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2014/08/03

皇軍無い戦略

映画「空軍大戦略」(Battle of Britain)をDVDで久しぶりに鑑賞。ドーバー海峡を挟んでの英独空軍の戦いです。ある程度史実を知る欧米人向けに作ってあるので、ポーランド人が英軍に所属しているくだりなど、戦後70年近く経った日本人一般にはわかりにくいストーリーかもね。
戦略の無い軍隊として、馬鹿さ加減を発揮したのが大日本帝国のそれ。科学も戦略も持ち合わせていないくせに、科学力に勝るドイツが敗けた途端に口を極めて罵ったのが陸軍の軍事評論家・大場弥平少将。陸軍の見解と考えていいでしょう。
掲載は当時行け行けドンドンだった朝日新聞。1945年5月10日「特攻魂の欠如・独の敗因」を引用します。一部仮名遣いなどはおじさんが改めています。
(前略)ドイツは前大戦の失敗を二度繰り返した。それは英本土を徹底的にたたき、かつ本土上陸作戦を遂に実現させなかったことである。英本土をたたいておき、ベルリンに敵の野戦車を迎え殲滅していたならば第二次欧州大戦の勝敗は逆転していた。それを行わなかったのは、なんといっても最大敗因だとうと思う。1942年の空軍による英本土大爆撃をもう1月半継続し落下傘部隊や空挺隊等によって本土攻撃を断行していたならば…。
独はそれをやらず、潜水艦の逆封鎖によって英を参らせ得ると考えたところに大きな誤算があったようだ。(引用おしまい)
数隻の潜水艦奇襲と和紙で作った風船爆弾ぐらいしか、米本土攻撃ができなかった軍隊がよく言うよ。ドイツ軍は皇軍よりも兵士の人権を保障した組織だったので、無意味なパラシュート決死隊など送り込みません。唯一やったのは「鷲は舞い降りた」という小説。小説並みの破天荒を重ねたのはウチの方です。スンマセン。
さて、イギリス本土制圧とベルリン決戦は、何の戦略的関連もありません。大場先生はベルリンを占領されたら、ドイツ兵だらけのロンドンに、ド・ゴール(Charles de Gaulle)みたいにナチス亡命政権ができると妄想していたんですか?まるでクソゲーRPG。引き続き記事を引用します。
しかし英は兵器の力――電波探知機により、独潜水艦の活動を奪ってしまったのである。あの場合、ドーヴァ海峡に群をなす米英艦隊を、あたかも日本がマレー沖に英艦隊を撃滅した、独空軍も準備していたならば…あの時こそわれわれの体当たり戦術を独空軍も発揮すべきだった。(引用おしまい)
英軍の世界最高水準レーダーの前に、精神力など便所紙の役にも立ちません。特攻しか頭にない。戦術がそれしかない。マレー沖海戦なんて古〜い話を持ち出さなくとも、ミッドウェイもマリアナ沖も大勝利した旨、大本営発表しているのだからね。大場少将はその話をすべし。一連の敗戦で空母を軒並み沈められているので、特攻しか思い浮かびませんでした。特攻とは軍事的に見ても物資と人命の浪費。組織的大量殺人と呼んでもいい。歴史の評価は「永遠のゼロ」です。引用を続けます。
ソ連と戦火を交えたことも独としては大きな誤算である。ソ連軍を簡単に破り得ると考えたこと、兵法の言葉でいえば独は彼を知らなさ過ぎたのである。
敗れた盟邦の屍に鞭うつとはしたくないが、私はドイツの戦力中に重要なものが欠けていはしなかったかとつくづく思うのである。それはわが特攻魂、斬り込み精神の不足である。(引用おしまい)
ソ連を知らなさ過ぎたのはどこの国?結果、虐殺、略奪、抑留に北方領土の喪失といろいろありましたけど。おじさんは日本の戦力中に重要なものが欠けていたとつくづく思います。たくさんありますけど、特に人命の尊重とリスク予測の不足、いや欠如。
馬鹿が殺して馬鹿が苦しめた欧米人、中国人、アジアの民、そして日本人。だからおじさんは皇軍神話に乗っかる愚を嗤うしかないのです。盟邦をドイツから米国に乗り換えて、繰り返すのはやめてよ。
原爆と敗戦の8月は、未来のために馬鹿を忘れず、恥を思い出して、吹き出す汗をぬぐう夏のひと時です。