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2014/06/14

治安維持法を知らない高村正彦さん

高村正彦・自民党副総裁が集団的自衛権の憲法解釈について以下のように語っています。
「今までの解釈と整合性があって一定の規範性も残し、必要最小限度のものについて認めるといういわゆる限定容認論ですらこれだけ抵抗があるということは、内閣が変わるたびにコロコロと解釈が変わるということは百に一つも無い荒唐無稽の話だ」(平成26年5月21日、詳しくはこちら
内閣が代わっても本当に法解釈は変わらないのでしょうか?今日は1958年11月3日の朝日新聞から、評論家の中野好夫の一文を引きます。岸信介内閣が大衆運動の取り締まり強化のため、警察官の権限を拡大する警察官職務執行法(警職法)改正案を国会に提出、人権を侵害する悪法だとして大騒ぎになりました。今の集団的自衛権の議論に似ています。
本文はその際、改正警職法がどのような結果を生むのか、1925年に成立した希代の悪法、治安維持法成立時の様子を検証したものです。これ一つで、国中の言論活動をたたきつぶせる、為政者にはまこと都合のいい法律でした。太字挿入はおじさんによります。


(前略)まず衆院における中正クラブ板東幸太郎議員の反対演説から-
「本案は意義明確でない。……今日都下の新聞、雑誌、学者、思想家は、みな本案に反対しているではないか。もし日本の将来に反動的な内閣ができて、この法律を乱用するときは実に恐るべきことである。かくのごとき誤解を生ぜしめ易い法律はよろしくない。……されば世論の帰すうを察し、公論に基き(ママ)、適当な機会に完全なる法律を作るのが賢明である」
次には同じく貴族院無所属の徳川義親侯の反対演説から-
「この法案は運営如何によっては重大な悪影響を及ぼすことはないか」
ところが、それらに対する小川(注・平吉)法相の答弁はどうであったか。これがまたいっそう興味深い。
「普選(注・普通選挙。25歳以上の男性に選挙権が与えられた)実施後、労働党、社会党ができるであろうが、本法は適用されないから、決して発育の圧迫となるようなことはない。また本法の解釈はすでに明か(ママ)である以上、現在の司法官を信頼してまちがいはない
この質問、答弁、なんと現在の警職法改正案をめぐる論争に、言葉まで大部分そのままにそっくりではないか。おそらく世界の近代法史の中にあってもっとも悪名高かるべき悪法、治安維持法のその後の運命については、いまさらここで述べる必要はあるまい。以来政府も変わり、法自体の改悪も加わるとともに、乱用はやり放題、「適用されない」はずの革新政党、労働組合は根こそぎ押しつぶされ、芸術家、宗教家まであらゆる不法の下に死の思いをなめさせられた。しかも「信頼してまちがいはない」はずの、司法官はともかく、警察官の方は全然無茶苦茶だった。(後略、引用おしまい)

法律の解釈なんて一度間口を広げてしまえば、やりたい放題になるという典型ですね。高村さんは国会議員なのに、治安維持法の成立過程も知らないのかな?みんなは大事な歴史はしっかり学ぼう。