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2014/07/02

内閣の独断で米軍人に文化勲章(1)

「選挙で選ばれた与党の最高責任者が法の解釈をするのは当然だ」との物言い。だれかに似ているなあ。ハイチのフランソワ・デュバリエ(François Duvalier)、ジンバブエのロバート・ムガベ(Robert Mugabe)といったレベルの独裁者も、最初は選挙で選ばれたんだよ。ヒトラー(Adolf Hitler)やムソリーニ(Benito Mussolini)を気取る器量はなさそうだから、危なっかしいなあと思ったら、まずこの連中と比べてみようっと。
言わずもがなですが、内閣は唯一無二の国権の最高機関ではありません。それでも暴走したがるのが権力者です。自民党内閣の閣議決定によるルール破りといえば、例によって佐藤栄作です。
1969年、人類初の月面着陸に成功した米国のアポロ11号の乗組員に文化勲章を授与するために、選考委員会をないがしろにしての独走ぶりを紹介します。
同年11月1日の朝日新聞「異例ずくめ文化勲章授与 選考委にはからず 首相周辺の発意で決る(ママ)」から引用します。


アポロ11号の3飛行士に文化勲章――。人類の夢を果した(ママ)「宇宙トリオ」の功績にむくい、国際親善の意味もこめて、という文部省の説明だが、学識経験者の選考委員会の決定を抜きにした政府ペースのやり方に、委員の間から不満の声があがっている。また、「学術、文化の第一人者に贈られる文化勲章のイメージにそぐわない」「いや、政府が勲章を私物化したような印象はよくないが、3飛行士に贈るのは結構」など賛否両論がやかましい。それにしてもこの授章、授与式を皇居で行う慣習を破ったり、学者、文化人以外の、しかも外国軍人であることなど、異例ずくめだ。(引用おしまい)
 文化勲章の選定は委員会の審査を経た後、閣議決定されるのが通例。前段をすっ飛ばしたわけですね。以下を引用します。太字挿入はおじさんによります。

もともと、この問題は佐藤(栄作)首相周辺の発意によるものだ。3飛行士に対し、フランスはレジオン・ドヌール(L'ordre national de la légion d'honneur)、ベルギーはレオポール、イタリアは有功勲章といった具合に最高級の勲章を贈った。ところが、日本の場合、外国人への叙勲は勲一等が元首クラス、ノーベル賞の学者でも勲二等とだいたい格付けが決まっていることから、政府部内で各国とのバランスに頭を悩まし、首相周辺が文化勲章を思いついたといわれる。(引用おしまい)

うそつき。元首でも何でもない「鬼畜」ルメイに勲一等旭日大綬章を与えているじゃないか。文化勲章選考委員会を内閣が無視できるのなら、原子力規制委員会だって閣議決定でスルーできるということです。
しかし、顔をつぶされた選考委員会が黙っているはずがありません。この項、続きます