怖い毒薬だけど、暴力団がお金もうけのために市民に売りつけます。大人になってもかかわっちゃダメだよ。
今日はアニメでおなじみの「サザエさん」に覚せい剤が出てくるお話です。この4コマ漫画は朝日新聞に連載されていました。1952年12月8日の紙面です。
薬局でサザエさんの知人の作家「カクセイざいをくれたまえ」
作家「あす文士劇をやります。招待券あげましょうか」
タラちゃんをおんぶしたサザエさん「まアうれしい」
タラちゃんをおんぶしたサザエさん「まアうれしい」
作家「これからてつやでせりふのもうれんしゅうです」
部屋で大いびきをかいている作家の先生。ラジオから「きょうカクセイざいをかったかた、あれはスイミンざいでした」とアナウンス(これがオチ)
徹夜するために頭を爽快にしようと覚せい剤を買った先生が、睡眠薬を処方されて眠り込んでしまうてんまつでした。昔の人たちはこれで腹を抱えて笑っていたのかな?
戦後しばらくの間、覚せい剤は普通に買えました。その中毒性が問題になって、厳しく取り締まる法律ができたのはマンガ掲載の1年前です。
この描写に激怒した人ががいました。日本薬剤師協会理事の鈴木誠太郎さんが、この月16日の朝日の声欄に抗議文を投書します。以下に引用します。
サザエさんの漫画は楽しい。が、12月8日は残念ながらくすり屋でカクセイ剤をごく簡易に買えるような印象を与えている。
(中略)あの図を見て中毒者にはノスタルジア(郷愁)を、一般人には簡易入手の錯覚を与え、まことに罪なこととはいえまいか。世論の力であの法律ができているのに、それを否定するようなものが漫画として掲げられることは、かりに実害がないまでも、許し難いものと断定せざるをえない。われわれとしては、この薬物の濫用をなくすために協力しているものとして筆者の反省を求めたい。(中略)筆者の悪意は感じないが、取材に注意して欲しかった。(引用おしまい)
現在の倫理観に照らせば、鈴木さんの言い分は至極もっともです。その後、大きな騒動になっていないようなので、作者の長谷川町子も納得したのだと思われます。しかし、国民的マンガに登場するほど、当時は覚せい剤が身近な存在だったのですね。戦争ができる国に返るのも怖いけど、危ないクスリが蔓延する社会に後戻りするのも絶対に嫌だよね。