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2014/11/13

猿岩石はなぜ消えたのか?(3)

以前の記事でも述べましたが、テレビに良識を求めてはいけません。それは視聴者に限らずです。その場の画ヅラのためには、タレントの一人や二人の芸能生活を絶っても動じないのが、テレビジョンというメディアのやり口みたいです。
前項からの続きです。テレビは猿岩石を短期季節商品として見限ります。カメラの前で芸人がスベることを強要されたとしたら?
1999年11月7日付の朝日新聞「猿岩石、旅から3年のいま、どんな思いでお笑いしてるの」から、引き続き引用します。
ギャグで2人がキスをするシーンで、笑いではなく、「きゃー、すてき」ときょう声がわいた。面白いことを言うと、「無理するなよ」と突っ込まれた。「この場面でつまらないギャグを言って」という指示までされた。
テレビの世界は、残酷だ。
2人が夢見たお笑いで勝負をする道はふさがれ、感動の体験談も視聴者から、すぐに飽きられた。一回、芸人をやめ、数年ほかの仕事をすることを考えた。
有吉さん。「『一発屋』とか『いつ消えるか』とか、言われ続けた。お笑いのキャリアが1年だけの自分がつらかった。自分は一番底辺にいるはずだったのに、気付くと守るものができていた。人気を利用するだけかも、と人まで疑った」
Aさん。「あの旅は、自分で勢いよく走っていたのではなく、勢いのある乗り物に乗って耐えていた、という観じだった。おれたちがしたことが独り歩きし、猿岩石だけがどんどんでかくなった。ぞっとした。どうしようもなくて、はがゆかった。おれたちはあの企画で、お笑いからもっとも遠い『感動』を視聴者に与えてしまった」
いま、テレビのレギュラー番組は、出身地広島のローカル放送を入れて2本。昼間で寝て、午後から仕事をし、明け方まで飲む生活だ。
今年になり、駆け出しの若手芸人しか出ない月一度のお笑いライブに参加し始めた。夏には、青森県の下北半島など、地方の祭りにもゲスト出演した。
そんな場で、「コントは別料金だ」などと憎まれ口をたたくと、観客から非難の声が飛ぶ。「なんか、へん。テレビと違う」「猿岩石じゃないみたい」
そんな時、「うるさい。おまえら死ね。おまえの髪形の方がよっぽどへんだよ」などと言い返す。(引用おしまい)
まあ、「死ね」はマズイと思いますが、地に足を着けて再出発を期す猿岩石(有吉さん)の葛藤が感じられる15年前の記事でした。これでもまだ、TVスターになりたいですか?
画面でスベる猿岩石は、テレビ局が創作した虚像でした。ライブで観客とモメる有吉さんの方が、現在一般に毒舌と呼ばれて重宝されているトーク芸に近いと思います。
猿岩石をわざとつまらなく演出したテレビにだまされた、おじさんの不明を恥じます。おわびといってはなんですが、虚像を排して復活を遂げた有吉さんの一層のご活躍を祈念いたします。Aさんもどうぞ、息災で。