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2014/06/11

宇井純の遺言・原発と新石垣空港

原子力規制委員会の人事が国会で進められています。もともとは大事故が起きないように、原発の建設や稼働を厳しく見張る番人役ですが、ずさんな計画でも通したい人たちが、通してもいいよっていう推進派の学者を委員会に入れる方向なんだ。
こういった組織がどんな人たちで構成されるのか、とってもわかりやすいコラムがあったので紹介します。全国の公害問題で闘った沖縄大学の故宇井純教授(当時)が、沖縄・石垣島の新空港建設問題にかかわっていたころの一文です。1987年2月6日の朝日新聞夕刊から引用します。

白保の新石垣空港計画を、これほどまでにこじれた問題にした一つの原因は、琉球大学の有力教授を集めて県がつくった空港問題懇話会という一種の審議会が、問題をよく調べずに、全面的に県の計画を是認したことにある。
非公開で行われた懇話会は、数々の見落としを出してしまって、そのあとの質問にも全く答えずに解散してしまった。つまり権力の侍女となって全くの御用学者の役を果たしたのである。狭い島の中だから、この行動はすっかり有名になって、大学の中でも胸を張って歩けない始末だが、それでも県の会合などには、依然として顔を出している。
私が今、新空港問題の是正に時間をとられているのも、もとはといえば、この御用学者連中が仕事をさぼったからである。殺してやりたいぐらい腹が立つが、まさか人を殺すわけにもゆくまい。しかし質問に答えないようなら、大学の教室にたずねてみようかと考えている。
また、この空港計画の差し止め訴訟を起こす動きがあるが、そうなればこの先生方を法廷に呼んで、どういう材料で県を支持する決定をしたのか、宣誓をした上でゆっくり聞きだすことも可能になる。
これまで多くの公害で、企業や行政の側に立って、真実をねじ曲げた御用学者がたくさんいたが、なぜか安泰で、中にはT教授のように、イタイイタイ病で企業を支援し、NOx(注・窒素酸化物)でも基準緩和の主役になる、ふてぶてしい者もいた。今度こそ逃がさずに、ひねりつぶしてやる。(引用おしまい)

「御用学者」というのは、スポンサーや権力者の都合の良いよう、自説を曲げてでも彼らのために働く研究者を指します。原子力規制委員会も、このままでは琉球大の先生方の懇話会とおんなじに成り果てます。現在議論されている集団的自衛権の閣議決定という乱暴な論旨も、「懇談会」という名前の組織がおぜん立てしました。懇話会も懇談会も同じだと考えて大丈夫ですよ。こんなのが出てくる時は、だいたいインチキだと思って間違いありません。
宇井教授のコラムは、原発の再稼働を止めるためのヒントを与えてくれていると、おじさんは思いました。差し止め訴訟が起きたら、過去にさかのぼって規制委員に宣誓をしてもらった上で知見を披露していただくのです。
それがデタラメなら、その人は胸を張って歩けなくなります。学者として後世まで嗤(わら)われます。良心は恥を知ることから始まるとしたら、効果的な原子力事故の防止策にならないかと、おじさんは思いました。