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2014/08/04

「花子とアン」と関東大震災

NHKの連続テレビ小説「花子とアン」は、歴史と文学を楽しめる本格派の朝ドラになると期待していたおじさんの不明を恥じます。ただのウスい恋愛相関劇でした。
表現の自由は侵せないので、どう描こうが自由ですけどね。言いたいのは、実在するモデルがいるのに関東大震災の扱いがひど過ぎる件。
8月2日の放送での、甲府の実家から大八車を引いてきた救援隊にはさすがに驚きました。その救援物資での炊き出しは、路頭にほうとうや甲府ワインが並ぶ山梨物産展。あの柳原白蓮が、その場にほうとうを食わせろと陣中見舞いに来たのを見て、おじさん、朝食が並んだ食卓に倒れ伏しましたよ。
当時、東京市は戒厳令下にあり、帝都の食糧不足から罹災者の地方出京が促され、逆に田舎からの入京は検閲所などで厳しく制限されていました。
運良く東京に入ることができても、略奪の嵐が吹きすさぶ焼け野原にある大八車は格好の標的。在京朝鮮人暴動のデマに踊った、多くの自警団の存在も見逃せません。詰問されて甲州弁なんかで答えたら、朝鮮人と間違われて皆殺しだよ。
その辺を全部スルーしても、実際に連中が上京できたものか検証してみます。1923年9月7日大阪朝日新聞「山梨県下の被害」から、山梨県の被災状況を引用します。仮名遣いや改行など一部、おじさんが手を加えています。
山梨県下における死者は17名、負傷者53名、住居全壊571、半壊875、甲府火災なし。
甲府盆地の震害は大体笛吹川筋、鰍沢、花輪、石和方面は甚大。南都留各村および北都留、上野原方面これに次ぎ、甲府市は魚町、三日町、深町西部各町に被害多く、愛宕山以西舞鶴城以北の区域は災害少なし。東京方面との通信不能にて中央部の状況明らかにせず為に流言多く人心恐々としている。
目下、警察官、軍隊の一部及び在郷軍人、青年団、消防組にて警戒し秩序を保っている(名古屋電話、引用おしまい)
最終的な山梨の死者は 20人、甲府市内の倒壊家屋は300戸超でした。笛吹川筋、鰍沢、石和、南都留、上野原はいずれも甲州街道沿い。壊滅した山道を、ワインを満載した大八車が帝都目指しゆきゆきて、進軍。コントですか?甲府市内に不穏な空気が充満する中、出発できたかという問題もありますね。
重箱の隅を突ついているのではないのですよ。日本放送協会ともあろう、信用ある組織が制作するドラマが、史実を無視してやりたい放題やると困ったことになります。もしも特攻隊を賛美する偉い人が、時代遅れの戦闘機での突撃やロケット爆弾機、体当たり専用潜水艇での犬死にを美化した作品をつくれと言い出したら、拒否する根拠は歴史の事実しかありません。良心?そんなものに基準などない。
「花子とアン」はNHKのリトマス紙です。公共放送が今後、どちらの方向に進むのか。楽しく視聴、厳しく監視。視聴者もつらいよ。