さあさあ、武器を輸出するぞ。国産工業を保護せねばならん。三原則などクソ真面目に守っていたら、マーケットがせいぜい20万人ほどの自衛隊に限定されて、企業はコスト高で早晩つぶれてしまうではないか。
最先端技術を欧米に売れ。競争が厳しい? それなら友好国のロシアにもセールスをかけろ。北方領土を返してもらわねばならん。ウクライナ? そんな国知らんわ。大統領に来日してもらわねばならん。あくまで我が国の国益に資する形で進めるのだ。さてさて、国内産業保護のためにも武器を売らねばならん。自衛隊の10倍ぐらいの戦力を持つ国はないのか? えっ、人民解放軍という巨大組織があるのか! よし、そこへ売れ。産業振興だ。消費税も10%にできるぞ。売れ売れ、世界最高の日本の技術を売りまくれ!
自国の技術に溺れて外国の実力が見えないのは、日本人の伝統芸です。習い性と言った方がいい。中国に軍人が何人いると思ってんの。自分からケンカ売ることないでしょ。頭数が違いすぎるよ。少子超高齢化社会だから、もう女子供に竹ヤリ持たせても足りないよ。
戦前も冷静に米国を見ていれば、最初から勝ち目のある相手ではないことぐらい理解できただろうに。そんな資料は、当時の新聞からたくさん見つかります。
日米開戦の直前、米国の軍備を視察した陸軍技術本部・朝野寅四郎大佐は、米軍では自動小銃が歩兵の標準装備だと、1941年3月11日の朝日新聞で語っています。この事実だけで、日本は戦争に勝てるはずがないと理解するのが普通のアタマなのですが、結果、軍部は例によってこの大事を無視して開戦しました。同紙の「米国の科学と技術を衝く」から朝野大佐の言を引用します。
(前略)2年ほど前、(米軍は)自動小銃を歩兵の個人装備用として決定しました。機械化が遅れていた我が陸軍の主力は歩兵。小銃は一発撃つと遊底という棒を手で動かして空薬きょうを排出し、次弾を装填する面倒なものでした。自動小銃にはそのプロセスが不要なので、米軍は皇軍兵士が遊底引いてる間にバンバン連射して、ジャップを皆殺しにできたのです。圧倒的な火力の差、科学技術の違いです。
米国では従来から自動小銃を研究しておりました。(中略)一般歩兵の個人装備としたのは米国だけだろうと思います。
制式になりましたM1式自動小銃の実包は、装弾子に8発入れます。普通の小銃でしたらいちいち射手が遊底を開かなければならないが、自動小銃は薬莢が自然と飛び出してしまるという式のもので、非常に火力の発揮にも効果があります。
また自動的に装塡されますから射手が疲れないという特典がある。(引用おしまい)
明治の衣鉢を継ぐ骨董と、最新鋭マテリアルの激突。終いに神軍は、戦国時代よろしく軍刀閃かせて自動小銃の砲列に斬り込みかけたものだから、米兵はさぞ殺し飽きるぐらい殺したことでしょう。この事前情報だけでも、始めてはいけない戦争でした。
戦場への想像力がない。今にすれば、10倍の兵力とそれ以上の人口・国土を持つ隣国、しかも我々よりお金持ちを相手に挑発したところで、損にしかならんわな。成金とはいえ金持ちは金持ち。ああ、こっちも元成金だったか。現在は落陽の借金老人大国だけどね。
大国Aを頼りにして大国Cに、小国がケンカを売ったところで、Aさんが助けてくれる保障はありません。まして、A国民が矢面に立つ道理は、A市民感情にはない。英仏と軍事援助同盟を結んでいたポーランドが、1939年以降どうなったのか興味がある人は調べてみよう。
「小国」ではないと? どの口が言う? 山だらけでロクな資源もない、一部が核汚染された、ちっちゃい国土にかじりついて、まだ今んとこは経済大国でござると、助六よろしく見栄を切ったところで、諸外国から見れば田舎歌舞伎ですよ。
ここは外ヅラだけでも良くしておいて、時には懇願し、ひいひい泣きついてでも大陸にへばりつき、進出企業にせいぜい稼いでもらって、税収を上げた方が利口だとおじさんはソロバン弾きますがねえ。向こうが見てないところで舌を出せばいい。経済とか国益って、そういうもんでしょうよ。
どの道、お隣がいなくちゃ日本どころかAさんの経済も成り立たない。Aさんが火事場に駆けつけてくれるものか怪しいものです。