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2014/08/24

標準語はどこへ行く?

毎日クソ暑いな。朝のテレビはやっぱりNHKだな。うわっ、女性アナウンサーのだっさい服は何だ!
楠田枝里子や夏目三久ほど衣装に凝れとは言わんが、テレビの服じゃないな。公共放送には、地味でカッコ悪い服しか着せない、差別的ドレスコードでもあるのか。いや、有働由美子はやりたい放題だ。まだ色気があるうちは禁止なのかな。
さて、高校野球でも見るか。何じゃ、実況アナの声がひっくり返っておるではないか。劇的場面で視聴者を煽ろうにも、何叫んでるのか基本わからん。映像に頼り過ぎだ。
ローカルニュースに至っては、男女そろってアクセントまでしっちゃかめっちゃかではないか。夏休みで人手不足なの? 経費節減でアナウンサーもハケンにしたの? 暑さ倍増、熱中症になりそうだ。

作家の山口瞳は、東京は麻布区の生まれ。山手地域の話し言葉に顕著だった鼻濁音にこだわりました。鼻濁音には、単語の語頭に来るものを除くガギグゲゴは息が鼻に抜けるように発音することで、語感を柔らかくする特徴があります。山口は「長崎」を「なガさき」と発音すると、その言葉遣いを母親にしかられたというような話を読みました。
東京方言を標準語とする以上、テレビに出てくるアナウンサーやタレントは鼻濁音を使うのがギャラの内だと思うのですが、おじさん見るところ、民放局での鼻濁音使用者はトキ並みの絶滅危惧種、いわゆるテレビ俳優と呼ばれる人たちだとニホンカワウソ、いやブロントサウルスかな? NHKでもさまざまな環境汚染が進んでいるせいか、ヨウスコウカワイルカがごとく激減しているように感じられます。緊急の保護対策を求めます。
鼻濁音は学ぶことの難しい、死滅やむなき言葉なのでしょうか? 皆があこがれるお手本があれば、復活を遂げるのではないでしょうか。今日は、1981年1月10日の朝日新聞「消えつつある鼻濁音」からお手本を挙げます。以下に引用します。年号は昭和です。
(前略)33年11月、皇太子妃に決まった正田美智子さんが、宮内庁で初の記者会見に臨まれ、皇居の印象について、次のようにお答えになった。
「きょうガ、初めてで…」「とても木ガ多く…」
国文学者の池田弥三郎・慶大助教授(当時)は「ガ」の発音を聞きのがさなかった。新聞でこう指摘した。
「ガギグゲゴが鼻にかからない。イギリス、おみやゲとなっている。鼻濁音にされたら…」
数カ月たって、ふたたびテレビに出られた美智子さんは見事な鼻濁音を披露され、関係者をあっといわせた。むろん、池田さんも驚いた一人だった。(引用おしまい)
「美智子さん」に対する敬語の使い方が変で読みにくい記事ですが、文章でなく中身を読みとってね。正田美智子さんは、いまの皇后陛下。現在も、とても柔らかくて聴き取りやすい話し方をされますね。宮内庁ならびにテレビジョン事業に携わる臣民各位は、美智子さまの肉声を放映する機会を増やし、庶民下々の国語発音を啓蒙するとともに、鼻濁音の保護にあい努めるべし。七生報国語!
もっとも、鼻濁音は守られるべきだとするのが正論とは限りません。作家の井上ひさしは、人間の脳は楽をしたがるから「ら抜き言葉」を含め(自分は絶対に使わないが)、言葉は時代とともに変化してしかるべし、というようなことを述べています。一理あると思います。
鼻濁音絶滅その他に伴う標準語の破壊が、日本語の中央集権制打破につながり、共通語がカオス化することこそ、全国平等な国語になるという考え方もあるかもしれませんね。実際に「めっちゃ」、「男前」といった一部関西地方でのみ使用されていた方言が、関東地方で共通語になる時代です。
みんなも、言葉の将来がどうなるのか考えながら話してみたら、いろんなことが想像できて、国語への愛着がより増すと思いますよ。