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2014/05/27

「題名のない音楽会」と「美味しんぼ」

今日の読売新聞夕刊によると、テレビ朝日の「題名のない音楽会」が放送50年を迎えるそうです。司会の佐渡裕さんは世界的にもすごい指揮者なのに、ちっとも偉ぶってるように見えないから、とっても感じがいいよね。おじさんも大好きです。
半世紀続いた番組は、決して順風満帆ではありませんでした。今回は「題名のない音楽会」が政治に巻き込まれて大ピンチに陥った時のお話です。1977年11月11日朝日新聞夕刊から引用します。ちなみに、当時の司会者は佐渡さんじゃなくて、戦争ができる国をつくるため、憲法改正に燃える黛敏郎(このブログでは故人に敬称を使いません)という人でした。

自民党は11日の役員会で、放送問題委員会(原田憲委員長)を設置して先月末にテレビ朝日の番組「題名のない音楽会」で録画済みの「教育勅語のすすめ」が放映中止になったことについて調査を始めることを決めた。当面はこの「教育勅語」中止問題が中心だが、同委員会はテレビ、ラジオ番組全般について類似問題が起きた場合には調査に乗り出すとしており、その進め方によっては今後論議を呼ぶことになりそうだ。(引用おしまい)

「教育勅語」とは簡単に言うと、明治から敗戦までの学校教育の基本でした。日本は天皇を頂点とする身分制度でできていて、上の人が言うことは間違っていると思っても聞かなくちゃいけないし、みんなは天皇の臣下だという理屈でつくられています。勅語に従わされてたくさんの人たちが戦争で亡くなりました。
おじさんは勅語復活に絶対反対だけど、日本では言論と表現の自由が保障されています。なぜこんなことになったのでしょう。続きを引用します。

問題にされている番組は先月中旬に公開録画されたもので、司会の黛敏郎氏(自民党の自由国民会議の発起人代表)が教育勅語の歴史的経過などを説明し、出演者が教育勅語を朗読する場面があった。30日に放映が予定されていたが、26日の衆院逓信委員会で社会党委員が「内容に問題はないのか」と取り上げ、参考人として出席した日本民間放送連盟の代表が「テレビ朝日は自主的に放送を取りやめる」と説明していた。(引用おしまい)

野党だった社会党の議員がしゃしゃり出てきて、言論の自由を邪魔したんだね。放送させたらいいよね、表現の自由があるんだから。
社会党という政党は、枝葉にこだわって本質を見ないままおよそ1980年代までのアメリカと旧ソ連とのにらみ合い構造に乗っかってきただけの組織だったから、余計なことばかり言ったりやったりで今ではすっかり衰退してしまいました。野党が無能だと、与党の政治がやりたい放題になります。今もそんな感じなので、おじさんは無能な人たちに対して怒っています。その結果、どんな風になったのでしょう。さらに続きを引用します。

しかし、自民党ではタカ派を中心に「言論抑圧ではないか」などと放映中止を問題視する空気が強まり、自民党議員の支持母体になっている宗教団体などからも事実究明を求める声が寄せられていた。このため放送問題委員会では、とりあえず黛氏ら番組関係者の話を聴き、放映中止の経緯を調べ、自民党としてのこの問題に対する見解をまとめることにしている。(引用おしまい)

ほら、いいように利用されちゃった。テレビ局は社会党の言うことを聞いて、番組放送を中止したのに、司会者の黛敏郎は自民党の有力者だというねじれが興味深いです。番組つくる前にどんな話し合いをしたんだろう?
おじさんが気になって仕方がないのは、自民党の「テレビ、ラジオ番組全般について類似問題が起きた場合には調査に乗り出すとしており」というくだりです。記事ではさらっと流していますが、これってあらゆる番組への言論統制だよね。
「美味しんぼ」が表現の自由を保障されずに休載に追い込まれた時、野党はまったくの役立たずでした。みんなが大人になって、議員を選んだり議員になろうと思ったりしたら、そのへんををよく考えてほしいな。