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2014/10/02

宮沢りえと日韓関係

女優宮沢りえさんの母光子さんが亡くなりました。1990年代初め、人気絶頂という陳腐な言葉のみでは言い表せない、宮沢りえという名の社会現象、いや、明けても暮れても国民の話題はりえちゃん、りえちゃんという、まるでりえさん自身が日本社会そのものであるかのような時期がありました。当時、光子さんは10代の娘を支え、操縦する「りえママ」として、日本中のだれもが知るアイコンでありました。今日はそのころのお話です。
1991年、りえさんは篠山紀信さんのカメラによるヘアヌード写真集「Santa Fe」を発表しました。未成年の大スターのハダカに、男女問わず全国民が大騒ぎ。児童ポルノではないかとトンチンカンなことを言い出すバカや、ヌード写真の中にはポルノもあるが、りえちゃんのは違う、なぜなら芸術とは……と語り出すフェミニン脳女などが次々とメディアをにぎわせました。りえヌードの話題が、新橋やナンバのサラリーマン居酒屋を席巻したのは言うまでもありません。
ヌード騒動は海を越え、隣国にも波及します。韓国は当時、国を挙げて日本大衆文化の流入を阻止していました。そこにイルボン女優のハダカを輸入・発売してひともうけしようという出版社が出てきたから、さあ大変。
1992年1月22日の朝日新聞「りえ写真集 輸入ならぬ」から引用します。
【ソウル21日=時事】日本で百万部を超すミリオン・セラーとなった女優・宮沢りえさんのヌード写真集「Santa Fe」を輸入しようとした韓国の出版社に文化庁が「待った」をかけた。
東亜日報によると、出版社は既に四千部の注文まで出しているI社と、版権を取って韓国国内での出版を計画しているH社。
文化庁側は不許可の理由について、「写真集が入ってくれば、写真家など芸術家よりは好奇心おう盛な青少年が主に購入する可能性が大きい。その結果、青少年が日本のヌード文化に無分別に影響される結果を招く」と語っている。(引用おしまい)
 「日本のヌード文化」って何よ。風俗規制がナショナリズムと結びついた最低の成り行きです。写真集が売れれば韓国経済は回るし、日本の版元も潤う。ハダカ一貫の日韓友好ですよ。ポルノじゃないよ、りえちゃんですよ。
しかし、旧宗主国への「恨(ハン)」忘れがたき大韓民国の対応は、りえヌードが売れるにつれてエスカレートしていきます。
同年10月31日の朝日新聞「『サンタフェ』販売に規制論」を以下に引用します。
【ソウル30日=前川恵司】韓国の刊行物倫理委員会は29日、韓国で販売中の日本の女優宮沢りえのヌード写真集「Santa Fe」複製版に何らかの法規制をするよう、文化省に申し立てることを決めた。同省はこれを受け、販売禁止、出版社登録取り消しなどの処置を審議する。
同倫理委では、申し立て理由として、「この写真集は性の商品化をもたらし、日本の低級文化流入などで国民の情操にあしき影響を与える」としている。
同写真集は、日本で発行されたものの完全複製版で、今月7日ソウルのヘンリム出版社が発売した。この際、派手な新聞広告も掲載された。同社によると、初版3万部は完売、2万部を増刷した。(引用おしまい)
性が人間の重要な営みである以上、美少女の裸体に文化芸術を感じることがあっても不思議ではない。ボッティチェリ(Sandro Botticelli)の「ヴィーナスの誕生」はヒワイですか?
むろん異論もあるでしょう。異論が問題なのではない。異論を許さぬ空気や権力の介入こそが国をあやまる一歩なんです。
この事件から、韓国人ダメですね、アホですね、とのたまえる日本人はだれもいません。韓流ドラマの放映をやめろとテレビ局に押しかけたり、外国人の「特権」を廃止しろと往来でおめいたり、それを座視したりする国民なのですからね。
韓流スターに日流スター、それぞれの大衆文化を嫌悪する精神の根っこは同じです。