コピー禁止

2014/12/19

映画ぐらい自由に見せろ

映画見せろ、(゚Д゚)ゴルァ!
北朝鮮の指導者をネタにしたハリウッド製コメディ作品「The Interview」の米国内上映が、テロ予告のせいで中止されました。恐怖によって表現の自由を侵害する行為は、決して許されるものではありません。
同じく北朝鮮を悪役にした「007 ダイ・アナザー・デイ」というボンドシリーズ屈指の駄作が公開された時も、かの国とひと悶着あった記憶がありますが、そのまんま上映しましたね。作品の格でロードショーか中止かを決めるんでしょうか?
ラングーンや大韓航空機といった爆破テロを思えば、中止に至るソニーの判断には同情を禁じ得ません。イギリス秘密情報部はジェームズ・ボンドを送って、脅迫野郎を消してくれ。「ダイ・アナザー・デイ」の罪を帳消しにしてやるよ。
おじさんがこんなに怒っているのは、少年時代に楽しみにしていた映画を、脅迫によって上映中止に追い込まれて見逃した思い出があるからです。
1977年、「ブラック・サンデー」というアクション映画が公開されるはずでした。監督は娯楽の職人ジョン・フランケンハイマー。役者はアルフレッド・ヒッチコックの「ファミリー・プロット」などで才覚を現してきたブルース・ダーンに加えて、ロバート・ショウです。
ああ、ロバート・ショウ! 「ロシアより愛をこめて」のグラント、「バルジ大作戦」のヘスラー大佐、「スティング」ドネガン、「ジョーズ」クイント、「サブウェイ・パニック」ミスター・ブルー……。役名すら記憶している大好きな俳優の映画が、心ないブラックメールによって、上映中止のやむなきに至ったのでした。
1977年7月23日付の朝日新聞夕刊「『黒い九月』モデル?の映画 テロ予告で上映中止」から引用します。
アラブ過激派の大量テロを扱ったアクション映画「ブラック・サンデー」が、封切りを1週間あとにひかえて22日、上映中止となった。テロを予告する脅迫状が届いたためで、配給会社のCICと興行ににあたることになっていた東宝は「観客の安全を考えて」といっている。前売り券発売中の映画が、こうした理由で中止になったのは初めてだ。東宝系の都内3映画館に脅迫状が届いたのは19日。上映中の「ジェット・ローラー・コースター」を名ざしして「関係諸機関の自粛勧告にもかかわらず、黙認した。営利追求のために上映を敢行したのは許せない。即刻上映を中止せよ。テロ行為に発展しかねない一里塚であることを警告する」という内容。差出人はそれぞれ「京都大学関西C線」「大谷大学京都C線」「愛知工大名古屋C線」となっていた。しかし、これまでアラブ関係機関から自粛要請があったのは「ジェット・ローラー・コースター」ではなく、30日から都内3映画館で上映予定の「ブラック・サンデー」だった。このため、東宝とCICは「脅迫状のねらいは『ブラック・サンデー』だろう」と判断、上映中止を決めた。「ブラック・サンデー」はアラブ過激派がベトナム帰りのアメリカ元軍人と組んで、フットボールの試合場をテロの目標にする筋立てで、ミュンヘン五輪テロ事件の「ブラック・セプテンバー(黒い九月)」をモデルにしたと見られることから、アラブ諸国の大使館が神経をとがらせていた。(中略)アラブ諸国の勘定を配慮して上映が見送られた作品には、エンテベ空港事件を扱った「サンダーボルトGO!」など2本があるが、脅迫状がもとになったのは前例がないという。(引用おしまい)
「ブラック・サンデー」を後年、ビデオで見ました。最近のバカみたいな善悪完全分離のメリケン映画と違い、アラブ側にも配慮した佳作ですよ。C線だかデブ専だか知らないが、作品まで間違えて、よくもくだらない脅迫をしてくれたもんです。「ジェット・ローラー・コースター」こそいい迷惑です。これも面白かったなあ。
我が国では、映画に対するテロまがいの行為が当たり前になりつつあります。「靖国 YASUKUNI」や和歌山のイルカ漁を扱った「ザ・コーヴ」などに顕著です。意見の相違は当然。思想思考の多様性の許容が民主主義の根幹ではないでしょうか。
今回の「The Interview」上映中止が、民主主義を売り物にするアメリカすら、息苦しい世の中に突入するきっかけにならないことを願います。