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2014/06/12

ウナギと人間との付き合い方

ニホンウナギが、とうとう国際自然保護連合(IUCN)から絶滅危惧種に指定されました。みんなが大人になっても、おいしいウナギが食べられるように、しばらくは日本人もガマンしなきゃいけないのかな。国や自治体は、ウナギの商いで暮らしを立てている人たちの生活保障を考える時期に来たかもね。
有史以来、生き物が絶滅に追い込まれる時は、人類がかかわっていることが多いです。今日は、東京の水質悪化が進んで魚が食べられなくなってきた明治37年の東京をのぞいてみます。この年の9月7日東京朝日新聞「魚族の減少」から全文を引用します。本文は句読点が少なくって読みづらいので、おじさんが書き加えています。

東京市を取囲める(ママ)各川筋に近年魚族の減じたるは事実なり。こは沿岸各地に諸種の工場建設となり、常に悪水を排泄すると船舶の出入頻繁となりたる結果ならんが、其(その)減少せしものの中(うち)にても最も著しきものは海老にて、タナゴの如きも本年は殆ど(ほとんど)皆無の有様なり。又(また)鰡(ボラ)の子、俗にキラツコは僅か(わずか)に小川にて孵化するのみにて、川筋にては全く孵化するを得ざるが如く、隅田川上流の鰻(ウナギ)も場所により臭気ありて、食用に堪へざるものあり。鮒(フナ)も亦(また)石炭の臭気を含みて味無く、只(ただ)マルタのみは例(いずれ)に変わらず孵化し潑剌として網船に上れども、こは酢味噌より外(ほか)に珍羞(ちんしゅう、注・おいしく食べること)が得られぬものなれば、獲るものも左までは喜ばざる傾きあり。斯く(かく)魚族の減少するも、云ひ換えれば市の繁昌の結果なれば、めで度き(めでたき)兆(しるし)の一つなるべし。(引用おしまい)

東京に工場が増えて船の出入りも多くなったから、水質汚染が進んだせいで魚が減って、うまく捕れても臭くて食べられないと書いてあります。
当時の日本は「殖産興業」といって、産業をどんどん進めてお金をもうけて、欧米に追いつこうとしていました。そのためには、漁師さんや庶民が困ってもしょうがない、むしろめでたいという視点で記者は書いています。ウナギの迷惑は、明治時代から始まっていたんだね。
ウナギの種の保全なんてきれいごとじゃなくて、ウナギを食べ続けられるために、私たちは何ができるのでしょう?芝海老という種類のエビは、今の港区芝あたりの名産だったから付いた名前だという説があります。東京湾の芝海老って、おじさんは食べたことがないなあ。記事に出てくるタナゴも、まだ東京湾で捕れるのかな?興味がある人は調べてみてね。
昔のことがわかると、今回のIUCN指定は、生き物と人間の付き合い方を考えるヒントだと気が付きます。