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2015/08/29

薩長同盟と利権誘導政治

まずは駄作「花燃ゆ」アニメ「ある奥の少女 廃人」から、「倒幕へ立ってごらん」をお楽しみ下さい。

薩摩「ダメなのよ、この藩勢。立てないわ。やっぱり鹿児島に帰るわ」
長州「薩摩のバカ! 何よ、いくじなし。一人で立てないのを藩のせいにして。薩摩の甘えん坊! 恐がり! いくじ無し! どうしてできないのよ? そんな事じゃ一生立てないわ! それでもいいの? 薩摩のいくじ無し! 私、もう知らない! 薩摩なんかもう知らない!」
薩摩「私、立てたわ」
長州「薩摩が立ってる。薩摩が立ったあ!」
薩摩「ありがとう、長州」
長州「よかったね、薩摩」

「花燃ゆ」での薩長同盟締結、こんな感じでした。歴史修正、ひどいわ。ハイジに見せたら「立たないで」と号泣しそう。クララが鑑賞したら、ぶっ倒れて再び立ち上がれませんね。鹿児島県人はさぞお怒りでしょう。この作品、ますます壊れてきてるなあ。放置された動物のナキガラの様子を、毎週日曜に45分間も見せつけられているみたい。1週ごとに腐臭が強くなっています。
「史上最悪の敵と手を組む」ってアオリのサブタイトルもヘン。長州藩史上最悪の敵といえば、関ヶ原で毛利家との約束を反故にして大減封をかませた徳川家康でしょう。あのタヌキジジイに比すれば薩摩藩のトガなんか、家の塀に立ち小便された程度。
1話まるまるの感想はとっくに放棄しているので、詳細な内容については言及しません。しかし、歴史ブログの端くれであるこの場では、薩長同盟が維新勝者側の視点のみにより美化されるのはよろしくないとかんがみ、今日はこの同盟に触れておきます。
山口と鹿児島の出身者らが日本を牛耳った明治以降の歴史は、その権力者たちの権益の歴史です。教育もそうです。1986年に中学校令が出され、日本は近代高等教育の道筋をつけ始めました。官立の高等中学校が5校、地理的条件を考慮して置かれました。現在の東京大学、東北大学、京都大学、金沢大学、熊本大学の前身。未開だった北海道、手が回らなかった名古屋を除き、スタートとしては順当でしょう。ところが、ここで薩摩と長州の藩閥どもが利権誘導に暗躍。薩・造士館、長・明倫館の旧藩校を、高等中学またはそれに近い待遇に格上げしました。
それを批判した1889年5月18日付の東京朝日新聞社説「鹿児島高等中学造士館及び山口高等中学校を廃すべし」より引用します。句読点と仮名遣い、一部の漢字は、おじさんが現代風に読みやすいよう改めています。
(前略)薩長2州に限って、特別の保護を与うるとは何ぞ。彼の鹿児島高等中学造士館及び山口高等中学校、即ちこれなり。そもそも高等中学なるもの5あり。これを東京、仙台、大阪、金沢、熊本の5カ所に配置し、関東、東北、関西、北陸、九州都合よく配置して、いずれも過不及なからしめたり。高等中学の教育を全国に平等に普及普及せしめざるべからず、との趣意ならば、勢いかくのごとくならしめざるべからず。
(中略)しかるに、ことさらにこの5官立高等中学以外に、さらに山口高等中学、鹿児島高等中学を官立し、校長を置き、教頭を置き、教諭を置き、幹事、助教諭、舎監、書記皆ことごとく官立高等中学と同一に為していずれも官吏とし、官立高等中学と同一の保護を与えたるは、そもそも何らの理由あるや。もっとも、費用の使途は5高等中学と同一ならず。要するに従来存立するところの私立学校をば、その組織を改めて官立学校と為したるに過ぎざるものなれば、あえて必ずしも特別の保護の組織になし。その地位、取り扱い、全く官立学校と同一ならしめて、これを特別の保護にあらずというを得んや。(引用おしまい)
政治家が税金を勝手にムダ遣いするのは昔からのことです。新国立競技場の問題一つ取っても、国民年金すら満足に支給できない国がやる規模の計画ではないと思います。年金が支払われず、給料が上がらず、個人資産の価値が下落して、今後は労働人口が激減していく日本に、アホみたいにカネ使って駆けっこや球蹴りの会場が必要なのか(注・スポーツをバカにしているのでない。まず重要視されるべきは暮らしであるから、「球蹴り」等の余技的な言葉を使用)。
薩長同盟は近代利権誘導政治のスタート。そこを認識しておけば、我々が収めたり使ったりして回っていくお金が、権力者のエゴに利用されてほしくない、と現代に生きるみんなも思うでしょう。政治家と、風聞や教科書だけの史観を無批判に信用しない。大切なことです。
最近は「朝の連続テレビなんとか」や「大河かんとか」といった看板も虚偽表示ばかり。権威を疑うことは大事だし、疑うためには疑える分の情報や知識を探すことが肝要です。過去の歴史に今を問うやり方が、おじさんは好みです。若いみんなも自分に合った方法にトライしてみて下さい。