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2014/06/19

ハーモニカは不良の楽器?

みんな楽器を演奏するのは好きかな?学校ではハーモニカを習うと思います。上手な人が吹くと息の入れ方次第で、ロックギターにも負けない鋭い音も出せるし、哀愁を帯びた優しいトーンも聴かせることができます。
今日紹介するのは、ハーモニカが学生たちの間で流行した大正時代末期、新しい風俗を理解できない大人たちが、若者を弾圧した歴史の狭間のお話です。1926年3月12日の東京朝日新聞「ハーモニカ音楽団、検挙始まる 学生、不良少年の不正を取締まるため」。太字挿入はおじさんによります。原文は句読点が少なくて読みにくいため、おじさんが多少加筆しています。以下に引用します。

流行の楽器ハーモニカは不良少年の代名詞だとあって、警視庁不良少年係ではハーモニカにまつはる数々の不良行為を指摘して、関係各学校に警告する事になった。
昨年あたりから猛烈に中学生間に流行し初めた(ママ)ハーモニカは、先(まず)専門学校生徒間に作られたハーモニカ・ソサエテーあるひはバンドから忽ち(たちまち)中等学校に及(および)、現在ではほとんどあらゆる学校で音楽部等の名義で多数が集まり、必然的に入場料などをとる演奏会などが催されるやうになつて、これに伴ふ弊害は切符の押売り(ママ)となり、最近では市郡各女学校の門前で脅迫的に押売る者さへ現れてゐる始末に、警視庁の活動となつたもので神田区を中心とする学生から成る某バンドが、先づ後藤係長より解散を命ぜられ、目下続々、ハモニカを懐中する学生が召喚されてゐる。切符の押売りのみでなく、ハモニカの音の裏に潜む不良軟派分子の徹底的検挙だと不良係では言つてゐる。
後藤係長は語る。「流行当初は別に被害といふ程の事もなかつたが、昨年末あたりから単なる押売りのみでなく、そのついでに金銭まで強請したり、不良団がハモニカバンドの名を借りて警官の目をくらましてゐる事が分つた(ママ)ので、徹底的に取調べ(ママ)、学校にも忠告する事になつたものである」(引用おしまい)

関東大震災から3年もたっていない、まだまだ帝都復興に全力を挙げるべき時期です。どうしてえらい人たちって、いつの時代にも大切なことは放ったまま、ハーモニカ狩りとか集団的自衛権とか、くだらないことに血道をあげるのかなあ?
とがめられるべきは押し売り行為なのに、お巡りさんはハーモニカ演奏者とその文化全体を取り締まりにかかっています。これは人権が十分に保障されていなかった昔に限りません。自由な社会になったはずの1960年代半ばにも、全国で若者のエレキギターブームを、教育者ら大人たちが寄ってたかって弾圧した大騒ぎがありました。
トシをとってアタマが硬くなってくると、知らないものを知ろうとせずパニックにおちいって排除しようとしちゃう。
勉強する姿勢を忘れないようにしなきゃいけませんね。おじさんも自戒します。