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2014/12/17

笑えない「THE MANZAI」(1)

「THE MANZAI」って、昨年までは展開や優勝者の顔ぶれから、出来レースだと思っていました。
何をしゃべってるか理解できない若手が続けて勝つもんだから、これまでで一番面白かったのが、スポンサーのライバル会社の商品名を連呼した一昨年の笑い飯という体たらく(上演を許した日清食品の度量は評価)。
さて、今年は何と売れっ子の博多華丸大吉が出てきました。反則です。何度も漫才を劇場で見ていますが、上手いんですよ。技量・知名度を考慮したら幕尻や十両ぞろいの大相撲トーナメント(中には幕下も交じる)に、大関が参加するようなもんです。
まあ、見てみました。Aブロックは予想通りアキナ。ライブでもはっきり声が通る鍛えられた芸人さんです。ネタ以前に滑舌と間の取り方で独り勝ちでした。比較基準、低いな。「認定漫才師」とはだれが何を基準に認定するの?
Bはまさかの飛び道具トレンディエンジェルが決勝に駒を進めました。「ハゲ」というネガティブファクターを明るい芸に仕立てた点が素晴らしい。しかも、以前より能力がさらに上がっています。他に代えが利かないキャラクターもテレビ向き。それをおいても、他コンビは猛省だね。飛び道具相手に惜敗じゃなくて「惨敗」だからねえ。
Cグループは事実上の決勝トーナメントでした。国語を大事にする和牛は、おじさんのイチオシ。上手いし、華がある。ダイアンはツッコミの出来次第(やはりアガってしまった。ボケも珍しく引きずられた)、ワイルドカード出場の三拍子(知らなんだ)も基礎ができた二人でした(テレビに出る以上、それは前提ですが)。
でも結局、華丸大吉なんですよ。売れっ子の価値を落とすジャッジをできないオトナの事情もあるでしょうが、それを差し引いても期待を裏切らない舞台でした。
個人的には、出場者に優しいビートたけしさんが、懐かしの獅子てんや・瀬戸わんやの名前を出したのがうれしかった。おじさん少年時代のスターです。
てんやわんや全盛期の1968年1月28日付の朝日新聞「すがお」から引用します。
てんや「寄席で10日間同じものをやっていても、必ずどこかいじってますね。すぐにあきちゃって新しいものをさがしはじめます」
わんや「いつもと違うことをいうから、またやってるなと思うわけです。もう15年もいっしょにやってるから大丈夫」。互いにいきはぴったりしている。
「最近はお客の笑いが変わったような気がするな。“間”とか“オチ”や“シャレ”をじっくり聞こうとはしませんね。ダジャレのようなせつな的な笑いが要求されます。ぼくらは古くなったんですかねえ」(引用おしまい)
てんやわんやが嫌ったダジャレならまだマシな方だというのが現在の漫才です。肛門の汁がどうこうというクズネタが電波に乗り、「国民ワラテン」なる一般投票で高評価を得る2014年歳末のニッポンお笑いレベル。わんやは亡くなりましたが、てんやさん、これで良いんですかね?
とりあえず、華丸大吉のしっかりした漫才が優勝につながって結構でした。大吉さんの最後の一言がまた良かった。「劇場に来て下さい」。まさにその通り。劇場に漫才見に行きましょう。
「THE MANZAI」は出演者の選定以外にも番組構成自体がダメでした。その問題点を次項で考えてみます。