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2014/07/16

無関心の罪(1)

国会や政府が何かを決める時、どうせ自分には関係ないやと、考えるのをやめちゃうのは感心できません。興味がないから選挙にも行かない、興味がないからニュースも見ない。情報産業もお客がどうでもいいと思うお話はお金になりませんから、おざなりにしたり見て見ぬ振りをしたりします。無関心社会の到来です。
女性やこどもが悪人に襲われているのを見ても、警察に通報すらしない人だらけになるということだよ。今日は戦時中のユダヤ人ゲットーの痛ましさを完全スルーした、1942年7月5日の朝日新聞「ハンガリー軍に従軍して(笹本特派員)」から引用します。旧仮名づかいの多少の直し、句読点の加増はおじさんによります。

(前略)旧ポーランド領南部ガリシア地方(Galicia)は旧くからユダヤ人居住地域として有名であるが、今日右地方に居住している多数ユダヤ人は、大部分が国外に逃亡し得なかった無力かつ貧乏な連中である。ドイツはポーランド戦終了後、右地方再建のため、これらユダヤ人対策として峻険(しゅんけん、注・とても厳しいこと)なゲットー政策をとったのである。ゲットーとは、古来ユダヤ人の特殊部落をいったのであるが、ドイツが新しく設けたゲットーは、これと趣を異にしている。
すなはち新ゲットーは、街の一角に塀をめぐらし、外部と完全に遮断された区域をつくり、その中に全市内に居住するユダヤ人を収容したものである。記者の見学したものは、1小区域に1万3千のユダヤ人が住んでいた。彼らはこの狭い区域から、労働に出る以外には一歩も外出を許されない。このゲットー内にはユダヤ人の一種の自治が認められ、警察、衛生、土木その他の委員があって、それぞれの仕事を担当している。(引用おしまい)
 ドイツのユダヤ人絶滅政策が進んでいたころです。狭い区域に大勢を押し込めて、わずかな食料と不衛生な酷寒の環境下に置いてじわじわと殺していく現場を特派員は見ています。ところが、「無力かつ貧乏な連中」だと紙上で揶揄していますね。むろんユダヤ人に取材した「自治権」などないですよ。
いくら同盟国だといえ人道感覚は別物だと思えるのですが、それも「ヌルい事象」だと思考がマヒしてしまうのが戦争の恐ろしさ。ユダヤ人問題に無関心だった日本人は、解決に何の役にも立っていません。
在リトアニア外交官の杉原千畝(すぎはら・ちうね)が、たくさんのユダヤ人に海外逃亡のためのビザを出したお話はここでは無し。個人の義挙と国家国民のアクションは無関係です。
目の前の悲劇と世界戦争体制護持の狭間に悩んだであろう笹本記者の筆は、論理矛盾もあらわに、以下どんどん滑っていきます。この項、続きます