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2019/06/08

あなたも私も丸山穂高?

結局のところ、糾弾なぞ決議して、何がしたいん?
戦争大好き、おっぱいも大好きという、頭の悪い丸山穂高衆院議員への「糾弾決議」と言われましても、一般国民の感覚では意味がわかりません。議員辞職勧告決議にしておけば、だれにだって理解できたんですがね。平和主義を標榜する我が日本国国権の最高機関たる国会として戦争推進を叫ぶ男の追放を求める。国民納得、当然の措置です。
なぜ「キューダン」なんて、ボカす? 自衛隊を「我が軍」などと呼ぶ、穂高同類の好戦的スカタンが議場にいるから気がねしているのか。若い女性に面と向かって、「おっぱい触る、手を縛る」と口走ったセクハラ役人を世間一般の常識の範囲内では処分できなかったトラウマか。
穂高処分に限らず、国民は筋が通っているとの意味で、わかりやすい政治を求めています。北方領土がいつの間にか日本固有の領土じゃなくなった外交青書なんかいきなり出されると、頭が混乱しますので、さっさと予算委員会開いて、北方4島が固有の領土なのか、違うのか、固有なら固有でどこの国の固有なのか、固有の定義は広辞苑などで確認できる日本の国語にのっとったものであるのか、ロシア語、英語、スワヒリ語とかではないのか等々、しっかり、丁寧かつ真摯な説明でお聞かせ願います。
今回は丸山氏が社会常識を極端に逸脱、だれも想定できない既知外行動を取ったため、国民の同情が1ミリも集まりませんでしたが、領土問題には、普段冷静な人間の判断力を狂わせる魔力があるようです。気をつけなければいけませんね。
今日は、島々の領有権をめぐり英国・アルゼンチン両軍の間で海上・地上戦が行われた1982年のフォークランド紛争(アルゼンチン側の呼称はマルビナスの戦い)の事例から、領土紛争が喚起する愛国心の愚かさについて考えます。
アルゼンチン軍事独裁政権のレオポルド・ガルチェリ大統領は、国民の人気取り目的でこの年の3月、英国が実効支配する大西洋上の島々に軍を上陸させます。対するイギリスの首相は鉄の女マーガレット・サッチャーでした。「戦争するしかないじゃないですか」と言ったかどうか知りませんが、いかにも言いそうです。
かくして、両軍は南米大陸アルゼンチン南東に浮かぶ“南方領土”の陸海で、艦船や車両の鉄板ばかりか兵士の骨肉を引き裂く曳光弾、エグゾセ対艦ミサイルなどなどを、およそ3ヶ月間にわたって飛ばし合い、両軍合わせて3千余の死傷者を出した挙げ句、英国の当面のメンツ以外に得るものは何もない結果に終わりました。
この時、アルゼンチンが戦費調達に使った手段がテレビ番組でした。24時間のスペシャル枠で歌や踊りのエンタメを垂れ流し。サッカーの英雄ディエゴ・マラドーナまで引っ張り出して、英軍兵士を殺すための募金を集めまくりました。
いわば「24時間テレビ・愛国心は領土を救う」。200億ペソ(当時のレートで2億8千万円)と大量の貴金属が寄せられたそうです。1982年5月11日付の朝日新聞「テレビ番組、不眠の戦費集め」(菊地特派員)から引用します。
(前略)「マルビナス24時間」と題する特別番組は、8日午後8時半から9日午後8時半(日本時間10日午前8時半)までマラソン放映された。人気女優兼歌手ピンキーと総合司会者フォンタナ氏が、不眠不休で国民に戦争を勝ち抜くための協力を呼びかけた。ギター演奏で有名なアタワルパ・ユパンキ、世界ジュニアサッカー選手権大会でアルゼンチンの優勝の原動力となったマラドーナ選手、撃沈された巡洋艦ベルグラノから救出された17歳の志願兵などが特別出演した。
献金放送の主会場はブエノスアイレスの国営放送局だが、全国各地にも臨時スタジオが設けられ順番に各会場の模様が紹介された。「マルビナスは昔も将来もアルゼンチン領土」というマルビナス賛歌を歌いながら貯金箱のまま献金する小学生。「アルゼンチンの若者を何百人も殺したサッチャー(英首相)は残酷なピラタ(海賊)」と泣きながら金の指輪を寄付する老婦人らが、初秋の冷たい雨にもかかわらず多数の列をつくって献金した。
在アルゼンチン日本人会(宇野文平会長)の有志たちが4本の大日章旗をかついでスタジオに現れると、「ハポン(日本)、ハポン」との歓声。タンゴの演奏で有名な「レオポルド楽団」のバンドネオン奏者セニョール・クニエ(日系人)も無料出演して拍手を浴びた。
この放送の広告費のかなりの部分も寄付されるというが、ソニーなど日本企業数社もこれに応じた。またこの放送は衛星中継され、他の中南米諸国及び米国に送られた。(引用おしまい)
こっけいですよね。バカみたい。でも、この光景が日本で繰り返されないという保証はありません。領土をめぐる愛国心に侵された庶民の愚行は、近年にも確認されています。
東京都知事だった石原慎太郎氏が、沖縄県の尖閣諸島を買うなどと意味不明の妄想を公言した一件は、ナショナリストが引き起こした戦後最悪の外交介入例の一つですが、舞い上がっちゃった人たちが都に計14億円もの寄付をしちゃいました。元々が妄想ですから、東京都にも使いようのないカネでした。
戦前戦中には、篤志家からこどもたちに至るまで、動産・不動産資産から家中のナベカマまで御国に差し出して、献納飛行機だ、戦車だと、せっせと人殺しのタネを納入した過去もあります。
愛国心の使いみちはどっちなのか? いや、そもそも愛国心そのものに用途なんてあるのか? よくよく考えてものを言ったり、お金をつかったりしないと、あなたも私も、みんなが丸山穂高になっちゃうぞ。