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2014/08/29

戦争とキラキラネーム

孫の命名を頼まれたんじゃが、最近流行りの名前がわからん。人気の順番をネット検索してみよう。女児、女児と…。むう、場末のスナック街ホステスの源氏名リストじゃわ。第一、読みがわからん。男児も見てみるか。何じゃこりゃ! 大相撲の番付表か? さもなくば、日本国籍取ったサッカー選手名一覧じゃわ。
孫には大和なでしこらしい名前を付けてやろう。「佳那子」はどうじゃ? うちの名字は「大場」じゃから「オオバカナコ」。どうじゃ、実に日本人らしい響きじゃろう。ええっ、なぜ夫婦そろって反対するんじゃ! 日本人の心が理解できんのか! 我が子ながらお前は大馬鹿じゃ! 大馬鹿な子じゃっ!

キラキラネームとかDQNネームとか呼ばれる、子供のアホなイヌネコ的命名が、今や我が国の主流になった感がありますが、終戦直後にもDQNネームが氾濫していました。
もっとも今と違い、敗戦により価値観が180度変わったおかげで、我が名が突然キラキラネームにされた、かわいそうなこどもたちです。今日は、そんな人たちのお話です。
1937年12月29日の東京朝日新聞「赤ちゃんにも『武』『勲章』赫々」から引用します。
全国に湧き上がる皇軍大捷(注・大勝利)の凱歌の渦の中に、喜びを重ねて「オギャア」と産声をあげる赤ちゃんは全国1日平均6千人。東京市だけでも350人になっているが、この赤ちゃんたちはいずれも武勲誉れ高い「勲(いさお)君」、南京陥落の「京子ちゃん」等と慶びの聖代にちなんだおめでたい名前が非常な流行を見せている。(引用おしまい)
皇国ニッポン万歳の狂騒の中、 さまざまな「軍国ネーム」が生まれました。立派な帝国軍人になるべく親が願った「将(まさる)」、八紘一宇に由来する「紘(ひろし)」もいました。「勝」「兵」「武」……。
「お前の名前は南京攻略から取ったんだよ」と言われて育った京子さんは、8月15日を境に、学校の先生が「これからは民主主義だ」と唱え出した時、どんな思いだったのでしょう?  親からもらった名が突然、何の意味も持たない大日本帝国の遺物になってしまったのです。記事とは違った意味で、戦後はオメデタイ名前。その後、どの親も我が子に付けません。「京子」は別意で通用するからラッキーな方だね。
そんな皆さんと、その親御さんには大変申し訳ないのですが、世の中のムード、その時代のブームに流されるがまま、我が子に名前を授ける怖さを訴えたく、紹介させていただきました。
キラキラネーム全盛の日本では、敗戦直後の悲劇に学ぶことのできない、悲喜劇があちこちの役所で戸籍係を笑わせ、当のこどもたちを泣かせています。