アベノミクスとは、円を大量発行してその価値を下げ、国債と国民の資産を担保にした円安誘導策以上でも以下でもありません。海外投資家を使った株バブル操作です。輸出も消費も伸びず、少し前は、貿易と財政の双子の赤字に悩むアメリカを笑っていたのに、それを日本が抱える日が来ようとは。
エネルギーをはじめとする輸入材高によるインフレも深刻化しています。輸入資材の高騰で苦しむのはいつも庶民です。1931年、蔵相に就任した高橋是清が、国の貨幣価値を金によせる金本位制から離脱、管理通貨制への移行を決めました。「金輸出再禁止」と呼ばれます。
欧米の価値基準から離れたのですから円は暴落。当初は輸出が伸びましたが、輸入材は高騰。庶民の暮らしはひっ迫します。政府が意図的に円の値打ちを下落させたことが招く生活苦。今と同じ状況ですね。
1937年5月10日付の東京朝日新聞「喘ぐ国民の姿 生活の不安深刻」から引用します。仮名遣いや句読点などは読みやすいように、おじさんが改めています。
最近の物価高の影響を受けて生計指数(本社調査)は著しく上昇し、本年2月には189.6を示し、金輸再禁前の昭和6年11月の158.6に比較すれば実に1割9分5厘の増加である。もちろん生計費の騰貴に比例して賃金あるいは俸給引き上げが行われれば問題はないが、金再禁止以来現在に至るまで、一般に見るべき賃金、俸給の値上げが実施されなかったのであるから、生計費の上昇はそのまま逆に労働者、俸給生活者の生活の低下を物語るものであり、同時にまた国民生活不安の尺度を示すものである。
(中略)定額賃金は金再禁以来、一向に引き上げが行われないが、事業繁忙による夜業、残業等の手当の肚ため実収賃金はいくぶんか増加し、労働者の手取りは多くなった。しかし、この手取り収入の増加も到底生計費の上昇には及ばず、その結果、労働者の購買力を示す実質賃金指数(実収賃金指数を生計費指数で除した《注・割った》指数)は年々低下を続けて来たが、ことに最近の生計指数の躍騰のため、本年に入って実質賃金は一段と低下し、2月の指数は昭和7平均年指数に比べて1割1分方減少するに至った。
この生活窮乏は勢い労働者をかえって時間外労働その他の労働強化に走らしむることになるが、労働力の異常なる消耗は、目下問題となっているわが肚丁体位の劣悪化の原因の一をなすもので、准戦体制の進行過程において、人的資源にかかる損傷を与うることは重大問題である。しかも生産力拡充の進行は、軍需生産財の増加を伴いこそすれ、消費財生産は後回しにされるのは必至で、現在進行しつつある貿易管理は、消費財の輸入を阻止する傾向にあり、その他消費税の引き上げ、関税の改正は、限りある財政下における必然的な社会政策の貧困とともに、労働者、俸給生活者の生活が今後いかなる方向をたどるか想い半ばに過ぎるものがある。(引用おしまい)
消費者物価高、消費税引き上げ、労働力の消耗。そっくりです。この記事の2か月後には盧溝橋事件が起こって、日本は泥沼の日中戦争にはまり込む。現在、集団的自衛権などという代物が控えています。また、ああなるのかしら。
日曜日は衆議院議員選挙。あと数日、歴史の闇と近い将来の我が国を比較検討、よくよく考えてから投票所に向かいます。