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2014/07/26

密約の雨は沖縄に降り注ぐ

密約文書非開示正当化の最高裁判決、米軍毒ガス移送費の日本政府肩代わり文書の公開。沖縄をめぐる戦後の密約の数々が話題になっています。
沖縄をはじめとする島嶼部は、えてして行政による差別の対象になりがち。毒ガス製造場にされた瀬戸内海の大久野島などは最たる例です。その構造は戦後に限りません。
太平洋戦争での沖縄の立場は本土の「捨て石」でした。いよいよ兵士が足りなくなってきた大日本帝国は1945年3月、ついに徴兵検査未済のこどもたちをも召集するの挙に出ます。
しかし、北海道や沖縄、台湾、大陸の少年らはすでに前年から軍務に就けられていたのです。この月29日の朝日新聞「満十七、八歳召集 召集規則改正公布 区域制限を撤廃」を引用します。太字挿入はおじさんによります。
軍では本土決戦に対応して皇土決勝兵備の万全を期するため、特に新鋭潑剌(はつらつ)たる若き在郷軍人の皇国護持の熱情にこたへ、満17歳、18歳の徴兵検査未済の青年を必要に応じ随時召集することになり、召集規則の一部改正を行ひ29日公布即日施行する
満17歳、18歳の青年の兵籍編入は昨年11月1日の兵役法施行規則改正によって内地、朝鮮、満州及び支那各地において実施され、満17、18歳の青年は徴兵検査未済のままで第二国民兵役として在郷軍人に加はったが、その際附則によってその召集は当分の間、東京都八丈支庁長及び小笠原支庁長管轄区域、北海道根室支庁長管轄区域の一部、鹿児島県大島支庁長管轄区域および沖縄、台湾、南洋群島、支那(北支を除く)南方各地域に限定され内地においては修学および生産に及ぼす影響を考慮して、差当たり(ママ)防衛召集に限って召集されてゐたが、今回の改正で、召集適用区域の制限が撤廃され、皇土全体に拡大されたため、満17、18歳の青年はすべて防衛召集はもとより、臨時召集など一般の召集が随時行はれることになった。(引用おしまい)
まず違和感を感じるのは、「軍が法律を改正施行した」とも読める書き方。国会は?旧憲法下での天皇の立法権云々を考慮しても乱暴に思えます。国会を通したとしても、もはや建前に過ぎないから記事でもスルーなんでしょうか。軍が最上位にある国家なんてロクなものではありません。
さて本題。朝鮮、台湾などの外地や北海道、沖縄など島嶼部は「修学ならびに生産への影響」がないとして、少年がじゃんじゃん兵隊に取られていました。それだけでは戦争継続が難しくなったから、いよいよ本土の少年も戦地に差し出すことにしました。
敵から守るべきものには順番があります。まずは天皇を頂点とする「国体」。国のあり方だね。日本本土がスカスカになったら国体の護持が危うくなるから、それまではいわゆる「へき地」の少年に限り、殺し合いに参加させていたわけです。沖縄のこどもたちはたまったもんじゃないね。地上戦で県民の四分の一が死にました。
法律一つにも差別構造があらわになります。軍隊の階級一つ取っても明らかですが、戦争とは差別あってこそ成り立つから、おじさんは嫌いなのです。