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2017/01/10

田中角栄ブームと石原慎太郎、そして小池百合子への違和感

昨年あたりから田中角栄ブームらしいですね。田中関連の本が売れているそうです。まるでヒーロー扱い。無批判な空気が何だか気持ち悪いです。
田中の未亡人ハナ(はな)が死亡した際、明らかになった課税資産額は89億円。これは田中の全遺産の半額だったそうですから、表に出たカネだけでも180億円の蓄財をしていたんですね、貧乏人から立身出世した皆が尊敬する“今太閤”の角さんは。
200億円近い資産ですよ。日本のため、国民のために粉骨砕身した男が貯める額ですか?
田中の業績として、中国との国交回復など評価されるべき点を忘れてはいけませんが、その後ロッキード事件が発覚してからは、死ぬまでカネと権力にまつわる話題ばかりです。田中第一の関心が「天下国家」じゃなくて「天下の回り物」の方にあったのは間違いないでしょう。そんなブームに、軽々と乗ってはいけません。
流行をつくる側には、対象物を使ってカネを儲けたい思惑があるわけです。個人の思想信条なんか関係ない。こたびの角栄礼賛本の一角に、石原慎太郎氏の著書があることでも明らかです。
「天才」という題名の小説ですが、ひどい代物でした。田中が「俺」という一人称で政治家人生を振り返る体裁なんですけど、中国との復交にもロッキードについても、田中の感情が何も書いてない。小説としての価値も、田中本としての中身もゼロです。空っぽです。カルト宗教教祖の霊言もどきの妄想上の田中霊言ブック。
石原氏はイデオロギーやプライドで動く人じゃないんですね。カネです。そうでなければ、こんな著書恥ずかしくって出せやしない。豊洲のボロ地面への市場移転は、石原都知事の信念だったんでしょうか? 
政治史に興味がある人の中には、田中の金脈問題を激しく非難していた青嵐会にいた石原氏が、田中を礼賛する変節はけしからんと憤る向きもあるかもしれません。それは石原慎太郎という人間を買いかぶりすぎです。
1980年の衆院議員選挙は、自民党の苦戦が予想されていましたが、選挙期間中に大平正芳首相が急死したことから、同情票が流れて与党の大勝となりました。大平を攻撃していた石原氏の態度が豹変する、失笑必至の人物記事を紹介します。1980年6月14日付の朝日新聞「反主流一転“親大平”」から引用します。
つい先ごろまで、野党顔負けの激しい口調で自民党主流派、大角連合に批判を浴びせ、大平内閣攻撃を続けていた自民反主流派の「闘将」たち。その選挙運動が、首相の急死でいっぺんに「親大平」へと急変した。「大平さんは正直、良心的な人」から「本当は大平さんとは親しかったんだ」との“真相”発表までさまざま。表向きは「亡き首相への哀悼」と口をそろえるが、そのかげに「同情票」への思惑もちらつく。13日の自民党本部は「大平さんの死去で党内の足並みがそろえば不幸中の幸い」と、この様変わりに、ニンマリ。死せる首相、生ける反主流派を走らすの構図だ。
大平主流派攻撃では反主流派の中でも一番手といわれていた中川グループの幹事長役、石原慎太郎候補(衆院東京2区、自前)は、13日から本格的な「服喪選挙」に入った。
東京都大田区山王の選挙事務所入り口に半旗が立った。大型の国旗専用竹ざおは特別注文しないとダメ、ということだったので、運動員が黒ペンキをぬって作った。その運動員らは、全員が黒白のリボン型喪章をつけた。12日に50個、13日にはさらに30個買い込んだという。
必勝ダルマのわきは、故大平首相の黒リボン写真を飾りつけた。選挙カーの右前面にも半旗。後部ドアにも日の丸をはりつけ、黒リボンを飾った。運転手やウグイス嬢も黒ネクタイやリボン。街頭演説のたびに1分間の黙とう。さらには街中をオルグする別動隊(ママ)は腕に喪章姿……といった徹底ぶりだ。
「正直いって選挙はお祭り。気分の盛り上げが大切です。これだけ弔意を表明したことで、事務所へやってくる支持者たちもシンパシー(同情)を感じてくれますよ」と選対幹部。
13日午後2時すぎ、品川区内の商店街。選挙カーが「喪に服しまして、皆さまに心からのお願いに参りました」。石原候補が車の屋上から演説した。持論の金権腐敗一掃から切り出したが、その中身は「腐敗は野党だって」というもの。「自分たちの責任をタナに上げ、一方的に責任をなすりつける。そんな野党がどんなに大平さんの体をむしばんだことか」と首相の死と野党批判を結びつけてみせた。
防衛論、教育論のあいまに大平首相についての回想をおりまぜながら、「痛ましい」となんどか繰り返した。最後は「心からおくやみ申します」。
石原候補の弁。「やっぱり一国の宰相ですから。弔意は当然でしょ。大平さんは田中派と野党の板ばさみで苦しんだ。田中さんとの関係で、大平さんを批判したけれど、本当は個人的には親しかったんだ」と“秘話”まで披露してくれた。(引用おしまい)
この程度の人物です。変節漢とすら呼べない、手前勝手な老人をこないだまでトップに担いでいた東京都民の皆さん、ご苦労様です。尖閣諸島買い取り宣言などの妄言で憎悪をあおる、ドナルド・トランプの先輩のおかげで、隣近所との付き合いが悪くなり、他府県民も迷惑しております。
“改革者”として大人気の現知事も、過去の行いをひも解く限り、ロクな人物ではなさそうです。また知事選挙をやる前に、過去の言動から政治家を見ておいていただきたい。オリンピック予算はじめ東京のカネの問題は、他府県の納税者にも深刻となりかねないほどにデカいのですから。