あと2月足らず、ウィスキー造る気ないでしょ。もう「麦の唄」なんか流すのやめて、並木路子の「リンゴの歌」を主題歌にしてしまえ。
従業員の古くさいラブコメもどきも、ただただイタいです。それもポッと出の若者じゃない。八嶋智人さんに小池栄子さんですよ。1970年代の「りぼんコミックス」のパロディかいな。出来の悪い陸奥A子作品か?
いやいや、陸奥A子さんに失礼ですね。昭和にタイムスリップしてきた明治青年と戦後少女のラブコメなんか、ブッとんでいて好きでした。乞再評価。
閑話休題。マッサンはウィスキー造る以外の社会生活ダメ男として描かれているそうですけど、ここまでマトモなウィスキーも造ってないから、実はコンプリート能無しなんですね。
リンゴジュースの名前が悪いの、もっと宣伝しろだの、百貨店なんかに売り込んで販路を開拓しろだのと、とことん商才に欠ける人間として窮地に立っているわけですが、そのモデルとされるニッカウ㐄スキー創業者・竹鶴政孝も果たして同じだったのでしょうか?
林檎汁が新発売された際の1935年4月15日付の東京朝日新聞夕刊の広告「アップルジュース ニッカ林檎汁」からその文言を引用します。
新らしい(ママ)飲みもの新製品! ニッカこそ純粋の林檎汁です。絶対に加熱してない 薄めていない 又何等人工の糖味を加へてない 林檎の天然香味と主成分を最も完全に保有する 純正の栄養飲料です 見るから清澄 飲んで快適 浄血整腸 従て(ママ)血色をよくして健康美を増します 酣春(かんしゅん) 清新の一杯ゼヒ御試飲を乞ふ!生のまゝでリンゴ汁の醍醐味を!冷やしては風味絶佳爽快!各百貨店、食料品店、和洋酒店、薬店にあり(引用おしまい)
大きめの広告に、言いたいことを全て詰め込んでいます。竹鶴はこの製品のウリを「非加熱、非加水、非加糖」だと考えていたらしく、新聞に連発した広告ではこの文言を多用しています。
創作と史実とを比べてみましょう。
創作:商品名が「ジュース」じゃ売れないから「汁」にしろ→史実:最初から「汁」だった。
創作:商品名が「ジュース」じゃ売れないから「汁」にしろ→史実:最初から「汁」だった。
創作:もっと宣伝しろ→史実:新聞広告を打ちまくった。
創作:百貨店で売れ→ハナっから売ってた。
1935年4月以降、乱打と呼んでもいいような広告出稿量なのですが、それら広告を見ていくと、極々初期から東京は日本橋室町の鈴木洋酒店なる会社が卸問屋だったことがわかりました。当時東日本では大問屋で、後に西の松下商店と合併、現在の伊藤忠食品の前身となります。
そんな大企業に卸を頼んでいたのですから、ドラマに出てくる「販路を開拓しろ」って話はおかしいです。昨日の作中、余市まで文句言いに来たオッサンは鈴木洋酒店の人間?
劇中の創作はある程度自由ですが、主人公をピンチに陥れるために、史実をどこまでもねじ曲げていいというものではない。
歴史上の人物への尊敬がない作品が「マッサン」です。同じことが「幕末男子の育て方」なるキャッチフレーズで、江戸時代のみならず現代においても社会常識がない人物を濫造する今の大河ドラマにも言えます。
創作する自由は尊重されるべきですが、歴史観なき安易な映像作品においては撲滅さるべき点、申し述べておきます。