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2015/01/20

「花燃ゆ」、久坂玄瑞の演技力(2)

どうやらイケメンドラマが売り物だと制作側が公言しているらしい大河「花燃ゆ」。受信料払ってそんなん目当てにするぐらいなら、「メンズ○○」みたいなファッション誌買うとけ。ドラマ人間模様と土曜ドラマが、お互い競い合うように話題作を連発していた、あのNHKはどこに行ってしまったのでしょう。
前項からの続きです。 「ごちそうさん」「花燃ゆ」と続けて、未熟なタレント東出昌大さんをNHKが起用し続けることで、彼が今後とも希望する俳優業の芽を摘み取り、早期に用済みにしかねない危惧を問題としています。回避策として、商品が大根のうちは映像メディアへの露出を控え、ごまかしの利かない舞台で徹底的に鍛えて演技派に作り直せという提案をしているところです。
北大路欣也さんの降板騒動で、代役に起用された無名の新人浜畑賢吉さんは、この役でテレビドラマの主役を得ます。それも、夏木陽介さん、竜雷太さんが人気を得た日本テレビのスターメーカー「青春シリーズ」に抜てき。案の定ブレイクしますが、局としては困ったことに、この人は根っからの舞台人。テレビジョンのスターになる気がないようなのです。196812月8日付の朝日新聞「すがお」から引用します。年号は昭和です。
“素質のある大根役者”師匠浅利慶太評である。本人は肩をすくめて「ほんとに顔さえあうとへただへただといっておこられるんです」いまは舞台を半年休んで日本テレビの青春シリーズ「進め!青春」に出演中。主人公ナポレオン先生にふんしてたいへんカッコイイところを見せている。
「テレビ出演はいいよ、人気が出るから」と、ふつうなら喜ぶものだが、本人は遠い郊外の撮影所にひとりとぼとぼ通うことに、仲間はずれされたような被害者意識を抱いているらしい。ひまがあると劇団や公演中の楽屋に顔を出してテレビ評を聞いてまわる。寄ってたかってくそみそにやっつけられて結構うれしがっているというから他愛ない。
「テレビってむずかしいですね。場面場面にわけて撮るでしょ。つないでみると演技のトーン(調子)が違っていたりするんです。みていてどきっとしますよ」
「自分ではあすこではこう、ここではああと、変化をつけたつもりでも、つなぐと一本調子になっていたり……」
「半年たって劇団に戻ったときがこわい。人よりおくれていたらいけないし、外で勉強しただけのものは舞台に持ち帰らなきゃ」
テレビ談義をぼそぼそとひとくさり。
ごらんの通りの二枚目なのに、浮いた話が少しもない。「はたがやきもきしてとりもったりするんだけど、あの男ちっとものってこない。なんだかとんちんかんでかみあわないんだなあ」悪友?どもがサジを投げたおかげで、異性の同僚からは変な信用がついた。
「浜畑君といっしょなら安心、ボデー・ガードに最適よ」
ご当人は女の子どころか、いまや舞台がおもしろくてしかたがない最中なのである。
初舞台は41年7月の「アンドロマック」、衛兵の役がついた。「左足から踏み出して何歩で所定の位置に達してと、きちんと計算しておいたのに、いざとなったらガッタガタ。どちらの足から踏み出したのかも覚えていないくらいで、顔のひきつっているのだけわかった」。それほどあがってしまっても「お客の感情がこうぐうっと押してくる感じ、たまらないなあ。せりふなんかなくったって……」。一度味をしめたらやめられないという役者稼業。その禁断の木の実だけはちゃっかり味わってしまっている。
昨秋、北大路欣也の代役で「若き獅子たちの伝説」の主人公に抜てきされてから舞台俳優として注目され、そのときの好演を認められて今春「チボー家の人々」の主役ジャック・チボーと、ここ1年役に恵まれた。それだけに半年の中断が残念でならないようだ。
四季15周年記念公演「ハムレット」でも端役だが役につき、プログラムにも入っていたのに、テレビ撮影のスケジュールでついにアウト、初日の舞台を客席で見ながら口惜し泣きしたという伝説もある。それほど舞台にほれている若者をテレビに押し出した理由を浅利氏はこういう。
「テレビの人気は若いものにとって一種の麻薬、それにおぼれるようでは舞台人としての大成もおぼつかないということですよ」
劇団四季のこのホープ、人気という麻薬の魅力にはとんと不感症のようである。(引用おしまい)
一発勝負で、個人の芸能そのものが批評の対象となり、テレビに比べれば得られるお金も少ないであろう演劇は、ハイリスク・ローリターンかもしれません。 イケメンだった浜畑さんですが、長らくのTVスターではありません。おそらく舞台が気になって仕方がなかったご本人が、それを望まなかったのではないでしょうか。しかし、浜畑さんは楽しそうに本を書いたり、絵を描いたり、大学で芝居を教えたりと、俳優人生をお楽しみのご様子です。自作のウェブサイトでは、熱い演技論も読めます。厳しい舞台の賜物ではないでしょうか。
東出さんは大根役者です。最初はだれだって大根です。浜畑さんにしても、浅利慶太氏に大根と呼ばれ、 踏み出す足の順番すら覚えていないヘタクソでした。
東出さんには、電波に乗せてはいけない現状の演技を舞台で批判の目にさらされて磨き上げる覚悟が必要です。20代を演劇に費やすくらいの気概がないと、消えます。需要がなくなるからです。事務所も次の若いスター候補を売り出します。
背が高いだけが個性で、セリフ回しや感情移入がめちゃくちゃだったド下手くそが、数年後に見違える名芝居を見せてくれたら、おじさんは液晶画面に向かって拍手しますよ。変わろうよ、東出昌大。