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2014/11/05

赤玉ポートワインと排外主義

朝っぱらから、「外国人にはわからん」とか「異人さんには無理」とかいうセリフがテレビから聞こえてくると、うんざりします。たとえ作り物のドラマでも、地域マイノリティを差別する言葉がぽんぽん飛び出すのはいかがなものか。わが国在住の外国人や、国際結婚した人、そのこどもたちは、どんな気持ちでセリフを受け止めているのでしょう? もはや在特会ドラマだな。
今朝の連続テレビ小説「マッサン」では、「もう一回、世界戦争やらなきゃ景気は良くならん」旨のネトウヨレベルのひと言が、その他の駄作リーズンをすべて吹き飛ばしてしまった感がありますが、作品恒例になっている人種民族差別はけしからぬので、こちらをマジメに考えてみます。
ヘイトスピーチや外国人差別の掲示板にはんらんする排外主義は、どこから噴出するのでしょう。簡単に言えば、立場や文化環境の違う相手を思いやることができない人がかかる病気だと思います。
「マッサン」に出てくるワインのモデルである寿屋(現・サントリー)の「赤玉ポートワイン」は現在、「赤玉スイートワイン」の名前に変えられ販売されています。その経緯が排外主義的姿勢の好例だと感じましたので紹介します。
1973年2月15日付の朝日新聞「サントリー赤玉『ポートワイン』、『スイートワイン』に改称」から引用します。
サントリーの甘味ぶどう酒「赤玉ポートワイン」が4月から「赤玉スイートワイン」に改称される。ポルトガル政府から「ポートワインはわが国でできるぶどう酒のこと。日本でつくっているのに勝手に名称を使われては迷惑」と再三抗議があったため。
赤玉ポートワインはサントリーの創業者鳥井信治郎氏が創業後まもない明治40年に発売したヒット商品で、戦前戦後を通じて大きな人気を博し、今でも甘味ぶどう酒界では60%近いシェア(市場占有率)を持っており、いわばサントリーの育ての親。このため、社内の愛着心も強く、ポルトガルからの抗議に対しても、「日本では古くから愛用され、わが社の製品としてすっかり定着している」と改称をしぶってきた。しかし、日本の経済力が世界各国の脅威のマトになり、日本に対する風当たりが強くなったなかで、いつまでもいまの名称に固執して、トラブルが表ざたにでもなると、サントリー製品を国際商品として売出す(ママ)うえにもマイナスになる、と判断したもの。
同社はシャンペンと名付けて売っていた発ぽうブドウ酒もフランスからの抗議でことしからスパークリング・ワインに改称したばかりだが、「これで、わが社の製品のなかでまぎらわしい名称のものはなくなる」といっている。(引用おしまい)
ポートワインはポルトガルの伝統文化が生んだ逸品であり、同国と世界の財産です。その商標を名乗るための生産地域も法律で決められているそうです。シャンパンの商標だって同じ。フランス・シャンパーニュ地方産に限られています。
もし、どこかの国が「灘の生一本」や「薩摩焼酎」を、自国で勝手に造って売り出したら、日本人として良い気分にはなれませんね。
サントリーの最終的判断の根拠が、企業の輸出戦略だったのが残念です。「わが社の製品のなかでまぎらわしい名称のものはなくなる」って、胸を張るがごときコメントもどうだか。相手の立場や気持ちを思いやれば、言えないでしょう。
すっかり、国際的大企業に成長した今のサントリーから、こんな社風は放逐されていると信じますが、この空気が2014年の朝ドラにおいても、じくじくと滞留する排外主義を看過するままのニッポン社会には、違和感を覚えます。