コピー禁止

2014/10/28

コマーシャルの社会性(2)

前項からの続きです。オロナミンCの最新CMをきっかけに、表現の自由の侵害と、権利を行使する限界点について考えています。
これから例示するCMは、表現の自由云々を超越して「アウト!」です。制作者が意図せず作品に反社会性を持たせてしまったレアケース。
1992年7月4日付の朝日新聞「『一気飲み』のCM、やめます JRグループ」から引用します。
「一気飲み」の場面があるJRグループのCMが、アルコールの害を追及する市民団体の抗議で放映中止が決まった。JRグループでは4、5日に全国で放映する予定だったこのCMを、他のキャンペーンのCMに差し替えるという。
問題になったのは、読売テレビ系「遠くへ行きたい」(中略)中で、JRグループが流すナイスミディパスを宣伝する30秒CM。A・B・C(注・3人のタレント名省略)の3人が宿に着き、Bが「イッキ、イッキ」と2人にはやされ、いやだと言うが、結局「じゃあ…」と、朱塗りの大さかずきを飲み干す。6月初めから4回放映した。
これを問題にしたのは、今春から「危ない一気飲みはやめよう」と運動している市民団体の、アルコール問題全国市民協会(今成知美代表)。協会によると、最近、大学生が一気飲みを無理強いされ、急性アルコール中毒で死ぬ例が目立つ。東京消防庁が救急車を出動させた範囲だけで昨年6人が死に、全国では、統計はないが、かなりの数に達するという。
同協会は「生命に危険の大きい一気飲みの悪習を一掃しようと運動しているのに、JRが扇動するとはおかしい」という。特にこのCMは①はやしたて②いやがるのを強制し③女性に飲ませる、という最も悪質な一気飲みシーンと、先月26日にJRに抗議の文書を郵送した。
これに対しJR側は、「一気飲みが危ないとは知らなかった。JRとして、あえて問題のあるシーンを使う考えはない」と、JRグループ共同宣伝協議会の名前で、3日に同協会に放映中止の決定を伝えた。「仲のよい女友達が、旅の解放感を表現するCM。一気飲みにこだわる必要もないので」(JR東日本営業部サービス課)と説明している。(引用おしまい)
1992年の段階でイッキの危険に無知だったJRの情弱ぶりには困ったものですが、迅速な中止の決定は評価に値するでしょう。抗議した市民団体のアクションも、ハウス食品を相手にしたフェミさんとは志が違います。社会はかくありたいものです。
さて、オロナミンCのCMにはどう対処すべきなのでしょう? おじさんの見解です。言いっぱなしではアンフェアですから、以下に書いておきます。
交通事故を誘発しかねない、ダメCMの一つだと思います。以前、ある輸入車のCMに「自動ブレーキがあるからよそ見運転しても大丈夫」のような印象を与えたものがありましたが(今は多少改善されています。自動ブレーキを一番の売りにする会社連の商品宣伝姿勢は別問題)、それに近いダメCM。
しかし、一気飲みみたいに、抗議して打ち切らせるほどのモノではない。消費者が少し考えればわかるレベル、引っかかる方がみっともない水準のお話だからです。
公道走行が禁じられている遊具(スケートボード)には、保険が存在しません。事故を起こせば、対物対人、医療費も自己負担です。それだけで「遊具」を公道で走らせてはいけないことがわかります。
けがしたからって、大塚製薬に医療費請求したって、一文も払っちゃくれません。愚かな自分を呪うしかないんです。
もしも、公道スケボー事故が頻発して、コマーシャルが問題になる時が来るとしたら……。我々日本国民は、その民度の低さに自虐して笑うしかありませんね。