代の悲劇だからより重要だと思われます。お国に置き去りにされて、お国に殉じた、飢えと連合軍を相手に戦った兵士を記憶に残しましょう。「かつ兵」はいかがですか?不謹慎ですか?忘れること、忘れようとすることの方がよほど不謹慎だと思いますが。