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2014/11/12

駄作「マッサン」とOL(1)

毎朝ドラマ寄席の時間です。マッサンコント「エリーの母と茶の間」をお送りします。

母:皆さん、どうして「マッサン」に意地悪言うの?
茶:違うよ。公共放送が竹鶴物語を勝手にいじって壊しちゃったんだよ。
母:我慢しなさい。視聴者でしょう。

年長者だから我慢しろって教育方針は、現代の感覚からするといかがなもんでしょうね。尾木ママに聞いてみたい。
無神経なセリフが飛び交う駄作朝ドラ「マッサン」は、物語が停滞する中、不愉快高度1万メートルの安定飛行が続いています。
NHKにも言葉に敏感な時代がありました。過敏と言ってもいい。
今は勤労女性を一般に「OL」と呼びます。1960年代の前半は「BG(ビジネスガール)」が通称でした。NHKはこれを、よろしくないから放送で使いませんと宣言して、ちょっとした騒動になりました。裏には英語を使わないと気が済まない、当時の日本人のメリケンコンプレックスがあったようですが、この傾向は、ほとんど変化していないように感じられます。
それゆえに取り上げる価値があると思いますので、評論家の坂西志保による強烈な揶揄である、1964年3月9日付朝日新聞夕刊「BGに代る『呼び方』」から引用します。仮名遣いは、おじさんが現代風に直しています。
「BGは流行語であり、悪い意味にとられる恐れもあるので、放送では使用しない」とNHKの放送用語委員会が発表したのは、昨年の9月12日であった。アメリカ人が「BG」ときけば、不思議そうな顔をするか、ニヤッと笑うのは、それがバー・ガール(飲み屋の女)の略語だからである。
場末の居酒屋にたむろしていて、客が目くばせするとOKとばかり、腕をとって店を出て行くであるから、「ビジネス・ガール」とはいっても、略語は敬遠する。もちろん、BGは日本語化した便利な言葉であるから、外国人におもねって変える必要がないというなら、それでもよい。だが、物言いがついたからには何かそれに代わる名称がほしいというのが大多数の気持ちらしい。
昨年11月、「女性自身」が、BGに代わる言葉を募集した。約2万6500の投票がよせられたが、1位はオフィス・レディ、2位オフィス・ガール、3位サラリー・ガール、4位キャリア・ガール、5位ビジネス・レディ……と、30位まで続く。その中には「BG廃止反対」が8位で、1400票を集めている。その後、この雑誌はオフィス・レディ(略称OL)を使っている。しかし、外人に自分はOLだといったら、たちどころに「オーノー」といわれるであろう。老婦人――オールド・レディの略語と受け取るからである。
働く女性を全部含む魅力的な言葉というのであるから、そう簡単に見つからない。大宅壮一氏は、一種のアクセサリーみたいなものだから、はたからきれいに見られる装身具が欲しいんだろうという。それで若い人たちは「レディ」を選んだのであろうが、これは癖のある言葉で、ガールとかウーマンのように総合的にあまり使われていない。あなたはレディだといわれたら、上品な、たしなみある女性だという意味で、ノー・レディだといわれたら、はしたない女だということなのである。オフィス・レディもビジネス・レディも、もったいぶったきざな表現で、いやみったらしい。(引用おしまい)
「BG」は売春婦の意だということらしいですね。女性週刊誌に寄せられた、なお英語にこだわる代案を斬りまくる坂西志保。
坂西は、大正時代に渡米し大学を出て、連邦議会図書館の日本課長にまで登用された英語のプロです。彼女によれば、現在通用している「OL」だって、ネイティブ相手には「オーノー」だそうですから、国際結婚を目指すOLの皆さんは「あいあむOL」などとは言わない方が良さそうですね。この項、続きます