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2014/11/24

吉田松陰に気をつけろ!

来年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」は、何とかいう名の吉田松陰の妹が主役モデルなんですと。嫌な予感がします。いくつかの危惧があります。
危惧①:史料もロクにない無名の女性の一生で1年間引っ張るために、作家の主人公創作が行き過ぎないか。大河を、真っ暗で腐臭漂うチンケな暗きょに変えた、これ以上ない駄作「江」の再来。
危惧②:ヒロインの魅力だけではドラマが持たなくなり、松下村塾オールスターズの過剰なアゲ、佐幕派の理不尽なサゲで話が進まなくなるのでは。
危惧③:吉田松陰の反動思想の流布。天皇中心主義、周辺国布武などを垂れ流さぬか。
特に心配なのが③です。まさかNHKがそんなことをするはずがない、と信頼する時代は終わりました。
先日、GDP(国内総生産)マイナスの発表があった日の「ニュースウォッチ9」が現状下に儲かっている企業を冒頭に紹介する、政府の御用聞きっぷりを発揮した、公共放送の現況から量るに、安倍晋三首相ご心服の松陰が、テレビジョンで何を言い出すか、知れたものではありません。
番組公式サイトには、宮部鼎蔵、久坂玄瑞、高杉晋作、伊藤博文ら、戦後民主主義下では取り扱い注意の登場人物の名前が並んでいます。幕府側のキャストはまだ井伊直弼しかいないのが、またまた不安。高橋英樹さんと北大路欣也さんを使い回すの、もう止めませんか?
戦前、吉田松陰の思想は戦争国家の道具として都合よく利用されてきました。
今日は、太平洋戦争最中の1942年、アヘン戦争終結100周年に、思想家の大川周明(民間人として唯一、東京裁判でA級戦犯起訴)の談話を取り上げます。同年8月21日の朝日新聞「阿片戦争・歴史を画して100年目 英が吸血の始まり」から引用します。
(前略)阿片戦争は支那に致命的な影響を与えたと同時に日本にも看過することのできぬ大きな影響を与えています。
阿片戦争前から日本の先覚者たちは支那が弱いということをちゃんと知っていました。(中略)支那の惨敗と英国の侵略ぶりをみて明治維新前後の先覚者たち――佐藤深淵、橋本左内、吉田松陰などは口を揃えて“支那怖るるに足らず、英国怖るべし”と英国の東亜侵略が必ずやさらに伸びることを警告しています。佐藤深淵は“混同秘策”において英国の勢力が現在の南方諸地域に及ぶことを予想し日本としてはどうしてもこの方面で英勢力を破砕しなければならぬと説き、吉田松陰も“幽室文稿”の中で久坂玄瑞に与えた手紙でも大東亜地域の経綸(注・秩序をととのえ治める)を述べていますが、この時からこれ等先覚者は東亜新秩序の必要を痛感していたのです。
東亜新秩序のイデオロギーは、決して今日や昨日出来たものではなく、実に維新以前にはらんでいたもので、それが明治維新の真の精神を把握していた人々によって受けつがれ、今日に至ったものです。
(中略)明治維新はつまり尊皇攘夷であるが、尊皇はつまり皇室を中心とする日本の国民的統一であり、攘夷は西洋勢力を日本のみならず東洋から駆逐することである。この点から考えてみると、大東亜共栄圏の完成はつまり明治維新の完成ともいえるのです。かく考えてくると、阿片戦争は東亜、いな世界の歴史に重大な転機を与えたものと言えると思います。(引用おしまい)
国策の正当化と英国サゲ目的の駄文です。アヘン戦争は確かに大英帝国の汚点ですが、100年後に国威発揚に流用されてもねえ。かつては侵略戦争に使われた吉田松陰。今度はNHK発の「戦略的互恵関係」、「特定秘密保護法」、「集団的自衛権」等に利用されぬよう願います。