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2014/10/31

「マッサン」に季節感は不要か?

毎日、暑おまんな。扇風機回し倒す季節の株主会議、嫌でんな。つい、めちゃめちゃな因縁つけて社員のクビの一つも切りたなりますわ。
暑い中、ローストビーフに、ハギスやらいう羊の臓物に、フィッシュ・アンド・チップスでっか。ウイスキーよか、ビール飲みたいの。
あのフィッシュ、何です? あっちではタラやいうけど、大日本帝国のタラは冬の魚や。この時期、白身の大型魚て何やろなあ?
ところで、世間の皆さんは今夜、なんでけったいなカッコしたはんの? えっ、夏はとっくに終わってもて、ハロウィン? 連続テレビ小説の世界住んどったら季節感、あらへんねん。

みんながセーター着てコート羽織るシーズンに、朝ドラだけが真夏。暑中お見舞い申し上げます。物語の方もホットにしてぇな。
先日、駄作認定させていただいた「マッサン」ですが、季節感の放棄は、本作に始まったことではありません。「花子とアン」で、終戦記念日飛ばして9月に太平洋戦争が始まった時は、「新年明けてから『忠臣蔵』やるんか!」と驚きましたもんね。「マッサン」のミラー駄作「ごちそうさん」に至っては、もう何が何だか。何だったんだ?
今夜はハロウィンなので、昔の日本人の、このお祭りに対する「尊敬すべき」ズレた感覚を紹介します。1951年9月27日付の朝日新聞「海渡るハリコの面 収穫祭の夜の宴に」から引用します。
“ハロイン”といっても日本人にはピンと来ないが、欧米では10月31日の夜“みのりの神”ポモナに感謝してどんちゃん騒ぎをする“収穫祭”のこと。その夜の祝宴に使われるお面が、いま新宿区下落合4の今泉俊次さん方でさかんに作られている。お化けカボチャにピエロにキツネ、黒ネコと紙のハリコの面々、顔をそろえて晴れの日を待っている。とりあえず3千個が沖縄へ送られ、進駐軍将兵を喜ばす由。(引用おしまい)
記事中、ハロウィン紹介のざっくり感がステキです。この記事には、新宿区下落合の今泉さんが、ハロウィン向けの張り子のお面を作ってる写真が付いてるんですが、細目でのっぺりしたお化けカボチャは、いかにも日本顔だし、キツネに至っては、お稲荷さんのお祭りで使うおなじみの純和風。当時は「ハロイン」と言われても、何のこっちゃの時代です。今泉さんは数少ない情報から、がんばってハロウィンのお面を大量に作りました。
さて、海外情報がお手軽に入手できる現代の朝ドラはどうでしょうか? 冷蔵技術が未発達の大正時代に、タラで作るべきフィッシュ・アンド・チップスを日本で出す。茶の間は10月の終わりなのに扇風機を回す。懸命に模索した今泉さんほどの顧客への汗はどこにあるのでしょう?
でも、影でまじめに汗をかく人は、どこの職場にもいるものです。もちろん、NHKにも。1993年8月27日付の朝日新聞夕刊「鮮度・見栄えに苦労、ドラマの食卓」から引用します。
(前略)NHKで9月から始まる「はやぶさ新八御用帳」は主人公の上司がなかなかのグルメで、毎回登場する江戸の食べ物も見どころの一つ。消え物(注・劇中の飲食物)を担当するNHKニュースアートの山本泰治さんは、江戸時代の食事に関する資料が手放せない。
「一般的に時代劇で気を配るのは季節感。特に野菜です」と山本さんは話す。ナスやキュウリが夏なのは当然だが、長ネギもこの時代は冬もの。青首ダイコンも最近の品種だ。また、江戸時代の米はせいぜい7、8分づき。白いご飯はない。「といって、それではモソモソしてせりふをしゃべりにくい。茶飯にして色を出します」と山本さん。
今回のドラマの場合「たたき豆腐」など珍しいメニューも登場する。文献によれば、水気を切った木綿豆腐とみそをたたき合わせ、油で焼いたもの。山本さんが自宅で作ってみたところ、バラバラになってしまった。そこで、表面に粉をつけてみた。「見た目は昔に忠実に。味は映らないから、現代風に食べやすく。次はどんなのだろう、と楽しみにしている部分もあるので、この時代だったら、と考えながら形にしていく」と山本さんは話している。(引用おしまい)
山本さん、カッコいいですね。ダメ脚本が駄作の主因たる「マッサン」ですが、裏で汗をかく人たちの意見や努力を拾って、作品に生かすことができうれば、まだ挽回するチャンスはあると信じています。がんばってエリー、もといスタッフ。