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2014/07/04

サッカー大好きドイツ人の歴史への強迫観念(1)

サッカーワールドカップはいよいよ独仏戦です。ハイレベルの個人を擁しながら統率の取れた、強い時のドイツのスタイルがおじさんは好き。試合が楽しみですね。
きまじめなイメージが強いドイツの人たちですが、ナチス政権と彼らがもたらした第二次世界大戦に関する反応は、日本人とだいぶ違うようです。ちょうど20年前にドイツサッカー界を揺るがした歴史認識問題を取り上げます。1994年3月30日朝日新聞から「ヒトラー誕生日 『独英サッカー』に反対激化」を引用します。太字挿入はおじさんによります。

ヒトラー生誕105年にあたる4月20日、ベルリンで開催予定のドイツ-イングランドサッカー親善試合に反対する抗議デモが日増しに強まり、ドイツ・サッカー連盟本部が襲撃されるなどの混乱が続いている。
この試合は、6月17日開幕のワールドカップ米国本大会に出場する前回優勝のドイツ代表チームのウオームアップを兼ねて計画され、当初は会場をハンブルクとしていた。
しかし、ドイツのネオナチと英国のサッカー暴徒が衝突する恐れがあるとの理由で市当局が返上し、代わりにミュンヘンが浮上した。
ところが、ナチ旗揚げの場所だったミュンヘンでは、なおさら具合が悪いとして除外され、新たに名乗り出たベルリンの五輪スタジアムがさきごろ選ばれた。
この選定に抗議して40団体にのぼる市民グループなどが立ち上がった。ナチ五輪といわれた1936年ベルリン大会のスタジアムを会場にすることは、ネオナチに気勢をあげる舞台を提供するばかりか、英国のファンとの衝突も懸念されるという理由からだ。
反対派は、さる23日独サッカー連盟のドアや窓を壊したうえ、中止を呼び掛けるスローガンを壁に塗りたくった。4月9日にはさらに大規模な抗議集会を開く。(引用おしまい)
ネオナチの乱暴は有名だけど反対派も極端です。極左なのかな?たかが親善試合で、ハンブルクからミュンヘン、さらにベルリンに会場を変更。その度に歴史問題が噴出します。ドイツ人のきまじめさがそうさせるのか、騒ぐことで何かしらの利権が発生するのか、おじさん浅学にして不明ですが、手を打つ毎に起きるドイツ連盟の読み違いの連鎖は、ノルマンディー上陸作戦(D day)と、ソ連相手のスモレンスク(Smolensk)戦をミックスしたかのようです。続きを引用します。

「スポーツ人は歴史に無知すぎる。第三帝国時代の祭日だったヒトラー誕生日の開催だけは避けるべきだ」との声が強いが、独サッカー連盟は強行する構え。こうした情勢に警備当局は試合当日、4千人の警官と600人の国境警備隊を動員するほか、ロンドン警視庁の応援を求め、厳戒態勢で臨む。(AP、ロイター、引用おしまい)
かつてない独英連合軍で試合を強行しようとしたようですね。しかし敵はネオナチ、過激な反対派に加えイングランドのフーリガンの枢軸。一つだけでも強敵です。結局、ドイツ連盟は親善試合を中止します。過去に対するゲルマン民族の苦悩が感じられるお話でした。
この年、日本は従軍慰安婦問題のまっただ中。国際法律家委員会が日本政府に個人補償請求裁判に応じるよう勧告した年です。侵略戦争に対するドイツの強迫観念、日本サッカー協会の健忘症。どちらがまだマシなのでしょう?
この項、続きます