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2015/01/06

燃えない「花燃ゆ」

新作大河ドラマ「花燃ゆ」、始まりました。
井上真央さんの本格時代劇か。江戸時代独特のセリフ回しとか、大丈夫かな。主役に選ばれたんだから大丈夫だよね。期待と不安が交錯する中、おにぎり作るシーンを引っ張ります。溜めに溜めて、記念すべきヒロイン第一声が……。
「ごはんですよー!」
三木のり平か? 桃屋のCMなのか? 思い切り現代劇、というより、これは「あんみつ姫」。そっち方面の需要に合わせて1年間突っ走られたら、おじさん付いていけません。
吉田松陰にその思想を披瀝してがんばってもらうしかないのでしょうか。以下、ざっと松陰の主張を並べてみましょう。
意見の合わない幕閣には死んでもらいます(間部詮勝暗殺計画)、松下村塾生に攘夷を仕込みます(英国公使館焼き打ち)、沖縄を日本の属国にします(琉球処分)、台湾を統治します(日清戦争)、樺太も朝鮮もヤマトの所有物です(日露戦争)、満州ももらいます(満州国建国、日中戦争)、フィリピンだって日本領とします(太平洋戦争)……。
うわ、ダメだこりゃ。長州閥による戦前の血塗られた日本史の教科書だわ。妹さんに踏ん張ってもらわないと、大河が戦前回帰の吉田松陰ショーになっちまいます。
平和主義者であろう視聴者のだれもが知らない松陰の妹・文とはどういう人だったのでしょう?
長州出身の連中は松陰を顕彰して、現在の東京・世田谷に松陰神社をこしらえます。松陰刑死から50年後の19084月にたいそうな記念祭が行われた際、今作のモデル「文」が参列したようです。
同月23日付の東京朝日新聞「吉田松陰の弟妹」から引用します。改行や句読点、仮名遣いは、おじさんが現代風に改めています。
一昨21日、松陰神社祭典行われしことは、昨紙記載のごとくにて、今年11月27日あたかも松陰刑死の50回忌なるをもって同日、さらに盛大なる祭典挙行の議、長州出身の巨頭間に起こりおれりと聞けり。
松陰遺族の現状を聞くに、松陰の兄杉民治、もう今年82歳にて山口県萩に存命し、藩士児玉初三に嫁せし妹の芳子も今年77歳にて存命し、松陰の後は、この芳子も男(注・息子)庫三氏、これを継ぎ40歳。現に横須賀中学校長たり。
次妹の某は久阪義助(ママ、注・久坂玄瑞)に許嫁せしが、義助殉進後、男爵楫取素彦(注・小田村伊之助)の妻となり、男爵の群馬県知事奉職中に病没し、その妹三輪子(ママ)、同男爵の後妻となり、今年60余歳にて存命し、一昨日の祭典にも参拝して、山縣(有朋)さんや桂(太郎)さんは大層ご出世なされたので、参拝もして下さらぬと、かこちいたり(注・愚痴っていた)。(引用おしまい)
えーと、「三輪子」が今回のドラマの主人公なんですかね。しかし記事では、久坂玄瑞と結婚したのは松陰の次妹になってて、ドラマ設定では彼の初婚相手となる「三輪子」ではない。楫取の二番目の妻だから、やっぱり「三輪子」が真央ちゃんになるのか?  大河ドラマの主役が「某」だとあんまりですね。
どうでもいいや。存命中においても、どうでもいい扱いと取材を受ける吉田松陰の家族。ホントに明治維新の大立者だったの、ショーイン?
記事の最後の下りに、ヒントがありそうです。50回忌にもかかわらず、山縣も桂も来なかった。長州閥は、早過ぎたアジア侵略主義者・吉田松陰をブランド化して、自らの権力掌握の道具に仕立てたのではないでしょうか。
50回忌の時点で、すでに吉田松陰は用済み。そこに思いをはせることができず、新聞記者相手に文句を垂れる女性が、もし大河の主役だとすると、何か痛々しいですね。
まあ、大河という作品に、初回から愛想を尽かしたわけではないので、もう少し視聴してみましょうか。「文」なるモデルで、どこまで引っ張れるのか、不安ではありますけど。