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2014/06/24

眠りの森の美女は第三帝国の夢を見るか?

独裁または軍事国家は、時に失笑するほどの愚行をやらかします。もしそれが指を指して笑いたいぐらいの狂気の産物であっても、当事国の市民にとってはちっとも面白くないことがあるから難しいんだよね。
今日はナチス政権下のドイツが、いかにバカげたプロパガンダ(政治・思想宣伝)をやっていたかを検証します。1935年1月29日東京朝日新聞から「ナチスの童話」を以下に引用します。太字挿入はおじさんによります。

ナチス万歳のドイツでは、ナチスの宣伝が遂に幼年教育の域にまで迫ってきた。最近刊の「ナチス小学教員新報」を見ると、世界的に有名な童話をナチスのイデオロギイで解釈して、改作してゐる。
其一例だがペロオ(Charles Perrault)の童話「眠りの森のお姫様」はここではドイツ復活の比喩になってゐる。
魔女カラボツス(Carabosse)は美しいお姫様「ドイツ」を殺さうと謀るナチスの「敵」であり、姫を長い眠りによって死から救った善良な仙女は即ちドイツの民族意識に喩えられてゐる。
面白いのは、例の眠りの森の奥深くで、永久の眠りに陥ちたお姫様の目を覚まさせようと試みる諸々の王子達で、マルチン・ルーテル(Martin Luther)やフレデリック大王Frederick the Great)やら、さてはビスマーク(注・ビスマルク、Otto von Bismarck)までご苦労にも登場するのだが、いつかなお姫様はお目覚めにならない。
とど騎士ヒットラーAdolf Hitler)が出現して、眠れる姫の魂に接吻することによって、遂に姫「ドイツ」を覚ますことが出来たといふ。めでたき限りである。(引用おしまい)

もうね、アホ丸出しのおとぎ話なんですが、フランス民族大嫌いのナチスとしては、「ペロー原作」と取られるのは嫌だろうね。グリム童話集(Grimm's Fairy Tales)の「いばら姫」からの翻案とせよ、ってところかな。
朝日新聞の記者はナチスの姿勢を半分バカにしていますが、数年後には日本国内も、防諜童話やら防空童話やらでお腹いっぱいになるんです。めでたき限りになります。
ドイツ人にとってのナチスのユダヤ人虐殺、日本人にとっての原爆投下。独裁政治や戦争になると、笑えないお話がたくさん生まれます。みんなで戦争のできない国になって、ドイツ人、アメリカ人、中国人や朝鮮半島の人たちとも、お互いに気軽なジョークを言い合える時が訪れたらいいな。

追記:このブログは、なぜか日本より海外からのアクセスの方が多いので、外国人の固有名詞には、アルファベットを振ってあります。