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2014/09/06

「花子とアン」、つまらなさの秘密(2)

JOAKの有馬です。この度、有働由美子に代わり、「あさイチ」を担当することになりました。
私は感情を込めず、正しい発音、滑舌に注意して、一字一句正確に原稿を読み続けます。朝ドラの感想、もとい、日本放送協会午前8時開始の連続するテレビジョン小説の振り返りも、感情を込めず、正しい発音、滑舌に注意して、一字一句正確に原稿を読みます。イノッチが凍りついても知ったことではありません。それがアナウンサーの使命なのです。
ベルリンオリンピックゲームスでの河西三省アナウンサーの「前畑ガンバレ」など、恥ずべきものです。感情に任せガンバレを連呼するだけで、原稿に忠実でない。アレは最低でした。
集団的自衛権の行使による日中開戦の暁にも、感情を込めず、正確に原稿を読みます。政府が右と決めたことを左とは決して言いません。
「脇汗をかく」のが、あさイチアナウンサーのお約束なのですか? お任せ下さい。発音、滑舌に注意して、正確に脇汗をかきます。

前項からの続きです。感情を込めず、正しい発音、滑舌に注意して、一字一句正確に原稿を読み続けるのがアナウンサーの仕事だとさ。ひどい人物造形。いくら作り物のドラマとはいえ、公共放送のアナウンス室はこのような扱いを受けて黙ってていいの? 「花子とアン」には、一所懸命仕事に打ち込む職業人たちへの敬意が欠けています。
当時は貴重な辞書を漬物石代わりにする翻訳家、キリスト教の布教と英語教育を放棄した外国人教師、その道の権威を無視して素人に学術書を訳させる出版社……。
プロはだれのために仕事をするの? 顧客のためです。アナウンサーならば、だれのために語るのか。
1936年、陸軍の一部がクーデターを起こしました。「二・二六事件」という名前で、教科書にも出てきます。反乱兵に帰順を促すラジオ放送を行った中村茂アナの訃報を、今日は紹介します。1978年2月7日の朝日新聞「心に響いた『兵に告ぐ』放送」から引用します。
昭和11年2月26日、陸軍の一部青年将校らが首相官邸などを襲い、高橋是清大蔵大臣らを殺害した「2・26事件」の際、反乱軍に向けて有名な「兵に告ぐ」の放送をした元NHKアナウンサーの中村茂さんが6日11時、清水市(注・住所省略)の自宅で老衰のため亡くなった。76歳だった。
(中略)2・26事件当時はNHK告知課員で、事件発生直後から他のアナウンサーと戒厳司令部につめていた。
事件から4日目の29日、臨時ニュースのあと午前8時42分から、中村さんは「勅命が発せられたのである……今からでも決して遅くないから、直ちに抵抗をやめて軍旗の下に復帰するようにせよ……」という香椎(浩平)戒厳司令官名の「兵に告ぐ」の原稿を読んだ。当時の新聞は「懇々たる説得に改心 下士官殆ど帰順す」と伝えている。
事件が鎮圧された後、中村さんのもとには兵士やその父母から「あなたの放送のおかげで降伏する気になった」という感謝の手紙が数多く届けられた。中村さんは香椎中将や、原稿を執筆した大久保(弘一)少佐と、その後も交際を続けたという。毎年2月26日が近づくと、「雪が多い日だった。原稿を読むときは緊張したが、名文だったのがよかった」と、回想していたともいう。(引用おしまい)
 中村アナは、だれに向かって語ったのか? 言うまでもなくクーデターに加わった兵士たちですね。その気持ちが伝わればこそ、兵隊やその父母から感謝されました。発音や滑舌を仕事の第一義に置くだけのアナウンサーは、視聴者が見えていない、アマチュアの自己満足野郎。今回も明らかに誤った美化でした。だれも有馬さんに心寄せない。
かくたる基本的事項すらクリアできない脚本が、浅いエピソードで端役のアナ像を無理矢理に偽造し、恬として恥じない。「花子とアン」がつまらない、もしくはくだらないと言われる証左の一つであります。
この項、さらに続きます