テレビの持つ影響力はとても大きいです。外国でクーデターが起きると、放送局の奪い合いになるのはそのため。政府が国民に不都合な政治をするために利用しようとするのは、ものすごくキケンなんだ。
今日は第二次世界大戦のさなか、日本放送協会(NHK)の会長に就任した下村宏の着任談話を紹介します。下村は朝日新聞副社長、放送協会会長を歴任、大戦末期には情報局という言論統制機関のトップになった、宣伝報道のプロでした。1943年5月16日付の朝日新聞夕刊から引用します。句点が少なくて読みづらいけど、ガマンしてね。
(前略)戦時下に放送協会の事業はいよいよ重大性を加へてゐるので応召といふかとにかくさふいふ気持(ママ)でお受けすることにした。国家あげての総力戦に放送戦の重大さはいまさらいふまでもないが特に国内に現はれぬ(ママ)ために世間も余り知らぬ国外放送についての問題がある。これには人や物の問題も付随して来るが、人や物の不足してゐる今日はこれの完遂には最も考慮を要するのではなからうかと考へてゐる。いまも警戒警報発令中であるといふ工合にその方面の色々な問題もあるだらうし協会自体既に戦時体制は出来上がってゐることと思ふが更に一層緊張してやらねばならぬと決意してゐる。(引用おしまい)
放送局は国策の普及周知のための組織である旨を、会長が堂々と宣言して、世間も納得している。当時は御用マスコミしかありませんでした。新聞や放送局が言うことと違う考え方の人は、日本国民じゃないってさげすまれたんだ。BBCが言う「NHK最大の危機」は昔もあったのにね。
今の会長さんも「国際放送は国内放送とは違う。領土問題について、明確に日本の立場を主張するのは当然。政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない。国際放送についてはそういうニュアンス」と、下村宏とそっくりなことをおっしゃっています。くわばらくわばら。
公平を期するため、NHKの過去の素晴らしいお仕事もご紹介しておきます。1987年2月16日の朝日新聞から引用します。
モナコ公国のモンテカルロでこのほど開かれた第27回モンテカルロ国際テレビ祭で、NHK特集「調査報告 チェルノブイリ原発事故」がニュース部門のグランプリに当たるゴールデン・ニンフ賞と、自然保護に関する優れた作品に贈られるレーニエ3世賞を合わせて受賞したとNHKが15日、発表した。
同作品はチェルノブイリ事故の原因と事故による地球の汚染状況を、NHKスタッフが実地調査をもとにまとめたもの。昨年9月26日、29日の2夜にわたって放送された。NHKのゴールデン・ニンフ賞受賞は初めて。(引用おしまい)
電力会社とか財界のお金が入らない公共放送にこそできる番組です。スタッフを東北に送って、地球の汚染状況を伝えて下さい。期待しているんだよ。