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2014/05/19

「美味しんぼ」救済なき休載

福島県内の健康問題を取り上げたマンガ「美味しんぼ」の休載が決まりました。安倍首相が「風評被害には、国をあげて全力で対応する必要がある」と言った時、おじさんはとても驚きました。総理大臣は国民の暮らしをより良くするために年中考える、大変な仕事です。マンガを決してバカにするわけではありませんが、マンガの表現に日本で一番偉い人がいちいちかかわずらっているヒマがあるのか、とちょっとあきれました。
日本には、間違っているとされることでも、言うだけなら構わないよっていう権利があります。ヨーロッパで大勢の人たちを殺したヒトラーという人が書いた本は今のドイツでは出版できませんけど、日本では読むことができます。言いたいことが言えるはずの社会で、偉い人から「対応する!」って言われると、息がつまって国中がしゃっくりを起こしたみたいになります。しゃっくり社会だね。
おじさんがこわいなあと感じるのは、言いたいことを言うのが存在理由のテレビや新聞、雑誌のほとんどが今回の安倍さんの発言にダメって声を出さないことです。しゃっくり社会になっちゃうと、この人たちがいっぱい困ることになるのにね。そこで今日は言いたいことが言えなかったころの新聞を調べてみました。
1931年9月、中国にあった日本資本の南満州鉄道を日本の軍隊が爆破する事件がありました。陸軍がなぜそんなことをしたのか、興味がある人は調べてみてね。ここから日本と中国の戦争が激しくなります。「満州事変」と呼ばれています。世界のもめ事を調停する国際連盟という所も、日本が悪いんじゃないのと疑っていました。そこで、全国の新聞社の社長さんたちが運営している日本新聞協会という組織が11月、満州事変に対する声明を発表しました。ちょっと長くて難しいけれど要旨を引用します。最近では使わない方がいい表現もありますが、そのままにしてあります。

(前略)南満州鉄道は世界の重なる大幹線にて万国の人、いづれもこれを利用している。然るに支那人は故なくこれを破壊し去らんとする。
この一事に徴しても、支那の非人道的行動は、国際正義の容認し難き所だ。然るに如上の事相を諒とせず徒らに支那人の空言を信じ我に向て撤兵を強要するが如き片手落の処置を、世界の平和のために公をとるべき国際連盟が敢えてするに至りしは、これ国際連盟自ら国際正義を破壊する(中略)。これは単に日本の自衛権の行使に関するものにして、その自衛権の行使と否とは日本帝国の死活問題である。吾人は平和を希願とするも平和の基礎は国際正義の上におくべきを確信する。

あれれ?中国が爆破事件を起こしたことになってますね。昔は好きなことが言えなかったから自分たちで調べません。一部の人たちに都合のいいことだけは書いても許されます。おやおや、外国の領土での自衛権を説いていますね。戦闘行為が行われていて、国際平和を守る世界的な組織が日本が悪いと思っているのに、「私たちは平和を願います。国際正義はこっちのお国にあります」という言葉が急にくっついてきました。
こないだ書いた「集団的自衛権」を安倍さんが主張した時に、「積極的平和主義」というよくわからない単語がセットになっていました。自衛権くんと平和主義ちゃんは、どうしていつも仲良しなのか、そのうちに考えてみようと思います。