NHK放送センター試験科目・倫理第1問。
「マッサン」、「ごちそうさん」、「天花」のテレビ小説3作が共有する問題は何なのか述べよ。
何の成果も挙げないヒロインが意味不明に周囲から持ち上げられて、物語がグチャグチャになる?
その通りですが、倫理の試験なので不正解。「カネにだらしなく、周りから物だ銭だとタカリまくる」が正解でした。
親にタカる「天花」、市場やパトロンにタカる「ごちそうさん」。そして、ご近所や世話役・なじみの居酒屋に家主と、とどまるところを知らぬタカリ夫婦に落ちぶれてしまったのが、ただいま絶賛放送中のヤツですね。経済・金銭感覚に欠けた作家が書くと駄作になる悪例です。
走行中の自転車を後ろから押しのけるような粗暴犯でもあります。あのような行為は大変危険です。よい子は絶対にマネしてはいけませんよ。行動すべてが理解不能。実家の従業員に生命保険でもかけて、自分を受取人にしたのか?
クズキャラのモデルにされた竹鶴政孝の家は、酒どころ竹原でも3本の指に入る竹鶴酒造の分家の分家。酒造と製塩に携わっていましたが、ドラマみたいに大々的に造っていたわけではないようです。
政孝の父は、事情があって本家の経営に関係していますが、そこは割愛します。今日は、その政孝パパに鍛えられて本家の当主になった竹鶴友三のお話です。
酒に防腐剤を入れるのを嫌い、断熱材としておがくずを加えた壁を蔵に採用する、ホンモノ政孝同様のホンモノ志向だったようですが、一方でソロバン弾く商人の知恵の方も確かでした。
日中戦争が泥沼化し、武器の原料を集めるための供出で、一般家庭から鍋釜、指輪、門扉まで金属類が消え始めます。トタン屋根も例外ではありませんでした。
竹鶴友三は、これを商機ととらえました。1940年10月24日付の東京朝日新聞「粋な竹葺屋根現る」から引用します。仮名遣いや句読点は、おじさんが現代風に改めています。
トタンに代わる竹葺屋根の出現…広島県賀茂郡竹原町、竹鶴友三氏はかねて竹葺屋根組成材について特許を出願中のところ、このほど認可された。この考案は、大部分竹材。耐水塗料を施せば、非常に堅固で生産費はトタンの10分の1、構造は竹材を桶形に材に割り、木桟上に密接、釘着にすればよく、トタン不足の折から、大きな福音となろう。(引用おしまい)
竹を切って釘を打つだけで特許取得。国威発揚になるなら特許が簡単に下りた時代だったとはいえ、友三はなかなかのビジネスマンでした。本腰を入れていたようで、新聞に広告も出しています。
1941年6月6日付の東京朝日新聞の広告「トタン不足解決 堅牢無比」から引用します。句読点はおじさんが読みやすくなるよう改めています。
トタン資料不足の解決と、更に其耐久力・又廉価に於て(おいて)最も優秀なる新案特許、竹鶴式竹葺屋根を全国的に普及するは、時局下の急務なるを確信し、各道・府・県別に1人を限り、分権します。(引用おしまい)
問い合わせ先が竹原町の竹鶴酒造なので、同一人物だと確認できました。友三は自社の酒を売るためにゆかいなキャッチコピーもたくさん書いていて、地方の蔵ながら、友三の竹鶴酒造は、こだわりニッカと、アイデアのサントリーの良いとこ取りをしたような企業ですね。一度、ここのお酒を飲んでみたいものです。
亀山酒造の製品は試したことがありませんが、オススメしません。仕込み中の樽の中にツバキを飛ばすがごとき勢いで「あかん、あかん!」と大声を挙げたり、土足の草履をくわえたまま長距離を走ったりする衛生観念に乏しい男が造る酒です。不味いに決まってます。