コピー禁止

2015/03/13

本当にあった怖い原発テロ

春闘だ、春闘だ。どうしたわけか我が国は株バブルだから、上場企業には内部留保が山ほどあるぞ。吐き出せ、吐き出すのだ。
なにい、株価のみの好況で成長の実体がないからカネは出せんとな?  アホぬかせ。ジャパンオリジナルの成長産業があるではないか。
原子力産業だ。廃炉だ、ハイロ。5年や10年で終わるはずがないんだから、長期的視野をもって参画できるではないか。理系の学生はこぞって原子力を学ぶのだ。一生食いっぱぐれがないぞ。
言っとくが、少年よ、建設じゃなくて廃炉の専門家になる大志を抱け。一個を60年も動かされたら、造る方の仕事などしょっちゅうあるわけがなかろうが。
どうせ当分、生身の人間は福島第一の建屋には入れんのだ。ロボット産業もビジネスチャンスじゃ。
汚染水だって増え続けるに決まっておる。管理会社が一つや二つで済むはずがなかろう。汚染水を置いておく土地もまだまだ必要だ。不動産業界も潤うわ。濡れ手に粟ではないか。
再稼働やらかすらしいから、核のゴミを保管する起業家もアリ。半減期クソ長いんで、子々孫々、未来永劫仕事できるぞ。
放射性廃棄物?  その日本語おかしいわ。「廃棄」とは捨てることじゃ。危なっかしくて捨てられないから、「処分」ではなく「貯蔵」と言い換えているではないか。「高レベル放射性廃物」とでも呼べばよかろう。捨てられぬがゆえ、ビジネスになるのだ。
原子力発電所のおかげで、日本の雇用の未来はバラ色だあ!

みんなはこんな汚い言葉を使っちゃいけませんよ。実は原発のおかげで仕事が増えそうな業種がもう一つあります。警備産業です。ただし命懸けですがね。
中東で2人の日本人が殺されて、日本を敵だと宣言したテロ集団だっています。原発は格好のターゲットになります。
そんなことはない?  それがあるんです。
1982年1月18日(現地時間)、フランスのクレマービルに建設中だった高速増殖炉「スーパーフェニックス」にロケット弾が撃ち込まれました。前年に誕生したミッテラン政権と世界に衝撃が走ります。
1月20日付の読売新聞「仏原発をロケット攻撃」から引用します。
(前略)管理当局によると、ロケット砲による攻撃は、18日午後11時半(日本時間19日午前7時半)ごろ始まった。ロケット弾のうち4発は、高さ80メートルの高速増殖炉の壁に命中したが、壁の厚さは約1メートルもあり、ジェット機の墜落にも耐えられるほど堅古なため、深さ10センチ壁をえぐっただけでほとんど被害はなかった。残りの一発は増殖炉の作業口から内部に飛び込み、さく烈した。リヨン郊外にある建設現場には、警備員、作業員など約20人がいたが、警備員の1人は、ロケット弾がさく烈した地点から20メートルほどの所にいたという。増殖炉は2年後に稼働するため、現場には核燃料プルトニウムはなかった模様だが、冷却材の液体金属ナトリウムが大量に運び込まれていた。
液体金属ナトリウムにロケットが当たれば、液体金属ナトリウムが空気と反応して、爆発状態になる恐れがあり、今回は無事だったものの、今さらながら関係者に衝撃を与えている。
リヨン警察が、19日発表したところによると、攻撃直後、「平和・環境保護委員会」と名乗る匿名の男が警察に電話をかけ、犯行を声明した。また、パリのフランス通信(AFP)にも、「環境保護主義で平和主義者」と名乗る男が電話をかけ犯行を告げたが、グループ名は知らせなかった。この男は、攻撃したグループが現場の作業員たちがけがをしないよう細心の注意を払ったと述べたという。
(中略)リヨン警察が、ローヌ川対岸の砲撃地点を捜索した結果、現場から約400メートル離れたところでロケットの発射装置を発見した。(引用おしまい)
もちろん、このようなテロは許されません。だからと言って、「テロには屈しない。だから現状を貫く」というテンプレ発言を披露するには、原発はあまりに危険な存在だと思えませんか?
この事件の犯人は、おそらくゴルゴ13のようなプロだったのでしょう。作業員の安全への配慮が感じられます。液体金属ナトリウムのある場所も調べて外して撃ったと思われます。当時の報道によると、現場に残したロケット砲はソ連製で、足もつかなかったみたいです。でも、次にやりたいと思い込んだヤツが同じ思考だとは限りません。ただのイカレ野郎が凸してくる可能性だってあるんです。実際、この事件に読売新聞はあまりの危機感からパニックを起こし、「原発テロを防ぐためには市民の自由の制限もやむなし」なる趣旨の社説を発表するほどでした。
仮に攻撃が原子炉本体に及ばなくとも、冷却材に引火したらたちまち第二の福島第一。日本という国家は壊滅しますよね。
33年前のフランスのテロを昔話と笑い飛ばすのか、21世紀への警告だと受け止めるのか。
防衛省の制服組の権限を強めて、文民統制の根本を変えようかとの議論がなされています。役人は組織の予算を増やそうと努力する生き物ですから、そうなれば海外での「活躍」に向けて努力することでしょう。そこに組織の論理はあるけど、国民の安全への配慮はない。「テロ? 原発は経産省の管轄でしょ。ウチはお門違い」と言われかねません。
70年前に敗れた戦争も組織の論理で行われました。ボロカスに負けた結果を招いた軍隊の所業を、国民は「亡国」と嘆きました。亡国はもうたくさんでしょう。うん、もうたくさん。