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2014/12/16

特定秘密保護法と治安維持法

総選挙が終わりました。自民党強し、というより野党ひどし、の無能っぷりが情けない感があります。ブロガーにお金を払って、「選挙に行こう」なるテーマ記事を募集したスカタン政党もあったとか。公選法違反ではないにしても、くだらないことに税金を浪費するのはやめていただきたい。政党助成金など廃止してしまえ、と心の底から思いますね。
それにしても、衆院を解散する権利は与党側(首相)にあるのに、民主党なんか事前準備ゼロでしょう。おじさんですら夏ごろに年末選挙の可能性を考えていたのにね。もっとも、少数の北朝鮮拉致被害者が見つかって、内閣支持率が上がる前提でしたが。安倍内閣って円安誘導の株式バブル以外に何かやったのか?
ああ、特定秘密保護法がありました。選挙期間中に施行されてしまいましたよ。何だかわからない秘密を理由に、ご近所さんもあなたも私も、いつ逮捕されてもおかしくない警察国家ニッポンの夜明けです。
民主主義国家では杞憂ですか? 戦前の稀代の悪法である治安維持法だって、最初はそう言われていました。法案段階で小川平吉法相が「労働党、社会党ができても本法は適用されない」と国会で断言したのにあの始末。
今日は治安維持法が、その恐ろしい牙を初めて国民にむき出したコム・アカデミー事件を紹介します。1936年7月、講座派というマルクス主義者の一団が、警視庁に一斉検挙されます。その際に治維法が大活躍したのでした。
193612月2日付の東京朝日新聞「コム・アカデミー首脳部を送局」から引用します。仮名遣いなどを、おじさんが現代風に改めています。
去る7月10日、警視庁特高局が一斉検挙を行ったコム・アカデミー事件は5カ月にわたる取り調べも終わり、一両日中に首脳部を送局するが、日独(防共)協定締結の折柄、今回の事件は今後の赤色防衛に新たに重要な関係を持っているので、当局でも慎重な態度を取り、高橋特高第一課長、中川同係長、志村主任警部は1日午後、東京地方検事局を訪れ、市原思想部長、長谷川・大田検事らと協議した。すなわち平野義太郎氏をはじめ、小林良正、矢浪久雄、長谷川国雄、松原宏遠ら主要人物はほとんどみな送局されるが、送局の理由として、今までほとんど適用を見なかった治維法第2条(実行に関する協議)及び第3条(扇動)を珍しくも適用し、思想犯取り扱い上の新機軸を出すことになった。
平野義太郎、小林良正らの送局理由は――
昭和7年春、非常時共産党中央委員岩田義道、野呂栄太郎らと共に党のために学術的援助をしたかどで治維法第1条を適用され、さらに「日本祖本主義発達史講座」の刊行に関与し、これに伴う労農派との論争展開や、各種の学術的な論文、啓蒙的な論文著作及びこれに関する会合、打ち合わせを、将来共産党の組織されるのを目的として「協議」し「扇動」したるものと見て、治維法第2条及び第3条の「目的遂行」及び「扇動」の条項を適用しようとしているもので、合法的に許されていた著作が治維法の対象となったのはこれが初めてで、文壇や論壇に相当な反響を与えることとなろう。
なお近く送局となる江東地方戦線統一懇談会、朝鮮新聞事件等も同様な条項の適用を受ける模様である。(引用おしまい)
これで講座派は壊滅。記事文末にあるようにその後、異論を許さぬ一億右向け右の治維法はあちこちあまねく適用されて、数百万人を殺し、数百万人が殺された「大東亜戦争」を引き起こしました。
他人事のように書いている東京朝日新聞ですが、この時代には、すでに国体べったりの御用新聞化がかなり進んでいますからこうなったのでしょう。情けないな。
かつては野党にも、爆弾男と呼ばれるような議員が存在しました。政府に都合の悪い情報を国会で暴露する、野党としては当然の仕事ですが、最近はいませんね。秘密を暴く気概がない人たちへの国民の期待のほどが顕著な選挙結果でした。
なれば、治安維持法の衣鉢を継ぐ特定秘密保護法の最初のターゲットは、朝日新聞か毎日新聞になるような気がします。一発かませば、新聞・雑誌は萎縮しますよ。テレビ? 権力批判精神なんて最初から持ち合わせちゃいません。いずれウェブサイト、ブログ、ツイートにも取り締まりの網、恐怖による自粛が蔓延するでしょう。
特秘法なるゾンビは、今殺しておかないといけません。