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2019/08/08

NHKとナチスの手口

ハイル、ジャパン!

愛知県の芸術祭企画展「表現の不自由展・その後」が、理不尽な放火の脅迫によって中止に追い込まれた事件を受け、まっさきに頭に浮かんだのは1933年にドイツで行われた焚書でした。
ナチス政権の価値判断によって反ドイツ的であるとされた書物が書店や図書館から集められ、公衆の集まる広場で焼かれました。官房長官や大都市の市長ら公権力が反日的だと弾劾した芸術作品が、文化そのものを焼失させるテロの脅しで公開にとどめを刺された弾圧には、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)の子分どもによるベルリンでの所業に等しい気持ちの悪さを覚えます。
それじゃ次は何が起きるんだ、ってことですけど、ドイツに照らし合わせると、ヨゼフ・ゲッベルス(Joseph Goebbels)啓蒙宣伝大臣が行った帝国(国家)放送協会(RRG)の国営化とラジオ受信機の普及国策がもたらした宣伝・洗脳教育の極東版じゃないか。つまりメディアの弾圧・支配です。菅義偉官房長官が民業圧迫まがいの誘導でスマホの料金を下げにかかったことは記憶に新しいですね。戦前ドイツのラジオは現代日本のスマホ。事実上、報道部門の国営化に成功しているNHKのネット課金を強引に閣議決定したことからも、国威発揚イベントである東京五輪をきっかけに本格的に推し進めてくると推測します。
1936年のベルリン五輪を舞台にレニ・リーフェンシュタール監督がゲルマン民族の優秀性を打ち出した映画を作ったように、日本スゴイのプロパガンダムービーがスマホ配信されるかもしれません。「三丁目の夕日」みたいなノスタルジーの皮をかぶっているかもよ。くわばらくわばら。
戦後のニュルンベルク裁判で、ヒトラーの側近だったアルベルト・シュペーア(Albert Speer)は以下のように語っています。
「ラジオ・拡声機等の機材の力で、8千万人の国民は自らの思考能力を奪われた。(ヒトラー)1人の意向へ国民が服従させられるようになった」(米イェール大学の資料を参照、https://avalon.law.yale.edu/imt/08-31-46.asp)
NHKのテレビのみならずネット放送の視聴には、今後とも注意が必要だと思います。

帝国の犬HK

うがち過ぎ? 妄想? いやいや、RRGがナチスの所有物だった同時期、NHKにもまた古手メディアの新聞同様、国家の宣伝機関に成り下がった歴史があります。
黒歴史は繰り返す。繰り返さないためには、より多くの目で監視、注意喚起を続けねばなりません。今日は、戦時中の放送協会が軍国主義の犬だった事実を見ていくことで、今この瞬間もイヌ化が進む放送局と日本の放送文化、何より民主主義のさらなる劣化を防ぐ助けになれば、と願うものです。
1941年、放送協会は大東亜共栄圏構想、五族協和の理念、その他もろもろの大日本帝国の聖戦の正当性を世界に訴えるため、大胆な組織改編を行います。国際部を局に昇格させ、宣伝放送を打ちまくる体制を整えました。同年6月1日付の読売新聞「電波宣伝戦へ一役 放送協会が国際部を局に」より引用します。
澎湃(ほうはい)たるラジオ新体制の呼声に応えて“日本放送報国会”を結成、戦時下ラジオ事業の画期的刷新に乗出した(ママ)放送協会では小森会長以下首脳部で火華(ひばな)する世界宣伝戦に対応する強力機構改革を協議してゐたが、その第一着手として国際部の局昇格が近く実現をみる。
国際部の昇格は従来も海外放送の重要性に鑑み懸案になってゐたもので、デマ爆撃の尖兵として諸外国の電波が運ぶ執拗な“敵性”放逐に乗出す(ママ)とゝもに正しき日本の姿を電波に託して海外へ送らうといふわけで情報局との打合せ(ママ)をまって本格化を急ぐことゝなった。(引用おしまい)
皇国の興廃このプロパガンダにあり。逓信省エリートから会長職に就いた小森七郎以下、全局を挙げての日本スゴイ放送を全世界にとどろかすため、各員一層奮励努力せよ。
放送協会は、ありとあらゆるツテを頼り、外国語が話せる日本人、日系人、外国人捕虜らを総動員して、宣伝戦の最前線で奮戦しました。
1942年10月31日付の朝日新聞への佐藤泰一郎・国際局第2部長の寄稿「思想戦の武器 わが対外電波戦について(1)」から引用します。句読点の脱落があり読みづらい箇所に引用者の判断で句読点を挿入しています。国名についても、現代人にわかりやすくするため、補足説明を加えています。
(前略)現在我が海外放送は、欧州向、中南米、北米東部向、北米西部向、独逸伊太利(ドイツ・イタリア)向、豪州支那(オーストラリア・中国)向、比島東印度向(フィリピン・現在のインドネシア)、泰・仏印・ビルマ(タイ・現在のベトナムやカンボジアなど周辺・ミャンマー)向、印度西南アジア(インドとインド以西地域)向となっているが、これ等の方向に使用されてゐる言葉は、日本語、ドイツ語、イタリー語、英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、支那標準語(北京語)、広東語、福建語、タイ語、ビルマ語、マレー語、ヒンヅー語(ヒンドゥー語)、印度土語(方言)、タガログ語、アラビヤ語、トルコ語、イラン語(ペルシャ語)等の多数により世界主要国語を網羅したといっても過言ではない。
なほ、これ等の言葉によるニュース、通信講演、演芸、音楽等の番組が同時刻に、異った(ママ)方向に送出される関係上、番組の延時間は毎日25時間を超え、短波送信機の運転延時間は実に52時間。人も機械も前線将兵と同様に不眠不休の活躍を続けてゐる。
現在この海外放送のマイクロフォンの前には、早朝から深夜まで多数の外国人が入れ代り立ち代り(ママ)帝国の崇高なる大東亜共栄の理念を故国に向けて叫び続けてゐるのであるが、彼等の眉宇には大東亜に平和が到来するまでは決して電波による説伏を止めないといふ気概を読みとることが出来るのである。
我が海外放送は、従来在外同胞の慰安と日本文化紹介に重点をおいて開始されたのであるが、支那事変、大東亜戦争の勃発とともに、かやうな消極的使命を棄てて、戦争目的遂行のために作戦、外交の両面と緊密な関係を保持しつつ活発な思想戦を展開してゐるのである。(引用おしまい)

スマホが推進する皇民化

国内には「勝った、勝った、また勝った」の大本営発表を垂れ流し、海外へはありとあらゆる言語を駆使して、大日本の素晴らしい文化文明を伝えんと日夜、口角泡を飛ばして国民の財産である電波を濫用していた我らがNHK。1943年8月7日付の組織改編では、国際局を2部から米州・欧州・亜州、編成、業務の5部組織に拡大しています。帝国との共倒れの道を暴走していったわけです。
敗戦74年の夏を迎えたNHK。「ニュースウオッチ9」は、徴用工問題ひとつとっても「韓国市民には冷静な人もいるんだから、文在寅大統領は冷静になって事態に向き合え」と韓国政府に非を押しつける論調で、日本国民に訴えかけます(7月18日放送)。
冷静になって事態に向き合う必要があるのはスタジオだ。本当にいいのか、そんなに一方的で? プロデューサーも、ディレクターも、キャスターも、みんな歴史に名が残るんだぜ。韓国人スタッフとともに働いているソウル支局も、それでいいんですか?
問題は国営放送NHKにとどまりません。民放でも、内閣府がつくってこどもに体験させる横田めぐみさんの拉致再現バーチャルリアリティなる、おぞましいニュースを、何の批判精神もなく垂れ流していました。VRを体験したこどもたちは北朝鮮を恐れ、憎むことでしょう。「鬼畜米英に捕まれば男は惨殺、女はレイプ」と吹き込んで、沖縄の民衆を自決に追い込んだ皇民化教育が重なります。
8千万ドイツ国民の思考力を奪ったラジオは、家庭や学校、職場でユダヤ人や外国政府への憎悪をあおるものでした。明日の日本では、通勤・通学の駅のホームであっても、大容量回線のスマホがBluetoothイヤホンを通してひっきりなしに、朝鮮半島の人たちや中国人を恐れ、嫌悪するような皇民化教育をほどこすことになるやもしれません。
マスコミって、こんなんで本当にいいのか? こんなので?